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鍾乳洞の中で発見された「校長先生の泣き所」に注目集まる どういうネーミング?由来を聞いたら憐れすぎた件

大山 雄也

大山 雄也

2022.08.30 18:00
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「洞窟探検してたんだけど、こんな悲しい校長先生いる?」

そんなつぶやきと共に、1枚の写真がツイッター上に投稿された。一体、どんな悲しみを背負った校長先生なのかというと......。

校長先生の泣きどころ(画像は肉野@nikuno_hさんのツイートより、編集部でトリミング加工)
校長先生の泣きどころ(画像は肉野@nikuno_hさんのツイートより、編集部でトリミング加工)

こちらはツイッターユーザーの肉野さんが2022年8月21日、岩手県岩泉町にある鍾乳洞「安家洞(あっかどう)」で撮影した1枚。内部の岩の壁に貼られた白い案内板には「校長先生の泣きどころ」と書かれている。

校長先生の身に一体何が起きたのか。案内板の下にぶら下げられた説明には、こう書かれている。

「昭和30年ころ小学校の校長先生が子供達数人を連れて安家洞へ遊びに入り、遊び終えて出口に戻ったら1人足りないことにきずきました。村で消防団を頼み救助にあたり探したら、なんとこの場所に校長先生がしゃがみこんで泣いていたという逸話でした」(原文ママ)

可哀想すぎる。取り残されて泣いちゃっていたこともそうだが、この話が語り継がれていることもつらい。あまりにも憐れな校長先生に対し、ツイッター上では、

「未来永劫晒され続ける仕打ち」
「子供達に放置される校長w」
「せつない。内緒にしといてあげて欲しかった」

など同情の声が寄せられている。

今と昔では状況が違った

安家洞の全長は日本最長の23.7キロメートル。「迷宮型鍾乳洞」とも言われるが......本当に校長先生が泣いてしまったなんて話があるのだろうか。

Jタウンネット記者は2022年8月29日、同所を管理する安家洞観光の工藤榮吉社長に話を聞いた。

工藤社長によると、校長先生が泣いてしまったというのは実話。そんな事件が起こった背景には、当時の安家洞の状況が関係しているという。

「今でこそ観光地として整備されていますが、当時は観光の概念すらなく、誰もが自由に出入りできた、村の人々の遊び場でした。その代わり、観光地となった今と違って中に照明もなく、穴があちこちにあって、非常に迷いやすい場所でもありました」
安家洞の内部。照明が見えるが、昔は設置されていなかった(画像は肉野@nikuno_hさんのツイートより、編集部でトリミング加工)
安家洞の内部。照明が見えるが、昔は設置されていなかった(画像は肉野@nikuno_hさんのツイートより、編集部でトリミング加工)

泣いた校長先生と一緒に安家洞入った子供は5~6人いたという。工藤社長は、子供たちだけが戻ってこられた理由、そして校長先生だけが取り残されてしまった原因を以下のように説明する。

「子供たちの記憶力はすごいですし、それが5~6人分あれば、当時の安家洞でも外に出てこれるでしょう。でも、校長先生は大人1人だけ。記憶力もあてにならずに中で迷ってしまったようです」

笑い者にされた挙句に

記憶力を武器に安家洞を攻略した子供たちは、外に出てから気付く。「校長先生がいない」。

彼らは帰宅して母親に助けを求め、校長先生捜索のために消防団が出動することになった。

そして発見されたその場所が、「校長先生の泣きどころ」。本人にとっては相当大事だったようで、

「校長先生は迷ったことを深刻にとらえて、自分がいなくなった後の家族の将来などを考えていたみたいです」

と工藤社長。もう生きては帰れないと覚悟し、様々に考えを張り巡らせているうちに涙が出てきてしまったのかもしれない。

なぜ場所の名前になってしまったの?(画像は工藤社長提供)
なぜ場所の名前になってしまったの?(画像は工藤社長提供)

何はともあれ、校長先生が無事に外にでられてよかった――と思いきや、この後が大変だった。村中で、「校長先生にもなる人が迷って泣いていた」と笑われるようになってしまったのだ。

「救助にあたった人の中には、安家洞に入った時『ここが校長先生の泣いていたところだよ』と、言い続けた人もいました。そのせいで、校長先生が泣いていた場所がどこなのか有名になってしまい、いつしか『校長先生の泣きどころ』と名前がつきました」(工藤社長)

目印が必要だった

なんて酷い仕打ちを......と思ってしまうが、名前をつけたのには理由がある。

照明もなく、迷いやすかった安家洞では「目印」の存在が非常に重要。狭くて通りにくい場所に「一の関」「二の関」といった具合で、特徴的な場所には名前が付けられて、目印として探検に役立っていた。

「『校長先生の泣きどころ』がある場所は、特徴がありません。校長先生の話くらいしかこれといったものがないですから、この名前がつけられて目印となりました」(工藤社長)

「校長先生の泣きどころ」はその後、重要な目印として多くの人の役に立ってきたという。校長先生としては恥ずかしい話だろうが、探検をする人にはありがたかったのだ。本人には酷な話だが、後の人の役に立ったという点で大手柄なのかもしれない。

「はいチーズ」と名前がついた岩(画像は工藤社長提供)
「はいチーズ」と名前がついた岩(画像は工藤社長提供)

観光地化された現在でも、洞内の目印は大切な存在。照明の修理に行ってもらう際の場所の指定や観光案内に役立てられている。

そのため、現在でも入場者に募集をかけ、特徴的な岩や場所などに呼び名を付けてもらっているという。ちなみに応募した名前が工藤社長の厳正な審査を通って正式に採用されると、観光用に公開されている道に生涯無料で入れる権利を得られる。

安家洞を訪れた際にはぜひ、お気に入りの岩を見つけて素敵な名付けをしてみてほしい。

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