市役所「鹿児島に灰を浴びに来る観光客が増えてくれたら」 発売から12年、いま再注目の「桜島降灰缶詰」とは何なのか
コンビニで売られていたという「とある缶詰」が、2022年8月6日に投稿されたツイートをきっかけに注目を集めている。
その缶詰というのが、コレである。
商品名は、「ハイ!どうぞ!!」というらしい。赤字で「降灰体感缶詰」と強調されている。
これはなんだ? まさか、あの桜島の降灰を缶に詰めたのか? いったいどんな缶詰なんだ......。
6日、この缶詰について呟いて話題を呼んだのは気象予報士の福岡良子さんと、ツイッターユーザーのもろ(@mo69tsun)さん。それぞれ14万7000件と6万7000件以上のいいね(17日夜時点)を集めるなど、大きな話題になった。
Jタウンネット記者は、この缶詰を購入し、開封もしたという「もろ」さんに話を聞いてみた。
「火山灰をちょっとでも県外に輸出して(笑)」
投稿者「もろ」さんによると、この缶詰を見つけ、撮影したのは、2018年10月だったという。
「父が鹿児島に住んでいるため、会いに行った帰りに、鹿児島空港で『オススメのお土産ある?』と聞いたら、空港内のファミリーマートに案内され、『火山灰をちょっとでも県外に輸出して(笑)』と笑いながら言われたので、『いいよ(笑)』と購入しました」
「文字通り、掃いて捨てるほど降り注いでる火山灰を、こうしてユーモアに変えてお土産にしていることに、驚きつつも笑った記憶があります。当時大学生だったため、サークルの飲み会でお土産として披露したら喜ばれそうだなとも思いました(笑)」(投稿者「もろ」さん)
なお、もろさんは開封後の出来事について、以下のように呟いている。
「みじろぎ一つで灰が舞い、拭いても掃除機でも取りきれず、拭き掃除をすれば灰の粒で傷をつけ、部屋の全てがジャリジャリになったから絶対開けるなよ マジで開けるなよ」
どうやら、火山灰の迷惑さも存分に味わうことができる商品らしい。
この火山灰缶を企画したのは、鹿児島県の中部、大隅半島の北西部に位置する垂水市だ。桜島の東側に隣接しているため、風向きによっては降灰の被害をもっとも受けやすい場所の一つと言える。
しかし、なぜこんなモノを作ったのか。垂水市役所にも聞いてみることにした。
鹿児島に灰を浴びに来て!
記者の取材に応じた水産商工観光課の担当者によると、この商品の販売開始は、2010年11月頃。2010年に年間の噴火回数が1000回を超えるほど活発になったのが、きっかけだったという。もう10年以上も前から販売されていたのか......。
「垂水市に降る桜島降灰によって、日常生活はもちろんのこと、農・水産物など様々な場面で被害を受けています。本缶は、そんな実情を知っていただくための1つの手段として、またこのような状況の元でも明るく、その逆境をはねのけようとする垂水市民の力強さを表すものとして、ユーモアを交えて作成したものです」(垂水市役所水産商工観光課担当者)
原材料となる灰はどのように採取しているのかと尋ねると、「廃校や休校となった小学校や中学校の屋上などから採取しております。理由としては、灰以外の不純物が混じらないようにするためです」。
今までの販売個数は、約8万個。主な販売場所は、道の駅たるみず・道の駅たるみずはまびら・山形屋など。「他のコンビニエンスストアで販売されていることは確認しておりません」とのこと。
今回、SNSその他で話題になっていることについては、次のようにコメントした。
「なぜ、今灰缶詰が再注目を集めたのかはわかりませんが、今年の7月24日に噴火警戒レベルが初の5に上がったのをきっかけに、注目を集めたのではないかと考えております。当日は桜島付近の道路に霧のように灰が舞い、道路が閉鎖されるなどの動きもありましたが、近隣住民の話によると『噴火に気づかなかった』とのことでした。
これを機に鹿児島に灰を浴びに来る観光客が増えてくれたら嬉しく思います」(垂水市役所水産商工観光課担当者)
桜島の火山灰は、地元にとって、重要な観光資源、ということらしい。
灰の缶詰もいいが、実際に灰を浴びに鹿児島県に行く、そんな旅もありかもしれない......? 風向き次第では、桜島の東側、垂水市辺りが絶好のポイントとなるだろう。