一生眺めていられるわ... ベテラン職人が作った羊羹「星合いの空」が美しすぎると話題→「映える」ビジュアルに込めた思いとは
「永遠に飾っておきたい」――見た者をそんな気持ちにさせる和菓子が、Twitter上で注目を集めた。
山形県の老舗和洋菓子店「杵屋本店」が2022年の七夕のために生み出した羊羹「星合いの空」だ。
皿の上に乗っているのは青、紫、白が絶妙なグラデーションになった透きとおる物体。
よく見ると上部には小さな銀の粒が散っていて、星々が白く光る夜空のよう。思わず目が離せなくなるほど美しい。
7月6日の夜、杵屋本店が公式ツイッターアカウント(@YamagataKineya)に投稿した呟きによると、これは同店のベテラン和菓子職人が作ったものらしい。
Jタウンネット記者は13日、この羊羹の詳細について杵屋本店を取材した。
「夏にぴったりな羊羹」を作りたい
杵屋本店は200年以上の歴史を持つ菓子店。こだわりの自家製餡や山形県のフルーツを使用した商品を数多く手がけている。
毎年7月には、上生菓子を中心に七夕をイメージした商品を発売しており、「星合いの空」も七夕の夜空をモチーフに作った創作羊羹。ただ、七夕だけでなく「夏にぴったりな羊羹」を作りたいという思いが強かったという。
「『星合いの空』は今年から新たに始めた四季折々の創作羊羹を作る企画の一環で、まずは夏向けにやろうと最初に開発した商品でした。 夏の夜をイメージした青のグラデーションと星空をどう表現するかという発想で生まれた商品です」(杵屋本店)
56歳のベテラン職人が手掛けたという、淡いブルーとパープルが繊細に交じり合う、にじむような夜空の色。
この美麗なグラデーションは、どうやって創り出されたのか。杵屋本店に聞いてみると、
「ソーダ味錦玉羹を青と紫2種類用意し、きれいに混ざり合うように流し込みます。企業秘密でお伝え出来ませんがグラデーションを平面だけでなく立体でも見えるよう一工夫をします」
とのこと。同店公式サイトの商品紹介ページを見てみると、平面・立体どちらからみてもそれぞれ異なる絶妙なグラデーションの夜空が輝いていた。
1本ずつベテラン職人の手作り
透き通るような青にするための色の調整やグラデーションの付け方、甘さを抑えつつソーダの香りを引き立てるための砂糖の入れ方など、何度も試作を重ねたという「星合いの空」。
取材を行った13日昼時点で、ツイッター上では10万を超えるいいねの他、
「凄く綺麗な色...。青と少しの紫...綺麗」
「羊羹でこんなにきれいなグラデーションが作れるなんて...和菓子技術の深淵を見た気分......」
「永遠に飾っておきたいような美しさ」
といった感嘆の声があがっている。商品も既に完売して予約販売に切り替わり、現在まさに製造中。準備出来次第発送していくそうだ。
「1本ずつベテラン職人の手作りなのでお時間を頂戴しますが、着実に良い物をお届けし喜んでいただきたいと考えています。」(山形 杵屋本店)
販売時期については当初夏限定を予定していたが、注文が相次いでいることや、現在の予約状況をふまえ、9月頃までは販売を続ける。なお、同店公式アカウントによる20日のインスタグラム投稿によると、合計1300本以上の予約があったうえ、まだ注文が鳴りやまないそうだ。
「星合いの空」への反響は、同店にとっても想像以上の大きさだったという。
「ここまでの反響をお寄せいただくとは全く思っていなかったので、本当に嬉しく思います。 地域密着で菓子店を営む私たちにとって、全国の方に名前を知っていただくだけでも大変なことです。本当にTwitterはじめSNSの力のすごさ、そして見ていただきコメント下さる方々の優しさをものすごく感じました。本当に感謝したいです」(杵屋本店)
「星合いの空」だけじゃない!杵屋本店の美麗菓子
実は杵屋本店の「美しすぎる和菓子」は「星合いの空」だけではない。
コロンとしたフォルムが愛らしい琥珀糖「kaju*」や創業210周年を記念して作られた「羊羹kaju*」、無色透明な琥珀糖の中に鹿の子豆を閉じ込めた「最上小石」など、季節ごとに登場する創作羊羹など透明感のある和菓子が複数存在している。
それらは11代目のアイデアをもとに、ベテラン職人が形にしているのだそう。
和菓子のビジュアルにこだわるのは「若い方々にも和菓子を楽しんでいただきたい」という考えから。
「現代はSNS全盛の時代なので写真映えする商品、見栄えする商品というのがまず前提で、それが美味しいとまた買っていただけると思っています。 まず気になっていただくのが1番だと思っていますのでビジュアルやパッケージにはこだわっています。」(杵屋本店)
創業200年を超える歴史を持ったお菓子の老舗が作る至高の芸術。この機会に一度体験してみてはいかがだろうか。
(2022年7月25日10時30分編集部追記:記事初出時、本文中の表記に誤りがありましたので修正しました)