「大学受験のためたった一人で訪れた大都会。初めて見る満員電車に立ち竦んでいると、地元の高校生が...」(岡山県・60代女性)
満員電車に怯える私を...
返事に困っている私の手を、彼女はおもむろに引いて言いました。
「行くよ」
絶対無理だと思っていたのに、不思議とするするっと体が入りました。
もちろん、立ち止まった瞬間から身動きはできません。
しばらくすると彼女が「次降りるよ」と言いました。しかし、降りる扉は反対側。わたしは「えぇぇ」と驚くしかできません。
ところが彼女が「すみません、降ります」と一声かけるとあっという間に反対側への通路できたのです。
そして扉があいた途端に彼女は私だけを降ろし、「じゃあ」と。
彼女はここで降りるわけじゃないんだ、とそのとき初めて気が付きました。
結局彼女の名前も知らず、私はその大学には行かなかったので二度と会うこともなく、そのままお礼も言えないままになってしまいました。
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