観光PRなのに殺し合い...!? 金沢の魅力を発信するショートムービー「ヘブンズ・ラッシュ」が異色すぎる件
2022年2月18日にYouTubeで公開されたショートムービーが一部から注目を集めている。 まずはその動画をご覧いただこう。
「北陸殺し屋協会より発令」――そんな物騒な言葉から始まるショートムービー「ヘブンズ・ラッシュ」。
全身真っ黒の服装で街を闊歩する男は「北陸殺し屋協会・石川県ランク1位」の殺し屋で、金沢に滞在中の倉田善治郎。彼が商店街を歩くと、他の殺し屋たちが次々と襲いかかってくる。
倉田の命には、1億円の賞金がかけられているのだ。
通りすがりに切りかかってきたり、複数人で袋叩きにしようとしてきたりするやつらを、倉田は鮮やかな身のこなしで危なげなく撃退。しかし、最後に現れた刺客はなかなかの強敵で......。
独特な緊迫感のある、殺伐とした世界で繰り広げられる本格的なアクションは圧巻。ただただその迫力に心を奪われそうになるが、この映像が話題になっているのはそのためだけではない。
なんとコチラ、「観光PRムービー」だというのだ!
「このままでは金沢の観光資源が殺し屋になってしまう」
監督を務めたのは、福士誠治さん主演作「ある用務員」や、などで知られる阪元裕吾さん。「日本暴力映画界の新星」として注目されている人物だ。
「ヘブンズ・ラッシュ」は殺し屋の生活を追ったドキュメンタリー風映画「最強殺し屋伝説国岡」(21年公開)のスピンオフ作品と位置づけられているものの、撮影が行われた石川県金沢市、そして同市で開かれる「カナザワ映画祭」の魅力を発信する取り組みの一環として作られた。
阪元監督は自身のツイッターアカウントでこの作品について、
「公式の観光PRムービーなのでいつもの作風は抑え、金沢の魅力をたっぷり盛り込みました!!!」
とコメント。観光PRムービーといえば、ご当地の名所やグルメの魅力をフィーチャーした、ゆったりとした雰囲気のものが思い浮かぶ。ところが「ヘブンズ・ラッシュ」は、暴力描写やアクション作品を得意とする阪元監督らしさ全開。
あまりにも風変りなPRムービーはツイッターでこんな評価を獲得している。
「金沢観光PRムービーと称しながらガチガチのアクションで笑ってしまった。このままでは金沢の観光資源が殺し屋になってしまう」
「めちゃくちゃかっこいいので見てほしい!!!!! スタイリッシュに登場人物が殺し合い殴り合うだけの観光ムービーを......!!!!!!」
どのあたりが「観光PR」?
観光PRムービーなのに、なぜこんなにアクションが激しいの......? Jタウンネット記者が2月28日、カナザワ映画祭を主催する「映画の会」代表理事の小野寺生哉さんに、その疑問をぶつけたところ、こんな回答があった。
「とにかく作品として見た人に面白さを感じてもらえなければPRにならないと考えています」
面白さを優先した結果が、「ヘブンズ・ラッシュ」ということなのだろう。しかし、肝心の「観光PR」要素は動画を見ただけではわかりにくい。どのあたりに要素があるのかを聞くと、
「作品全体の雰囲気が金沢そのものなので、あの空気感に興味のある方は一度金沢を訪れたくなるでしょう」
と小野寺さん。言われてみれば、筆者も「北陸代理戦争」を観た後に福井へ行きたくてうずうずした経験がある......。
また、小野寺さんを通じて、阪元監督のコメントもJタウンネットに到着した。
「ひとつの町を舞台にアクション短編ドラマを作るのはずっと夢でした。物語の整合性や成長といったものより、なにより金沢の至る場所でアクションを撮ることをなによりも目標にしました」
監督の熱意も反映された「ヘブンズ・ラッシュ」。これを観れば読者のみなさんも金沢に行きたくなるかも!?