「母だけをホームに取り残し、発車した新幹線。私が直前に『大丈夫』なんて言ったせいで...」(愛知県・50代女性)
新幹線が駅に到着してから出発するまでの時間は、長いようで短い。
おとなしく座って待っている時は「まだ出ないのか」なんて思うこともあるが、だからと言ってゆったり売店で買い物なんてしていると、後で焦る羽目になる。
これからご紹介するのは、そんな「新幹線の出発待ち」の時間に起こったハプニングだ。
愛知県のJタウンネット読者・Rさん(50代女性、仮名)はその日、仙台駅から東京駅へ向かう新幹線に乗車。母親と2人で東北旅行を楽しんだ帰り道だった。
指定席に座って間もなく、母親が「売店で駅弁を買いたい」と言い出した。まだ時間に余裕があると思ったRさんは「大丈夫だと思うよ」と母を送り出す。
そして母親は無事に欲しかった駅弁を購入し、再び車内に戻ろうとした――その瞬間、無情にもドアが閉まり、新幹線が動き出してしまったのだ。
スマホも携帯もない時代、連絡も取れなくて...
30数年前、母とふたりで東北旅行をした帰りのことです。
大いに楽しんだ2泊3日の旅も終盤、新幹線の仙台駅から東京駅へ向かう時でした。
新幹線の予約席に座って間もなく、母から「可愛いこけしのお弁当があったから買いたいけど、まだ時間あるかねぇ?」と聞かれた私は
「まだ大丈夫だと思うよ」
と答えました。
ところが、母が新幹線を出てホームの売店でこけし弁当を買い、再びドアに近づいたその時、新幹線が動き始めたのです。
スマホや携帯などない時代。新幹線が出てしまった後、母はなすすべもなく乗り場に佇むしかありません。
そんな母に、1人の紳士が話しかけてくださったそうです。
母を置いて出た新幹線の中で、娘は...
事の次第を話した母に、その紳士はこうおっしゃったそうです。
「次の駅の同じドアの場所で、きっとお嬢さんが待っていますよ」
そのころ私は、母を残して動き出した新幹線内で「大丈夫だ」と言った言葉を思い出しながら、自分の親不孝を悔い、どうしたものかと考えていました。
そして決めたのが「次の駅で降りて1本待ってみよう」ということ。それから先のこと――引き返すか駅に連絡するか――はその後考えようと決めました。
次の駅で2人分の荷物を抱えて同じドアから降りて、待つことしばし。
通過電車をやり過ごし、次に現れた電車のドアガラスの向こうに母の姿を見た時は、笑いながらも涙があふれました。
もう随分と時が過ぎてしまいましたが、あのとき親切にしてくださったという見知らぬ仙台駅の紳士の方のことを思い出しては、胸の中で感謝しています。
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