「幼い子供を連れて富士登山。途中で財布を落としてしまい、下山のためのバスにも乗れなくなって...」(埼玉県・70代男性)
子供との楽しい登山が一転、苦しい徒歩移動が待っていた――。
埼玉県在住のJタウンネット読者・Aさん(70代男性、仮名)は、50年ほど前、富士登山の最中に大変なハプニングに襲われた。
子供3人を連れて富士山に登っていたとAさん。山小屋に辿りつき、子供に飲み物を買ってあげようとしたところ、財布を紛失していることに気づいたのだ。
万が一のためにポケットにも現金を入れていたが、計算してみると自身と子供を含めた4人分の電車賃しかない。
――家に帰るためには、駅まで歩かなければならない。
Aさんはそう思い、下山のためのバスに乗ることを諦め、子供たちと共に御殿場駅までの長い長い距離を歩くことに決めたのだが......。
「子供たちも、ただ事でないと分かったらしく......」
今から50年前、幼稚園と小学校の子供3人を連れて富士登山へ行きました。
私たちは、河口湖から登山バスで5合目まで行って登り始めたのですが、しばらく経って財布をどこかで落としていたことに気付きました。
慌てて探しましたがどこにもありません。幸い、ポケットに万一の時のために、少しだけ現金を持っていたので何とかなるだろうと、そのまま頂上を目指しました。
しかし途中の山小屋で、子供がジュースを飲みたいと言うので現金を数えたら、帰りのバス代が足りない事に気が付きました。何回計算しても4人分の電車賃しかないんです。
頭の中が真っ白になってしまいました。子供たちも、ただ事でないとわかったらしく、誰も何も買ってくれと言いません。
とにかく5合目まで戻りましたが、バスに乗るお金はなく、そうこうしているうちに最終バスも行ってしまいました。今ではクレジットカードや交通系ICがありますが、当時は現金しか支払うすべがありませんでしたから......。
2~3時間歩いても、目的地にはたどり着かず...
こうなったら御殿場駅まで何時間かかっても、徒歩しか手段はありません。
しかし2~3時間歩くと、子供たちが「足が痛い」「お腹が空いた」とぐずり出し、周囲も段々暗くなって来て途方にくれました。
そんな時でした。1台のワゴン車がそばに停まったのです。乗っていたのは親子連れでした。
「乗っていきませんか」
彼らはそう声をかけてくれました。そこで私たちの事情を話したら、
「困った時はお互い様です」
と言って、御殿場駅まで送って行ってくれたんです。
お礼をしようにもお金がありませんから、心からの感謝を伝えて別れました。あまりの嬉しさと、「これで家まで帰れる」という安堵で、名前や住所を聞くのを忘れてしまいました。
車内には電気工事の道具があったから、御殿場の町の電気屋さんの親子だと思います。彼らのおかげで無事に家に帰る事ができました。
今でも助けられたのが忘れられず、あの親子を思い出します。
「忘れられない旅先でのエピソード」、ありますか?
富士山の5合目から御殿場駅まで――50年前の状況はわからないが、今Googleマップでルート検索してみると、とても徒歩の距離ではない。小さな子供たちにとってはなおさらだ。
車に乗せてもらえた時、彼らはどれだけ安心したことだろう。
皆さんにも、旅先や出張先での忘れられない思い出はあるだろうか。
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