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苺、グラニュー糖、そして「元寇」 佐賀県産ジャムに蒙古襲来?謎に包まれた原材料の正体は...

松葉 純一

松葉 純一

2022.01.04 18:00
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2021年11月22日、次のような写真がツイッターに投稿され、注目を集めた。

山内太地 (@yamauchitaiji)さんのツイートより
山内太地 (@yamauchitaiji)さんのツイートより

苺ジャムの原材料として、苺(佐賀産)、グラニュー糖、はちみつ、洋酒と共に、「元寇」という文字が記されている。

元寇といえば、鎌倉時代中期、当時、中国大陸を中心にアジアを支配していたモンゴル帝国(元朝)による2度にわたる日本侵攻のことだ。1度目が「文永の役」、2度目が「弘安の役」。「蒙古襲来」とも呼ばれている。

しかし、苺ジャムの原材料として記載された「元寇」とは?

写真の投稿者である山内太地 (@yamauchitaiji)さんも「これ何が入っているんでしょう。蒙古軍?」と呟く。

山内太地さんが投稿したツイートには、1万9000件の「いいね」が付けられるなど、話題になっている。

はたして、「元寇」入りのジャムのお味は――?Jタウンネット記者は投稿者の山内太地さんに詳しい話を聞いてみた。

「何の食材かまったく分からず不安に......」

まず投稿者・山内さんが苺ジャムの写真を撮影された時の状況を聞いてみた。

「唐津在住の人からおみやげとしてもらいまして、しばらく家に保存していたのですが、食べようと思って出したところ、原材料を見て驚き、撮影しました」
「物騒なネーミングだと思ったのと、何の食材かまったく分からず不安になりました」(山内太地さん)

ジャムを味わった印象はどうだったのだろう?

「市販のジャムは砂糖が多く入っているものが多く甘すぎだと思っていましたが、これは自然の材料が中心で甘すぎず、色も真っ赤ではなくやや茶色で自然な感じがしました」(山内太地さん)

食べてみて、不安は少し消えたようだ。

なお、ジャムの原料のひとつ「元寇」については、リプライでこんな情報が寄せられている。

「柑橘の『元寇』は佐賀県唐津の馬渡島(まだらしま)の固有種ですね」

ジャムに入っていた元寇は、モンゴル軍ではなく、佐賀県唐津市にある希少な柑橘類のようだ。

これがその果実(写真は「元寇」入りジャムの製造者「檸檬の木」提供)
これがその果実(写真は「元寇」入りジャムの製造者「檸檬の木」提供)

もう少し詳しいことを知りたいと思った記者が唐津市役所に電話で尋ねてみると、市の広報担当者が、「生産者に聞いてみるのが良いかもしれませんね」と、唐津市内の農家を紹介してくれた。

キリスト教の宣教師によって、馬渡島にもたらされた

Jタウンネット記者の電話取材に応じたのは、富田農園の富田秀俊さんだ。

「げんこうという柑橘類は、キリスト教の宣教師によって、馬渡島にもたらされたと聞いています。彼らは前任地である中国大陸のどこかで、その柑橘類の苗木を手に入れたのではないでしょうか」(富田秀俊さん)

長崎県外海地区などには「ゆうこう」と呼ばれる香酸柑橘類が自生しているという。「げんこう」「ゆうこう」、他にも「とうこう」と呼ばれる柑橘類もあるそうで、これらは宣教師たちによって、当時の日本人信徒たちに伝えられたと考えられているそうだ。

「元寇」という漢字をあてたのは、残念ながら間違いではないか、とのこと。蒙古軍の襲来(13世紀)と、キリスト教伝来の頃(16世紀)とでは、時代が違いすぎるからだ。

柑橘の「柑」は「柑子(こうじ)」「柚柑(ゆこう)」のように「こう」と読むこともあるので、「げんこう」の「こう」も「柑」なのかもしれない。

完熟すると黄色くなるらしい(写真は「元寇」入りジャムの製造者「檸檬の木」提供)
完熟すると黄色くなるらしい(写真は「元寇」入りジャムの製造者「檸檬の木」提供)

「馬渡島の人々には、げんこうの果汁を焼酎に混ぜて飲む習慣があったそうです」と語る富田さんは、馬渡島に自生していたげんこうから接ぎ木を受け、現在、唐津市浜玉町の農地約40アールで栽培している。そして21年3月、富田さんは自分の農園で育てたげんこうの成木20本を、「恩返しになれば......」と馬渡島の畑に移植したという。

げんこうは、レモン、ユズ、カボスに似た香りのよい「香酸柑橘類」だが、冬を越して3月から4月頃になると甘くなり、糖度は12度を越すそうだ。お酒や料理との相性が良いらしい。

富田農園の「げんこう果汁」は、唐津市のふるさと納税の返礼品にも選ばれている。

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