「夜の山道を歩いていたら、知らないおじさんが『何してるんだ』。そのまま家に誘われたので、断ると...」(千葉県・40代男性)
旅をしている中で、ひょんなことから見知らぬ地元民との交流が生まれる、ということは珍しくない。
その時の出会いをきっかけに関係が続くこともあるが、どちらかといえば一期一会になるケースの方が多いだろう。
しかし、短い間の付き合いだからこそ、その出会いがより鮮明に思い出に残ることもあるようだ。
千葉県在住のJタウンネット読者・Nさん(仮名、40代男性)は大学生時代、友人との旅の途中で、まさにそんな出会いを経験した。
京都駅から長野県の駒ヶ根市まで歩いて旅をしていたNさんたち。岐阜県と長野県の県境にある山奥で、見知らぬ男に声をかけられた。
はじめは「酔っ払いに絡まれたのか」と警戒していたNさんたちだったが......。
「お前たち何してるんだ!」
大学2回生の夏休みに、友達と旅行をした際のエピソードです。少し悪ノリして、悪友と一緒に京都駅から長野県駒ヶ根市まで歩くことにしました。
そして、ある日の夜に岐阜県と長野県の県境の山奥に差し掛かったところで、通りすがりの車に乗っていたおじさんから、
「お前たち何してるんだ!」
と声をかけられたんです。
最初は酔っ払いにからまれたのかと思いながらおじさんに近寄り、自分達は福岡の大学生で、京都から長野まで歩いている事などを彼に伝えると、今度はこう聞かれました。
「なんでこんな夜中に歩いてるんだ?」
その理由は、台風が近づいてきていることを、新聞で知ったからでした。少しでもゴールに近付きたくて、夜も歩いていたのです。
「お前たちほんとにバカだな」
そのことをおじさんに説明すると、
「お前たち普通じゃねーな(笑)。気に入ったから今から俺んちに泊まれ」
と言ってくれました。しかし、私たちは「旅の道中に人様の家には泊まらない」というルールを決めていました。なので、それを伝えるとおじさんは「お前たちほんとにバカだな」。
「仕方ない。ここをまっすぐ行くと車庫があるから、そこに泊まれ。人の家じゃないからいいだろう?」
彼は親切にそう教えてくれたあと、「腹は減ってるのか? 酒は好きか?」とも聞いて来ました。私たちが頷くと、「分かった。んじゃまた後でな」と言って、凄いスピードで消えて行きました。
私たちはそのまま、教えてもらった車庫に向かうことに。そこに着いて30~40分したころ、さっきの車がこれまた凄いスピードで戻ってきました。
おじさんは「うちの晩飯の残り」と言って日本酒の一升瓶をドンと私たちの目の前に置き、一言。
「さぁ、始めるか」
「良かったら旅の途中で食べて」
そのまま車庫での飲み会が始まり、私たちは京都を出発してからのエピソードや、普段の大学生活の話、家族の話、将来の話、色々なことを話しました。
楽しい時間はあっという間に過ぎていきました。
そして翌朝、出発の時間に車庫から出ると、目の前におにぎりの入ったビニール袋が。それには手紙が添えられていました。
「昨日はお米を炊くのが間に合わなくてごめんなさい。良かったら旅の途中で食べて下さい。
追伸 昨晩はうちの人に付き合ってくれてありがとう。」
きっと、おじさんの奥さんが書いてくれたものだと思います。なんだか朝一から泣きそうになりながら、私たちはまた旅を続けました。
初対面の人にいきなり話しかけられると身構えてしまう世の中になりましたが、私はこの経験から今でも初対面の方とは普通に話せます。幸運な事に一度も騙されたりした事はありません。
あの時のおじさんや奥さんのおかげで、人っていいなと考えられる大人になれたと感じています。そして、人との出会いで人生は切り拓かれていくんだろうと考えるようになりました。
これからも楽しく、人との出会いに感謝して生きていきたいです。
「忘れられない旅先でのエピソード」、教えて!
夜、山奥を歩き続けるといういささか無鉄砲な旅。おじさんも奥さんも、そんな若者たちを心配してくれたのだろう。
皆さんにも、今でも心に残っているような素敵な旅の思い出はあるだろうか。
Jタウンネットでは読者の皆様の「旅先でのいい話」を募集している。
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