バナナマンにバナナジュース、そしてカレーにもバナナ...! 北九州市・門司港では「バナナブーム」が極まっていた
突然ですが、みなさんに問題。かつて一世を風靡したタピオカブーム。では、その次にキテるのは?
ドゥルルルルルルルルル......
ドン!答えは、唐揚げ専門店......と、「バナナジュース」。都内では唐揚げ店が勢力を拡大しているが、実はバナナジュース専門店も着々とオープンしている。
しかし驚くことなかれ。日本には令和よりはるか昔から、バナナブームが続いている地域がある――。
それが北九州市にある門司(もじ)港だ。
「特産品ってわけでもないのに、なぜバナナ......?つながりが見えない...。というか本当に流行ってるの......?」
にわかには信じられない、という人もいるだろう。だが、観光スポットとして有名な門司港レトロには、人気者の「バナナマン」が常駐しているとのウワサもあるほど。バナナとは切っても切れない関係にある地域なのだ。
Jタウンネット記者は門司港の「バナナの街」っぷりを、身をもって体験してきた。みなさんにその様子をご覧いただこう。
バナナ×カレー...だと!?
羽田空港から飛行機と電車で約3時間半――筆者はJR門司港駅に到着した。
門司港駅舎は、1914(大正3)年に完成。2012年に始まった保存修理工事を経て、19年に創建当時の姿に復原された。レトロな駅舎を通り抜けると、大きな噴水が出迎えてくれる。
駅前広場の片隅にあるのが、この石碑だ。
「バナナの叩き売り発祥の地」
そう、門司港はかの有名な「バナナの叩き売り」が生まれたとされる土地。軽快な口上を述べながら、集めた客にバナナを売っていく。売り手は最初、わざと高い値段を設定しており、客との掛け合いによって安くしていく方式だ。
石碑の隣にある「発祥由来の記」によれば、叩き売りは大正初期から昭和13~14(1938~39)年頃まで盛んに行われていた。現在は「門司港バナナの叩き売り連合会」によって受け継がれ、休日は門司港レトロで実演販売が行われている。
そんな歴史を経て、門司にはバナナのイメージがすっかり定着。門司港レトロ周辺を歩くと、「バナナジュース」「バナナビア」といったバナナグルメの名前が、チラチラと視界の端に入ってくる。本当に「バナナの街」といった感じなのだ。
そんな中、ひときわ主張の激しいメニューが筆者の目に飛び込んできた――。
「バナナの焼きカレー」!?!?!?
「焼きカレー」とは、ご飯の上にカレー、チーズ、タマゴをのせてオーブンで焼いた、門司のご当地グルメだ。門司港レトロの飲食店で構成される「門司港グルメ会」発行のパンフレットによると、昭和30年代に門司港の喫茶店が余ったカレーで作り、のちにメニューとして提供し始めたのが由来だという。
ここに、バナナを合わせたのか...。味の想像がつかないが、見つけてしまったからには行くしかあるまい。
というわけで、昼食がてら店に入ってみることにした。
「バナナの焼きカレー」を提供するのは、「伽哩本舗 門司港レトロ店」だ。2階建ての建物で、2階が伽哩本舗、1階が系列店の「M's cafe TokiDoki 伽哩本舗」となっている。ちなみに名前の由来は「混雑時など、ときどき(TokiDoki)伽哩本舗の店舗に使われるから」だそうだ。
1階は後で行くとして、まずは2階の伽哩本舗へ。
注文するのは、もちろん「バナナの焼きカレー」(レギュラー、税込み900円)だ。
見よ、このバナナの存在感を......!
実は焼きカレー自体、はじめましての筆者。「初の焼きカレーがこれで良かったのか...」と多少の葛藤を抱えながら口に運ぶ。
「焼きカレー」というだけあって、表面はパリパリ。タマゴをつつくと黄身があふれ、カレーとの相性はバツグンだ。
そしてバナナはというと......口の中に入れた瞬間、酸味がとろりと広がる。ほんのりと甘味も感じられ、良いアクセントになっていた。
しかし、なぜバナナと焼きカレーを合わせてみよう、と思いつくことができたのか...。気になったのでお店のスタッフに聞いてみた。
筆者「なぜ、バナナと焼きカレーを合体させたのですか?」
スタッフ「焼きバナナカレーは、門司港名物である『焼きカレー』と『バナナ』を合わせたらどうなるかな?ということでオーナーが考案しました」
筆者「結構バナナの風味が強いですよね!カレーに全然負けてなくて驚きました」
スタッフ「冷凍したバナナをオーブンで焼いているので、甘さが増しています。ラー油を合わせると辛味がきいて、また違った味になるのでおススメです!」
スタッフによれば、独特な味にハマってしまうお客さんも多いそうだ。
めっちゃデカいバナナジュースを発見!
店を出て階段を降りると、1階の「バナナジュース」の看板が目に入る。辛いモノを食べた直後の筆者は......。
無意識のうちに買ってしまっていた。で、でかい!!
同店の「ばななジュース」(税込み480円)の容量は約500ミリリットル(ペットボトル1本分!)。中にはバナナ・牛乳・ベリーが入っている。味は甘さ控えめでクリーミー、大容量ながらもゴクゴク飲めるおいしさだった。
バナナ焼きカレー、バナナジュースと続き、さすがにお腹がふくれた。運動がてら散歩していると、「門司港バナナ資料室」という部屋を発見。
バナナの旅をしている身として、ここに入らない選択肢はない!
門司港バナナ資料室では、「バナナの叩き売り」発祥の経緯や、口上のルーツ、昭和初期を中心としたレトロなポスターを展示している。
ここで「バナナの叩き売り」の歴史を説明しよう!
遡ること約120年前。1903(明治36)年頃、台湾の商人が神戸にバナナを持ち込んだことをきっかけに、日本にバナナが大量輸入されるようになった。
当時の台湾は、日本の領土。地理的に近いこともあって、門司港には市場が設けられた。
入荷段階のバナナは青い。競り落としたものは地下室で蒸し、黄色くなってから販売していた。しかし時には、輸送中に蒸される、一部不良品が生じるといったトラブルもあった。
それらをできるだけ早く換金するために、露天商などが口上を述べて売るようになったのが、「バナナの叩き売り」の始まりだ。
資料室では、叩き売りで実際に使用される台を展示。しかも絵に描いたバナナ付きだ。雰囲気を味わいたい人は、バナナを手に取って記念撮影してみるのもいいだろう。
さらに資料室を歩くと、門司港バナナのPRキャラクター「バナナ姫ルナ」のパネルも発見。バナナの素晴らしさを伝えるために生まれた、バナナの妖精...らしい。
さて、叩き売りの歴史を学んだところで、筆者は次の目的地・栄町銀天街を目指した。門司港駅から少し歩いたところにある商店街なのだが、なんでもその付近に、今話題のバナナジュース専門店があるらしい。
ついにバナナマンに遭遇!その正体は...
栄町銀天街から横に入った「栄小路」。そこにあるお店が、「てるちゃんのバナナジュース」だ。
21年4月にオープンしたこちらのお店。なぜ有名なのかというと...「てるちゃん」こと、御年70歳の菊池照代さんが看板娘なのだ。お元気!
「てるちゃんにぜひ会いたい」と思って訪れた筆者だったが、店が開いている日、てるちゃんが店頭にいる日は限られている。残念ながら筆者が訪れた日は会えなかった。無念......。
同店のメニューは「完熟バナナと牛乳のバナナジュース」(390円、税込み)。追加料金(50円)を払うと黒ゴマ、きなこ、あんこ等をトッピングできる。どれにしようか......迷った末に、筆者はスタッフおすすめの黒ゴマを注文した。
てるちゃんのバナナジュースを手に、記者が向かったのは門司港レトロだ。せっかくなので、海を眺めながら頂こうという魂胆である。商業施設「門司港レトロ 海峡プラザ」前の通りには、腰を下ろして一息つける場所もある。
なんて穏やかな昼下がりだろう。潮風に吹かれながら飲むバナナジュース(黒ゴマ入り)は格別だ。歯ごたえがあって、甘みの中に香ばしい苦みが感じられる。バナナと黒ゴマの相性の良さに驚きを隠せない。
おいしいジュースを飲み終えて、目線を海から通りに戻すと......奇妙な人影が目に入った。
バナナの皮をかぶったおっさn......ではない。
この人こそ、門司港レトロのイメージキャラクター「バナナマン・ブラック」だ(正直、想像していたバナナマンと違った......なんてことは思っていない)。
お隣では黄色い皮の「バナナマン」が勢いよく右腕を掲げている。2人組だからだろうか、初期のプリキュアに通ずるものを感じる......。この2人の人気も相当なもののようで、周囲には記念撮影を楽しむ人々の姿が見られた。
バナナマンたちに挨拶をすませ、付近を散策しているうちに気づけばもう夕方。そろそろ編集部にお土産でも買って帰ろうかな......。
門司港レトロには抜群の品揃えを誇る土産物屋「北九州おみやげ館」があるし、海峡プラザにもご当地グッズの店や、門司港レトロ限定のお菓子や食品を扱う店などが複数入っていて、お土産を買う場所には困らない。
筆者が購入したのは、バナナまんじゅうの「そのままバナナ」に「門司港 バナナ紅茶」、そして「門司港 バナナ梅酒」。バナナ系お土産がたくさんあるので、家に帰っても楽しむことができる。
バナナブームを全身で感じたい人には、北九州・門司港に行くことをおススメしたい。
<企画編集・Jタウンネット>