「雨のバス停で、熱を出した息子を抱く私。タクシーに乗るか悩んでいると、隣のおばさんが手をあげて...」(神奈川県・40代女性)
バスに乗ろうと停留所に向かったら、次の便が来るまでしばらくかかるらしい――。
そんな時、おとなしく待つか、割高にはなるがタクシーを使うか。皆さんは悩んだことが無いだろうか。
Jタウンネット読者のCさん(40代女性)は、過去にそんな葛藤を経験したことがある一人だ。
Cさん、27歳の冬。熱を出してしまった生後7か月の息子を病院に連れていった、その帰り道でのことだ。
バス停に向かうも、次のバスが来るのは30分後。早く家に帰りたいから、そんなには待てない。けれど、タクシーを拾うとなるとお金がかかるし......。
悩んでいるうちに、一台のタクシーが近づいて来た。それでもタクシーを止めるかどうか、決めかねていたCさん。
すると彼女の隣でバスを待っていた女性が、スッと手を挙げた。
次のバスは30分後
私が27歳で、息子がまだ7か月だった頃の事です。雨の降る真冬のある日、もう陽も暮れた夕方に息子に熱があることに気が付きました。
慣れない子育てに何が起きても四苦八苦していた頃で、私はすぐに病院へ。
病院で薬をもらい、さあ帰ろうと真っ暗な外へ出てバス停へ向かいましたが、あいにくバスは出発したばかりで次の便が来るまでは30分以上かかる様子。
凍えるような冷たい雨の中、私は元気のない息子を抱えて途方に暮れておりました。
「タクシーを拾おうか。でもお金がかかるし、どうしようか」
そう考えていたところで、ちょうど向こうからタクシーが来ましたが、それでもまだ私は決断できずにいました。
すると、私の隣で同じくバスを待っていた50代くらいの女性がスッと手を挙げたんです。
「あ......先を越されてしまった」
私はそんなことを思いました。
「知り合いのふりをするからね」
あのタクシーは諦めよう......そう考えていた私に、その女性はタクシーが停まるまでの短い時間でこう言いました。
「あなたどこまで? 一緒に乗って! タクシーは相乗り嫌がるから、知り合いのふりをするからね」
彼女が言い終わると同時に、タクシーが目の前に停車。
私は訳も分からぬまま、あれよあれよという間にタクシーに乗り込んでいました。
それからその女性は運転手さんに私が途中で降りる事を伝えてくれ、今あったばかりとは思われないように会話を弾ませてくれました。
いきなり見ず知らずの人に親切にされた私は心の準備がまるでできておらず、彼女にぎこちない返事をするばかりでした。
その後、5分ほどで私の家の近くにつき、タクシーを停めて貰いました。
「いつかあなたのような......」
本当は盛大に感謝の言葉を送りたかったけれど、タクシーの運転手さんに相乗りだとバレては女性が何か言われてしまうかもしれないと思い、私は言葉少なにお礼を言うしかありません。
その上、運賃を払おうと差し出した手も彼女に押し返され、後続車がいたこともあって私は慌ただしくタクシーを降りることになりました。
女性のことは横顔をちらりと見たくらいではっきりと思い出せませんが、あの時の親切を思うたび今でも涙が出てきます。
あの時の方、その節はありがとうございました。おかげさまで息子はもう14歳になりました。
私はあなたの粋な親切を子供達に聞かせています。いつか私も、あなたの様なかっこいい女性になれたらと思ってます。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
タクシーで5分。おそらくCさんは、それほど遠くない距離だったからこそタクシーに乗るのをためらってしまったのだろう。
そんな葛藤を見て取ったのか、咄嗟の機転でタクシーの相乗りを申し出てくれた女性。彼女の親切は、Cさん親子にとって渡りに船だったことだろう
皆さんにも、困っている時に手を差し伸べてくれた人はいるだろうか。
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