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なんで「わざわざ」江田島に? IT企業×瀬戸内海に浮かぶ島...東京の若者たちが、移住を決めた理由とは

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2021.11.04 17:00
提供元:広島県

必ずしも、首都圏で働く必要なんてない――。

新型コロナウイルスの影響から、リモートワークの活用が進み、場所や時間にとらわれない「働き方」ができるようになった。いまや、スタンダードになりつつさえある。

そんな機運の高まりに先駆けるかたちで、2021年春、瀬戸内海に浮かぶ広島県江田島市に、新たにオフィス/サテライトオフィスを立ち上げたIT企業が2社続き、話題を集めている。それを機に、江田島市への「移住」を決めた社員もいた。

どうして江田島市に拠点を置いたのだろう? 働き方はどう変わったか? 地域の人たちとはうまくやれているのか?

記者が2社を訪問して、そんな素朴な疑問、ホンネを聞いてみた。

東京にウンザリ!? 企業誘致に注力する広島県をSNSで知った!

「はじめて目にした江田島市西部にある沖美地域の海は、ドキッとするほどきれいでした。この海の美しさに惹かれたことが、ここに拠点をつくった理由といえるかもしれませんね」

こう語るのは、システムやソフトウェアの受託開発を手掛けるITベンチャー、GeneLeaf(ジーンリーフ)の代表社員・安西翔平さん。

エンジニアとして、1年ほど前まで都内の企業で働いていた彼は「いつか東京を脱出して、地方で働きたかった」と打ち明ける。安西さんのそんな思いが、実現していく過程はちょっとドラマチックだ。

安西さん:当時、少し背伸びをして、それなりの家賃のするアパートを会社近くに借りていました。
ところが、入居して数か月後。新型コロナの影響から、リモートワーク主体の働き方になり、部屋にいる時間が増えました。すると、どこか狭いところに幽閉されているような気がしてきて......(苦笑)。
リモートワークなら、働く場所はどこでもよいはずだ。いや、いっそのこと、会社を辞めて独立してもいいのでは。そんなふうに考えたのです。
安西さん(左)と、市職員の川上さん(右)
安西さん(左)と、市職員の川上さん(右)

こうして、20年9月に退社。12月には会社を立ち上げるとともに(本社所在地は都内に置いた)、地方で働くための拠点探しを始める。

安西さん:その時点では、どこでもいいな、と。そんななか、SNSを通じて、広島県が企業誘致に力を入れていることを知りました。
私としては、移住とセットで考えていました。そのときは漠然と、広島県なら海に近いところで働けるかもしれない。住むにもよさそうだ、と考えたんです。

江田島市職員が親身に...40件のメール添付に驚く!

安西さんは移住先を広島県内に決めると、「海の見えるオフィス 広島県」と検索。

そして辿り着いたのが、一般社団法人・フウドが運営する、江田島のコミュニティスペース「フウド」のホームページだった。同法人は、江田島市への移住サポートで手腕を発揮する。

さっそく電話で問い合わせ、2日後には見学に行くことに。そこで、市職員の川上建司さんと知り合ったという。

安西さん:きさくで、熱心な川上さん。なんと出会った翌日から、オフィス候補地となりそうな物件を画像付きでチャットアプリで送ってきてくださって。一気に40件の添付があったのには、驚きましたが(笑)。
その後も、親身になって相談にのっていただき、ありがたかったです。

人との縁に恵まれた安西さんはその後、現地に再度足を運び、物件探しと内見を始める。その移動の合間、冒頭のような海の美しさにも魅せられ、ここに拠点を構える決心がついたという。

安西さんに熱く江田島をアピールした川上さんの人柄もさることながら、江田島市ではこうしたIT企業の誘致に意欲的だ。

川上さん:人口の減少傾向が続く本市にとって、新たな企業の誘致は市民生活維持のカギとなります。
そこで、これまで市になかったIT産業にも目を向け、サテライトオフィス(地方拠点)進出のお手伝いも含め、取り組んでいます。

もっとも、いざ地方移転でオフィスを開設したとしても、住む場所も考えなくてはならない問題だ。

ここで、江田島の「強み」が生きてくる。一般社団法人・フウドとも協力する体制があるのだ。

為政さん。2年前、広島市内から江田島市に移住。フウド館長として活躍するかたわら、外国人向けシェアハウスを経営
為政さん。2年前、広島市内から江田島市に移住。フウド館長として活躍するかたわら、外国人向けシェアハウスを経営

コミュニティスペース「フウド」の館長、為政伸彦さんは「近く、フウド主催による『お試し移住』のプロジェクトも始まります」として、こう話す。

為政さん:いきなり移住するのはハードルが高いので、まずは長期休暇などを活用して子どもと一緒に『お試し移住』をすると、現地の雰囲気がわかると思い、企画しました。
リモートワークができる仕事なら、フウドの施設も利用可能です。理想は1~2週間。お試し期間中、私たちがサポートしながら、市の関係者、移住者と会う機会をつくれたらと思います。

江田島市は「移住者に対して、ウェルカムです!」

今回、GeneLeaf(ジーンリーフ)と、バレットグループを訪問しました
今回、GeneLeaf(ジーンリーフ)と、バレットグループを訪問しました

記者も、ジーンリーフの仮オフィス(兼社員の居住スペース)を訪問した。ここは築45年の古民家。広い庭もあった。休日などは、社員や仕事仲間、友達を呼んで、バーベキューを楽しむこともある。

安西さん:いまは私を含め5人が首都圏から移住して、ここで生活しています。
本オフィスはこことは別の場所に構える予定なんですよ。そちらも、しばらく空き家だった築96年の古民家。いま、雨漏りの修理や、内装のリフォームを進めています。
仕事の面では、請け負っている開発案件以外でも、地元カフェのホームページ制作、デジタルデータ活用を検討する農家から相談を受けるなど、徐々に地域の仕事も増えています。

地元のさまざまな人とも接点を持って、活躍する安西さん。そんな様子に、川上さんはうれしそうだった。

川上さん(左)「オフィス開設希望者への案内で大事なのは、話をしながら相手の望みをくみ取り、それに応じること」
川上さん(左)「オフィス開設希望者への案内で大事なのは、話をしながら相手の望みをくみ取り、それに応じること」
川上さん:オフィス移転や移住では、その後どうやって地域に溶け込み生活していくかが課題です。
そこで、私も折を見て、地域の方々に『安西さんたちが困っていないか様子を見てほしい』と話しておきますし、フウドのメンバーにも移住者同士をつなぐサポートをお願いしています。
とはいえ、江田島市民は、移住者に対してウェルカムなところがあります!
安西さん:そうなんです。実は私も、住む場所が決まる前の数週間、紹介してもらった江田島市在住のみなさんの家を泊まり歩いていて(笑)。それで、友達が増えました。

仕事に、プライベートに充実する安西さんは、会社を束ねる身として、こんな願いもある。

安西さん:江田島市に拠点を構えてよかったのは、社員との距離が、物理的にも気持ちの面でも近いところです。リモートワークとは違って、みんなと一緒に働きながら、その場、そのときの思いを共有できるのは強み。その積み重ねが、いい会社をつくると思います。
今後、以前からやってみたかった教育関連の仕事にも、挑戦したいですね。

江田島市~広島市内のアクセスのよさも魅力

ところかわって、江田島の海を見渡せる、すてきなオフィス――。

IT企業のバレットグループ(本社:東京都新宿区)が江田島市に置く開発拠点「COCODEMO(ココデモ)」を訪問すると、やさしい笑顔の定木拓也さんが出迎えてくれた。

定木さん「穏やかな海を見ながらの仕事は、とても集中できます」
定木さん「穏やかな海を見ながらの仕事は、とても集中できます」

定木さんも関東圏の出身で、今回を機に広島県に移住してきた一人である。

定木さん:20年10月、バレットグループは江田島市進出に向けて、立ち上げメンバーを募集していたんです。当時の私はフリーランスのエンジニア。祖父母が住んでいて、ゆかりのあった広島県への(厳密には違いますが)Iターンもいいなと思っていた頃でした。
入社がかなって、現在は4人が働くこのオフィス――市の施設の一室(3階)を改装して入居しています――に来ると、最初は備品がひとつもなくて、その準備も一苦労。でも、いい経験でした。
こんなふうに地方に拠点があることは、IターンやUターン就職を考えたときに心強いものです。企業にとっても、人材の確保につなげやすいのではないかと思います。

話の合間、ふと窓のほうに視線を向けると、海が見渡せた。船の行き来する様子も見えた。

定木さん:いい雰囲気ですよね。この近くにフェリー乗り場があり、広島市内とのアクセスのよさも魅力。私自身もフェリーで通っています。フリーランスになる前は東京・品川勤務でした。満員電車に揺られていたころとは違って、快適です(笑)。
後藤さん(右)「COCODEMOをもっと、みなさんに親しまれる場所にしたい」
後藤さん(右)「COCODEMOをもっと、みなさんに親しまれる場所にしたい」

COCODEMOは新規事業創出に向けた開発拠点と位置づけられているが、同社のCSR活動の一環として、IT関連教育にも力を注ぐ。たとえば、小中高生および教員向けに、プログラミングやデザインツールの使い方教室を定期的に実施している。

その際、地元でのイベント開催に知見を持つ、フウドの代表理事・後藤峻さん(現在、バレットグループにも所属)との連携は欠かせない。

後藤さん:定木さんと会ったときによく話しているのは、COCODEMOをもっと江田島市民に根付く場所にしたいね、と。 現状はオフィスとして機能しているので人の出入りができませんが、気楽に立ち寄れるようにして、親しまれる場所にしたい。 気軽に中高生が来て、日頃からいろいろ教えたり、相談にのったりできたら、もっと活気が出ると思うのです。

そんな二人は、仕事を離れても、気心の知れた間柄。定木さんは最近、後藤さんに教わって、ボードに立ってパドルを漕ぐマリンスポーツ「サップ(スタンドアップパドルボード)」を始めたという。

定木さん:都内で働いていたときと比べて、リラックスできる時間が増えました。後藤さんをはじめ、江田島で知り合った人たちと、『今後こうしていきたいね』『こんなことやりたいね』と将来を語る......そんな積極的な会話とともに、公私にわたって江田島市を楽しんでいます。
後藤さんは「サップ」のインストラクターでもある
後藤さんは「サップ」のインストラクターでもある

今回、主に話を聞いた安西さん、定木さんはともに20代半ば。そうした若い力がいま、江田島市を盛り上げようとしていた。

川上さん:バレットグループさんも、ジーンリーフさんも、チャンスがあれば『ひろしまサンドボックス』に挑戦してほしい。場合によっては、お誘いして巻き込んでいけたら。逆に、やりたいことがあれば、ぜひ声をかけてください! 広島県や江田島市でのチャレンジングな仕事を楽しんでほしいと思います。

彼らの活躍によって、テクノロジーを活用していく広島県の実証実験プロジェクト「ひろしまサンドボックス」も、さらに充実していくに違いない。

<企画編集・Jタウンネット>

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