沖縄で発見された「カニ注意」標識に反響 設置機関に理由を聞くと→「よくカニさんが轢かれてしまうので...」
見知らぬ道を車で走っていると、見慣れない道路標識につい目を奪われてしまうことがある。
中でも気になりがちなのが、動物の「飛び出し」に対する注意を促すものだ。
シカやサル、イノシシは比較的ポピュラーだが、「ここにはそんな動物がいるんだな......」という気持ちになる。クマに注意、なんて見かけたら少し緊張してしまったりするかもしれない。
では、こんな動物の飛び出し警告は、見たことあるだろうか?
これは、ツイッターユーザーの「シルビア壊れラーメン」(@kowareta_kuruma)さんが2021年8月10日に撮影した写真。黄色い道路標識には可愛いカニのイラストが。そしてその下には
「カニ注意」
と警告文が書かれている。カニが飛び出してくるということだろうか......?
産卵のため海に向かう「カニ」のために設置
Jタウンネット記者が13日、投稿者の「シルビア壊れラーメン」さんに聞いたところ、この標識は沖縄県内で目撃したものだという。変わった道路標識が好きだという「シルビア壊れラーメン」さんは
「他にもヤンバルクイナ注意とかハリネズミ注意があって、注意するもののクセが強い!!となりました。マリオカートみたいにカニ踏んでスピンしないように気をつけて運転しました」
と語った。なんとも独特な「カニ注意」標識に対し、ツイッターでも
「カニ出るんだ...」
「躍動感あるカニで可愛い」
「こんな標識初めて見たわ!」
「たまらないこの表情...!」
といった反応が寄せられている。
この標識はどのような経緯で設置されたものなのか。Jタウンネット記者は16日、設置者の内閣府沖縄総合事務局北部国道事務所(沖縄県名護市)を取材し、話を聞いた。
同事務所は沖縄本島の北部、恩納村以北の国道58号とうるま市以北の国道329号の維持管理等を行っている。今回話題となった「カニ注意』の標識が設置されているのは、大宜味村の国道58号沿いだ。
標識が設置されたのは、道路を横断する「オカガニ」等のため。
普段は山側に住んでいるオカガニ等は、毎年5月下旬から10月の産卵時期の満月の夜(前後3日ほど)になると産卵のために海に向かう。その際、国道58号を横断するのだという。しかし......。
「この道路は二車線あり、交通量もそれなりに多いのでよくカニさんが轢かれてしまう、ということがありました。そんな状況を何とかしようということで大学の先生や地元の教育関係者などのご意見を伺い対策が始まりました。
道路ではなくその下を通る山からの水を海に流すための横断水路にカニさんたちを誘導するためのスロープを作ったり、1997年には『カニさんトンネル』という専用のトンネルも完成し、安全に海へ産卵に迎えるようにしました」(北部国道事務所)
このような対策により、オカガニ等のロードキル(轢死事故)は減ったものの、それでもどうしても道路を通ってしまうカニもいたため、2000年にこの「カニ注意」の標識を設置したそうだ。
ほかにも、同事務所職員を中心に、地域の人たちも参加する「カニさんお助け隊」を結成し、オカガニ等が安全に道路を渡る手助けをしていた。
だが、近年、この標識やトンネルがある大宜味村と国頭村の境界あたりでのオカガニ等の出現が減り、ほとんど姿を見なくなってしまったそう。同事務所は
「近年はオカガニ等の出現があまりなく、調査をして今後も設置を続けるか、撤去するか検討する予定です」
とコメントした。なお、「カニ注意」標識をはじめとする北部国道事務局による「エコロード」への取り組みは、同事務所のウェブサイト上で紹介されている。
地域全体で守ってきたカニたちに会えない夏が続いているというのは、やはり寂しいものだろう。今回の調査でオカガニの姿が見かけられることを、そしてこれからもこのユニークな看板が在り続けることを願いたい。