「街の本屋さん」に行きたくなる! 大阪の書店が仕掛けた「業界のためのプロジェクト」に多くのエールが集まったワケ
ネット書店の台頭により、閉店が相次ぐ「街の本屋さん」――。
暗いニュースの多い業界で一筋の光となるような、大阪のとある書店の取り組みが注目を集めている。
それが、正和堂書店(大阪市)が実施した、オリジナルブックカバーを全国の書店で配るというクラウドファンディングの企画。
その名も「競争よりも協業を!オリジナルブックカバーで、全国の『本屋さん』を盛り上げたい」プロジェクトだ。
クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」で2021年4月17日から資金の募集を開始し、わずか2週間ほどで目標額である100万円を達成。最終的に、目標の144%にあたる144万6500円の調達に成功した(同プロジェクトは5月23日に募集を終了)。
その結果として、8月から正和堂書店オリジナルの「アイスキャンディ型ブックカバー」6種と「栞」が、全国47都道府県にある200以上の対象店舗で配布される。
発起人である正和堂書店の小西康裕さんは、同プロジェクトの紹介ページで、次のように述べている。
「インターネットの普及に伴ってライフスタイルは変化し、徐々に本離れが進んでいます。
2020年コロナ禍によるおうち時間の増加に伴い、売り上げが微増している書店はあるものの、依然として苦しい状況が続いています。毎年のように閉店する書店が何百とあり、書店には生き残りをかけた工夫が求められています。(中略)
微力ながら、正和堂での取り組みを生かして、何とか書店業界を盛り上げたい。そんな思いで、今回このプロジェクトを立ち上げました」
書店の生き残りをかけたプロジェクト
同ページによると、正和堂書店は小西さんの祖父が経営していたパン屋の片隅にあった書籍コーナーからスタート。一時は本店とは別に2店舗の書店も運営していたが、出版不況のため現在は本店のみになっているという。
小西さん自身は、平日は会社員として別業種で働くかたわら、週末に店を手伝っている。
それだけでなく、SNS担当として本のPRにも注力。本を知ってもらうきっかけになればと、17年から同店のSNSアカウントで、おすすめの本を毎日紹介することに。
そして20年1月には、「より読書を楽しんでもらいたい」という思いで制作した正和堂書店オリジナルのブックカバーを紹介したツイートが、大きく注目された。
「オリジナルブックカバーは、twitterで13万いいね!がつくほどに話題となり、様々なメディアにも取り上げていただきました。
これをきっかけに、北は北海道・南は沖縄と全国各地から来店してくださる方が増え、一番遠方だとバリからいらしてくれた方もいらっしゃいました。想像以上の反響に、ブックカバーの在庫切れをおこした事も多々あります」(プロジェクトページより)
これが、ツイッターで注目を集めたオリジナルブックカバーの中でも、特に人気が高かったもの。
スイカやカラフルなアイスなどをデザインしたブックカバーに、まるでアイスキャンディーの棒のような栞。眺めているだけで晴れやかな気持ちになれそうなアイテムである。
同店ではこれだけでなく、焼き芋やパンをモチーフにしたもの、縁起の良い富士山を描いたものなど、多種多様なバリエーションを制作・配布している。
Jタウンネット記者は6月29日、小西さんを取材し、プロジェクトへの思いを聞いた。
「近所の本屋に行ってみたい」の声も
まず、クラウドファンディングで目標額を大幅に上回る資金を調達できた要因について、小西さんは次のように話した。
「応援してくれた方がたくさんいたのは大前提ですが、それに加えて、出版社やYouTuber、インフルエンサーの人たちなど、さまざまな分野の人たちに広く興味を持っていただけたことが大きかったと思います」
クラウドファンディングが成功したことで、小西さんのもとには
「今まで本を買うときはAmazonでポチッとしてたけど、(これからは)近所の本屋に行ってみたい」
「(オリジナルの)ブックカバーを全国で配ってくれて嬉しい」
などの声が届いたそう。
さらに、「(今回のプロジェクトで)初めてクラウドファンディングに参加した」という人も多かったのが嬉しかったと言う。
「たくさんの人に協力してもらったことで、これからも書店をやっていくにあたり、たくさんのものをもらえました」(小西さん)
対象店舗で文庫本を購入すると、「アイスキャンディ型ブックカバー」6種の中から、好きなデザインのカバーと「栞」をつけてもらえる。
全国の対象店舗については、確定し次第、公式SNSで公開する予定とのこと。
今年の夏休みは、ぜひネット書店だけでなく、街の本屋さんで本を手に取ってみよう。