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イルカとクジラは「同じ生き物」だった 鳥羽水族館が「どちらでもいいんだよ」と解説する理由

大久保 歩

大久保 歩

2021.03.01 06:00
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自分はいったい何者なのか。そんな哲学的な問いにぶつかるのは、思春期の少年少女だけではない。

自然界にもまた、そんなふうに自分のアイデンティティーを見失いがちなものがいる。

ゆるい雰囲気がかわいい(写真はきさらんどさん提供)
ゆるい雰囲気がかわいい(写真はきさらんどさん提供)

これは、ツイッターユーザーのきさらんどさん(@kisa_land)が、2021年2月21日に投稿した写真だ。

イルカにもクジラにも見える動物が2体描かれ、体が小さいほうが「ぼくはクジラ? それともイルカ?」と、問いかけている。それに対して、博士の帽子をかぶっている同種の動物は「どちらでもいいんだよ」。

なんともゆるい雰囲気なこのイラストは、クジラ目ネズミイルカ科スナメリ属の「スナメリ」という動物の解説であるらしい。投稿者のきさらんどさんによると、三重県にある鳥羽水族館の「伊勢志摩の海」ゾーンで見られるそうだ。

のびのびと泳ぐスナメリの「チョボ」(写真提供:鳥羽水族館)
のびのびと泳ぐスナメリの「チョボ」(写真提供:鳥羽水族館)

きさらんどさんは、写真とともに「鳥羽で一番好きなスナメリの解説」と投稿している。その理由を尋ねると、

「スナメリの先生の『どちらでもいいんだよ』に妙に納得させられるところが好きです。実際のスナメリもとても可愛く、また水槽には太陽光が差していてとても綺麗なので、鳥羽水族館で一番好きな水槽です」

と、答えてくれた。

違いは大きさだけ

「どちらでもいいんだよ」

......見ているだけで肩の力が抜けるようだ。

しかし、スナメリが「どちらでもいい」とはどういう意味なのだろう。気になったJタウンネット記者は、鳥羽水族館にも詳しく話を聞いた。

同館の広報担当者によると、

「スナメリは『鯨類(げいるい)』に分類されるのですが、この鯨類のうち、一般的には4メートル以上のものを『クジラ』、4メートル未満のものを『イルカ』と呼ぶ傾向にあります。
スナメリは基本的に、大きい個体でも2メートル程度なので、どちらかというと『イルカ』になりますが、広い意味では『鯨類』なので『クジラ』と言っても問題ありません。なので、(解説のイラストでは)『どちらでもいいんだよ』と表現しています」

また、

「イルカとクジラは全く別の生き物のように思っている人が多いですが、そこは大きさで分けているだけで同じ仲間の生き物なんですよ」

と、教えてくれた。

記者は、両者は完全に別の動物だと思っていた。なんとなく、ひげが生えていて潮を吹く大きな動物がクジラ、身軽でジャンプ力があるのがイルカというイメージがある。

けれど、実際は大きさで分類しているだけで、同じ生き物だったのだ。

心なしか微笑んでいるようにも見える(写真提供:鳥羽水族館)
心なしか微笑んでいるようにも見える(写真提供:鳥羽水族館)

「どちらでもいいんだよ」

自分はいったい何者なのか。そんな問いにぶつかったときは、スナメリの優しい瞳を思い出してほしい。自分が誰だっていいじゃないか。しょせん分類なんて、人間が勝手に決めただけのものなんだから。

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