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「このままでは全てがおしまいDEATH」 自虐ポスターで話題の商店街、今度はゾンビタウンになってしまう

横田 絢

横田 絢

2020.10.20 17:00
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2020年7月下旬、「盛り下がってるぜーっ!!」と書かれたポスターで話題をさらった「小樽堺町通り商店街」(北海道小樽市)を覚えているだろうか。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で観光客が減り、ピンチに陥った商店街が制作した自虐的だが前向きなポスターは、ツイッターで大きな反響を呼んだ。

あれから約3か月。この商店街のポスターが再び注目を集めている。

あの商店街がゴーストタウンに...?(商店街公式ウェブサイトより)
あの商店街がゴーストタウンに...?(商店街公式ウェブサイトより)

「ゴーストタウン サカイマチ」と書かれたポスターには、何人ものゾンビたちが...。前列右のゾンビは、商店街にある店舗の名前の入ったエプロンを身につけている。きっと、彼らは商店街のメンバーなのだろう。

ポスターの左上には、こんな言葉が書かれている。

「お客様がいない...、売上もない...。
このままでは、
全てがおしまいDEATH」

この商店街に今、何が起こっているのだろう。Jタウンネット編集部は10月19日、小樽堺町通り商店街振興組合を取材した。

観光閑散期の11月に向けて...

取材に応じてくれたのは、組合の事業推進マネージャー・坂口武(さかぐち・あと)さん。

同商店街では緊急事態宣言などで、まだ移動に大きな制限があった時期には、「さかいまち盛り下がってるぜーっ!!」「お客様こないからもう笑うしかありません!」などと書かれたポスターで情報発信を続け、夏頃からは実際に集客を行うためのキャンペーンに取り組んできた。ポスターは大きな話題を呼び、小樽に観光で訪れる人の動機づけになれた部分もあると思う、と坂口さん。

話題になったポスター(商店街公式ウェブサイトより)
話題になったポスター(商店街公式ウェブサイトより)

しかし、経済面では厳しい状況にあり、ハロウィンイベントのポスターに書かれた言葉は、商店街にとってかなり切実な思いだと語った。

「ふざけたことやってますけど、実際の心境になると、結構厳しいですよね。うちだけじゃなくて、どこもそうだと思いますけど」
「夏って、北海道の観光のピークなんです。それとGoToトラベルの影響もあって、少しだけ集客や売り上げがあったんですが、11月から小樽は観光閑散期が始まります。
毎年11月は何やってもうまく行かないというか、何やっても無駄っていうくらい1年で1番お客さん減るんですよ。
だから(今年の集客や売り上げは)先月がピークで、これから下がっていくかもしれない。それを懸念してなんとかハロウィンイベントで内外を盛り上げたいというのが今回の目的です」

夏の間に集客があったと言ってもそれは、「客さんがほぼ0の月が続いた」4月〜5月と比較すればの話。海外や道外からの観光客が大勢やってきていた19年と比べれば、売り上げは苦しいものだという。

「先月が(売り上げ・集客の)ピークだったとするならば、これから本格的に厳しくなってくると思います」と坂口さん。この秋には、商店街の店舗の一部が休業・撤退するという噂も増えてきているそうで、「来年の雪解けごろには、3分の1くらい空き店舗になってるんじゃないかなという危機感もある」と語る。

商店街を盛り上げ、それをなんとか食い止めるのが「〜 ゴーストタウン サカイマチ 〜オタルスイートハロウィン/ホラーナイト」の目的のひとつでもある。新型コロナの影響で集客が難しいことと、そもそも11月は例年観光客が少ないという観点から、「ゴーストタウン」というコンセプトを思いついたそうだ。

同商店街では過去3回ハロウィンイベントを開催しており、いずれも「スイートハロウィン」をテーマにしていた。仮装コンテストなどは行っていたが、ホラーではなく、「カジュアルで柔らかい感じの」イベントだったという。

「去年まではもうちょっと密になるようなイベントだったので、今年はやり方を180度変えなきゃいけない。
その中で、(話題になった自虐的な)ポスターの延長という狙いもあったものですから、今回ゴーストタウンになりました。
不死身のゾンビ。でも頑張ってます、というのが入り口にあってのホラーナイトっていうところかな」

商店街スタッフも、地域の人も、一緒に元気にしたい

同商店街はもともと、洋菓子が人気の「ルタオ」(LeTAO)が本店を構えるほか、ガラス細工など土産物屋や飲食店が多く、遠方からやってくる人をターゲットにした「観光商店街」だった。そのため、地元の人が利用することは少なかったが、今回のイベントは地域の人、特にファミリー層をターゲットにしているという。

ハロウィンの飾り付けをした商店街をゲームしながら回遊する子供向けの企画も準備されている。子供たちが、「堺町通りで苦しむお店のゴースト達」(各店のスタッフが仮装)に声をかけながら様々な店を巡ることで、最後に「ハロウィンお菓子袋」が貰える仕組みだそう。

「僕らが苦しむゴースト、ゾンビなので、逆に元気を与えて欲しいという切実な思いもあります。
お店の人も苦しい状況なので、子供に声をかけてもらえればお店の人も元気になれるんじゃないか。
ファミリーの方でもイベントを通してお菓子をもらえて、嬉しかったら、また来ようとなるかな、という狙いですね」

商店街で働く人にとっても、訪れる利用客にとっても、互いにメリットがある仕掛けになれば、と坂口さん。

売り上げの減少は経営者の悩みの種だが、現場のスタッフにとっては、「目の前にお客さんがいないことが一番辛いと思うんです」。

「やっぱりお客さんがくるということがとても大事なんだということを、お店の方に肌感覚で再認識してもらえれば。
それがお客さんに喜んで帰ってもらえて、地域の人にも、外から来るお客さんにも愛されることにつながるんじゃないかな、と」(坂口さん)

現在はそのためのきっかけを作っている最中だという。今回のイベントへの意気込みを聞くと、

「本当に街を盛り上げたいという一心ですね。
働くスタッフも、また来ていただけるお客様も、みんなで喜んでいただいて。特に地域の皆様もそうですね。
楽しんで喜んで盛り上がって、この暗い世の中に風穴...までは開けられないとは思いますけど、少しでもこういうことをやるっていうのが楽しいって思っていただければいいかな、と思います。
うちの商店街だけがよくなればいいとは思わないし、うちの商店街だけ頑張っても意味ないと思うんですよ。前例を作ることで、全国的にこういうことやっていいんだ、イベントとかもできるんだ、となると、地域全体の経済に影響してくることだと思うので。
僕らのは、所詮一イベントで、地域で盛り上がれば、というものなんですけど、それがどんどんどんどん波及していくということが日本全体にとっていいことだと思っています」

と話した。

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