観光も防災も、あなたの生活も変わるかも? ひろしまサンドボックスが「データ連携」プロジェクトで目指す未来
データ連携基盤ってなに?
「データ連携基盤が目指しているのは、様々な企業や自治体が出会い、協業して、新たな価値を生み出すことです。
ただ、企業同士のデータの共有は、そう簡単ではありません。ここからが、ひろしまサンドボックスでのチャレンジです。
将来的には官民のデータを掛け合わせることで、あらゆる分野間のデータ連携を促進したいと考えています。県内外のみなさまとともに、広島発の新たなサービス・ビジネスの創出が起こる環境を構築していきたいです」
データ連携基盤への期待を語るのは、本プロジェクトを担当する広島県商工労働局イノベーション推進チームの岩男淳一さんだ。
広島県では、地元企業がデータやフィールドを提供し、スタートアップ企業ともに課題解決を図るプロジェクト「ひろしまオープンアクセラレータ」を19年度に実施。地元企業 5社からの声掛けに対して、170を超えるスタートアップ企業から事業アイデアの提案があった。
その提案数の多さに「オープンイノベーション(異分野のデータやノウハウを組み合わせ、革新的なビジネスモデル等を創出すること)へのニーズと可能性を実感しました」と話す岩男さん。データカタログサイトや連携基盤は、このようなオープンイノベーションで発生する、データ連携へのニーズを仕組みとして具体化するものだという。
データ連携基盤は広島県の実証実験プロジェクト「ひろしまサンドボックス」内の取り組み。通信大手のソフトバンクを筆頭に、県内に本社を持つ広島銀行、中国電力、イズミ(小売り)の4社がコンソーシアムを組んで2018年より実証実験を開始した。
3年目を迎えた2020年度は、ひろしまサンドボックスで進んでいる他の実証実験のデータを連携し、それを目録のように確認ができる「データカタログサイト」を 10月12日に開設。もともと目標としていた実証実験のデータを連携した基盤であり、将来的に異分野間のデータ連携を可能にするための先駆けとなる。
データカタログサイトに掲載されたデータはどのように利用されるのか。岩男さんによれば、カタログサイトに登録されるデータは「オープンデータ」と「シェアードデータ」の2種類に分けられる。
「オープンは公開できる実証実験のデータ、シェアードは共有する相手を限定したいデータになります。
例えば、海に関するリアルタイムなデータ(プランクトンの濃度等)を公開すると、そこでいっぱい魚が取れそうだということになり多くの方が集まるかもしれません。その場合、データの提供をした漁業関係者や生態系にマイナスの影響を与えることもあります。
そのようなデータはシェアードデータとし、利用者と提供者が互いの目的や条件を確認し合った後に共有します」(岩男さん)
オープンデータはカタログサイトから直接ダウンロードが可能。対するシェアードデータは中身を見ることはできないが、どのようなデータがあるかを把握することができる。
気になるデータがあればカタログサイトを通して利用申請を出し、提供者との条件交渉などをした上で、データ取得に至るという。利用者はひろしまサンドボックス推進協議会に参加する必要があるが、法人・個人ともにデータの利用は可能だという。
データをリスト化し、提供できる状態にすること...それだけ聞くと地味な取り組みだが、これは簡単なことではない。岩男さんはその要因の一つとして「データ共有の場が限られていた」と指摘する。
今回のカタログサイトは共有の場の1つとなるわけだが、公開予定のデータは実証実験のものに限られており一般化されるのはまだ先の話。一般企業などがデータを共有できるようになるには、乗り越えるべき課題が残っている。
現在、データ連携基盤の抱える課題は何か。またそれを乗り越えた先に、どんな未来が見えるのか。Jタウンネットは9月8日、本プロジェクトを主導するソフトバンクの担当者に、詳しい話を聞いた。