観光も防災も、あなたの生活も変わるかも? ひろしまサンドボックスが「データ連携」プロジェクトで目指す未来
テータ提供には「対価が必要」
取材はZOOM(ズーム)を通じて行った。同席したのはJタウンネットと広島県の担当者、そしてソフトバンクで本プロジェクトに携わる皆さん。プロジェクトマネージャーを務める5G&IoTソリューション本部技術企画戦略統括部シティソリューション部担当部長の東谷次郎さんを中心に話を聞いた。
プロジェクト開始初年度はデータ連携基盤の構築前に課題を抽出、2年目にシステムを作り各社のデータを入れてデータ連携基盤の有用性に関する仮説検証を行った。
3年目になる本年度は、ひろしまサンドボックスの実証実験で得られたデータを連携した、データカタログサイトを構築しようとしている。
5G&IoTソリューション本部技術企画戦略統括部シティソリューション部課長の板垣睦敏さんによれば、広島銀行、中国電力、イズミとコンソーシアムを組んだのは、それぞれが異なる業界かつ地元企業の視点から、データ基盤の運用上の課題などを提起し解決するため。
現在は、データ連携基盤を活用してどんなサービスが作れそうか、自分たちの持つデータをいかに活用できるかを、検討する段階に入っている。
将来的には、ひろしまサンドボックスの域を超えたデータ連携基盤の構築を目指しているわけだが、東谷さんは「課題はまだまだ残っています」と説明する。
「一番大きい課題は、自社の固有データを基盤の上に提供するということに対する対価、モチベーションです。データの提供に関しては、広く産業界に理解を得るための仕組みが整備されておらず、データ連携基盤が実装化される時には、データを流通させるための対価が必要になるかと思います」(ソフトバンク・東谷さん)
ここでいうデータ提供の対価とは、「データ利用料」や「他の連携基盤(データ)を活用する権利」を指している。
またデータ提供には技術・コスト面での負担も各企業にかかる。ソフトバンクはそれを少しでも減らすために、データの連携にはAPIシステムのほかCSV(Excelデータ)でのアップロードを活用可能にするなど、様々な工夫を行っている。
ただ、コスト面の負担は0にすることはできないため、それを凌駕するためのメリット、バリューを出すことが実装化のハードルの1つであると東谷さんは話している。
このような事情もあって、一般社会でのデータ連携基盤の実装化は決して簡単ではない。しかし、企業や研究機関がデータを共有する場を構築することによって、これまでにないサービスが生まれる可能性もある。
では、ひろしまサンドボックスの実証実験のデータからは、どのような活用法が期待できるのだろうか。
「ひろしまサンドボックスの実証実験では、他のコンソーシアムのみなさんが宮島の観光地の渋滞情報や、トイレの開閉の傾向値を取得しています。さらに、洋式トイレがどのくらい配備され、どのくらい混雑しているかが分かれば、和式トイレが使えない外国人観光客に対して誘導マップを作ることができます」(ソフトバンク・東谷さん)
トイレの混雑情報は、すでにLINE公式アカウント「宮島観光」で知ることが可能。そういった既存のデータに他のオープンデータ(今回でいうと、洋式トイレの数や位置情報)を掛け合わせることで、新しいサービスができるのではないかと東谷さんは考えている。