10年以上探し続ける猛者も 全国に点在する珍看板「ハト標識」のマニアックな魅力とは
「ついに念願のハトを激写できました」
2020年9月27日に投稿された、こんなツイートが注目を集めている。鳩ならどこにでもいそうなものだが......「念願のハト」とはいったい何なのだろう。
こちらの投稿をご覧いただこう。
写真に映っているのは、どこにでもありそうな交通標識だ。
雲海たなびく山並みを背景に、2つの標識が上下に、すっくと立っている。「本日ついに念願のハトを激写できました事をご報告します」というコメントが添えられている。なるほど標識は、上が「ハ」、下が「ト」と見えないこともない。
しかし、「ハト」と見えるこの交通標識、いったいどういう意味なのだろうか?
まさかハトが大量に襲来するから、注意を呼びかけているのだろうか? はたまたヒッチコックの映画「鳥」的な光景が見られる、というのか? そんな妄想をふくらませてしまいたくなるが......。
Jタウンネット記者は、まず投稿者の逢沢雨月(@Ohsawa_Ugetsu)さんに、詳しい話を聞いてみた。
ハト標識の魅力は、なかなか出会えないこと
投稿者・逢沢雨月さんに「ハト」の撮影場所、日時などを聞いた。
「撮影場所は長野県南部とだけでご勘弁願います。 地元の方が使うごくごくローカルな道なので... 撮影日時は9月27日の昼、買い物に夫と出かけた時に偶然見つけました」
「ハト」標識に興味を持つようになったのは、何がきっかけだったのだろう?
「ハト標識の魅力は、なかなか出会えないこと。 トハとか八十とかハ┫とかは見かけたことがあったのですが... その度、惜しい!惜しいよ!と車の中で叫んでおりました。 きっかけは、何年か前ネットか何かで見た事です。これは面白い!いつかは自分の目で見たい!と、標識を気にするようになりました」
「ハト」の魅力とは何か?
「希少なモノなので、見つけたら、ラッキーな気分になれるのもいいですね」
ツイッターにはこんな声が寄せられている。
「私もずっとハト看板探してるんですが全く出会えません。......絶滅したのかと思ってましたが完全なハト看板があると知れて良かったです、これからも探します」
ツイッターには、「実は私も、ハトを探している」という人が続々と名乗りを上げている状況なのだ。どうやら、このハト標識やハト看板、一部ではけっこうな人気を集めているらしい。
なんと、「日本全国ハト標識MAP」なるものを作成する動きまであるのだ。
Jタウンネット記者は、このMAPを製作しているツイッターユーザー・ハチコ(@YellowPigeons)さんに詳しい話を聞いてみた。
「約50箇所見つかりました」
ハト標識MAP作成のきっかけについて、ハチコさんは次のように話す。
「13年前に千葉の山間部の道路を歩いていて、初めてのハト標識に遭遇したのが始まりです。
その時はそんなに気にしていなかったのですが、翌年香川県で偶然別のハト標識に遭遇して、『あ、実はあちこちにあるんじゃないかな?』と思ったことが、ハト標識探しをすることになったきっかけです。
10箇所目くらい見つけた頃からは、もうすっかり夢中に。2年前、30箇所目くらい見つけた頃に『日本地図にマッピングしていったら面白そう』と思いMAPを作成し始めました」
<ハ>は、道幅が狭くなっている場所を示しており、<ト>は進行方向右側に道路が伸びている道路を示す。道が狭くなっていて、進行方向の右に道路が伸びているという条件が揃えば、ハト標識出現の可能性は高い。
ハチコさんは、どのような方法で調査しているのだろう?
「ツイッターを始める10年以上前からハト標識の目撃例があって、目撃情報をもとにある程度の範囲をしぼってから直接走りながら探していました。Googleマップの解像度が上がって、ストリートビューで見られる道路が増えた頃からは、ほぼGoogleマップを使いながら探しています」
案内標識、周囲の建物、看板、お店、地形、または影の落ち方(道路が東西南北どの方向に通ってるか)、道路の形状(歩道や車道外側線のあるなし、センターラインの色や形状)などといった特徴を拾い出し、かすかなヒントをもとに、まるで謎解きのように、ハト標識探しを楽しんでいるようだ。Googleマップをここまで活用している人がいるとは驚きだ。
「日本全国ハト標識MAP」の成果について、ハチコさんに解説してもらった。
「約50箇所見つかりました。探し始めた頃は『日本中さがしてもそんなにないんじゃないか』と思っていましたが、実際は 『こんなにもあるのか』と感じています。 1県に必ず1つあるわけでもない、かといって沢山あるわけでもなく、探せばすぐに見つかるわけでもない。田舎の山道にあることが多いですが、石神井公園そばのハト標識のように都会の住宅街にもあったりし それがハト標識の魅力です」
またツイッター上で、「ハト標識」の話題が拡散したことについては、
「ハト標識へ関心・興味が広がるのはシンプルに嬉しいです、興味を持った人が、自分のように謎解きをしながら実際の場所へたどり着く旅をしてもらったらなおさら嬉しいです。 実際に現地で本物を見られた人が、少しだけ幸せな気持ちになればいいなと思っています」
......と語った。