「安全な人喰岩」っていったい何...? 黒部峡谷で発見された世にも不思議な看板がこちら
2020年9月13日、次のような写真付きのツイートが投稿され、話題となっている。
写真は、工事中を示す看板のようだ。「人喰岩をなおしています」と書かれている。
その下には、おそらく「人喰岩」を描いたイラストが2つあり、それぞれ施工前と施工後...つまり工事のビフォーアフターが表現されている。
施工前は冷や汗か涙か、大きな水滴を垂らしたちょっと情けない顔で、アゴの下あたりからポロポロと石をこぼしている。
一方施工後はキリッとした笑顔に、力強い2本の腕。石がこぼれていた部分にはピカピカのマークが。
なんともユニークだ。人喰岩には今、崩れそうな部分があり、それを直して「安全な人喰岩に生まれ変わります」ということらしい。
仔細に見ると、文章は日本語の他、英語、中国語、韓国語で併記されている。「人喰岩(ひとくいいわ)」は、英語では「man-eating rock」、中国語では「食人岩」。韓国語は、ハングルで「ジンクイ岩」と表現されているようだ。かなり国際的な看板である。
柿生さんのツイートには
「いや口そこじゃないだろ感」 「なんとも人を食った話だ」 「パワーワードみありすぎでしょ」
などの声が寄せられ、話題となっている。
「人喰岩」、いったいここはどこなのだろう?
Jタウンネット編集部は、投稿者の柿生(@shunoutei)さんと、看板の発注者である北陸地方整備局に詳しい話を聞くことにした。
涙を流す「人喰岩」、力こぶ見せる?
Jタウンネット編集部の質問に、投稿者・柿生さんはこう答えた。
「この看板を見たのは、富山県黒部市の黒部峡谷鉄道の欅平(けやきだいら)駅すぐのところです。一般人は、鉄道と徒歩でしか訪れられない場所です。2020年9月12日、駅から出て祖母谷温泉方面に歩いて行こうとしたときです」
欅平は、黒部峡谷の黒部川に沿って走るトロッコ列車の終点駅。
人喰岩は、黒部川の本流にかかる「奥鐘橋」を渡った先にある。岩壁をえぐり取ってつくられた道で、黒部峡谷鉄道のウェブサイトでは「岸壁が大きく口を開き、人を飲み込むように見える迫力満点のスポットです」と紹介されている。
次にJタウンネット編集部は、北陸地方整備局に電話で取材した。
北陸地方整備局によると、ここは昭和30年代から工事が続いている場所だという。劣化して土砂崩れが起こるたびに、修理しながら、道路を使用しているそうだ。この道路は、黒部峡谷の砂防工事のために行き交うトラックなどの車両が使用するためのもの。
一般の観光客も通行できるそうだ。ただし、十分に注意してほしい、とのこと。
看板そのものについては、建設会社に直接聞いてほしいということで、この看板を作って設置した、大高建設の担当者に電話で聞いた。
「あの看板は、今年春に製作して、設置したものです。『人喰岩』が涙を流したり、力こぶを見せたりするアイデアはこちらで出しましたが、専門の業者がイラスト化してくれました。
昨年までは、インバウンドで賑わったので、外国語への翻訳も行いました。今年はコロナの影響でさっぱりですが......」
この看板は、人喰岩の近くと、欅平駅近くの2カ所に設置されていたというが、現在、欅平駅の近くだけに残されているそうだ。
投稿者・柿生さんは、9月13日の別ツイートで次のように投稿している。
「黒部峡谷鉄道のトロッコは横が空いてる車両なので、風が通り抜け、非常に爽やかでありつつ、厳しい自然を堪能できる、素晴らしいアクティビティでした」と柿生さん。
トロッコ電車に乗って、世にも不思議な「人喰岩」看板を見に行くのもアリかもしれない。