「辞めたいなら代わり探してきて」 年金相談センターで発見された「ブラックすぎる桃太郎」が話題に→これは一体何?配布元に聞いた
「辞めたいなら、代わり探してきて」――。
意外な人物が部下に向けてそんな厳しすぎる言葉をかけている様子が描かれたポケットティッシュが、ツイッターで話題となっている。
いわゆる「ブラック企業」の上司が言いそうなセリフだが、いったい誰がそんなひどいことを言っているのか......。
まずは実際の写真をご覧いただこう。
理不尽なセリフを言い放っているのは、誰もが知っている昔話の主人公、桃太郎だ。
その向かいには、桃太郎に「辞めたい」という意思を伝えたらしい犬、猿、雉が座って涙を流している。
このポケットティッシュの画像は2020年9月6日、ツイッターユーザーの如月宗一郎(@S_kisaragi)さんが投稿し、話題となった。
投稿によれば、全国社会保険労務士会連合会が配布しているものらしい。
Jタウンネットが8日、如月さんに話を聞いたところ、このポケットティッシュを手に入れたのは岩手県盛岡市にある「街角の年金相談センター 盛岡」。実物を見て、
「とてもキャッチーな構造」
と感じ、ツイッターに投稿したそうだ。
投稿には
「鬼はどっちかなww」
「桃太郎の方がよっぽど鬼だった」
「退治すべき鬼は目の前にいた」
といったコメントが寄せられている。
アルバイト先でのトラブルを桃太郎で表現
このポケットティッシュが伝えようとしていることは何なのか。筆者は早速、全国社会保険労務士会連合会のウェブサイトをチェックしてみた。
するとトップにはポケットティッシュと同じ絵柄が。その下に、
「僕たちの悩み、聞いてください...」
として、犬、猿、雉の紹介がされている。
それによると、犬のペロは
「桃太郎率いる鬼ヶ島遠征部隊のサブリーダー(アルバイト2年目)」
猿の遠藤さんは
「桃太郎率いる鬼ヶ島遠征部隊のリーダー(アルバイト4年目)」
そして雉のチュン助は
「桃太郎率いる鬼ヶ島遠征部隊の団員(アルバイト4ヶ月目)」
と2匹と1羽はそれぞれ鬼ヶ島遠征部隊のアルバイトとして、桃太郎に雇われていることが分かる。
また、ウェブサイトには冒頭の「辞めたいなら代わり探してきて」をはじめ、
「休んでるヒマなんてねーぞ!」
「鬼にやられてケガしても労災おりないよ?」
「鬼、全部退治するまで帰らせないからね?」
といった桃太郎からお供の動物たちへの理不尽な暴言が並んでいる。その暴言をクリックすると、出てきたのは
「アルバイト先で桃太郎のような発言を受けたことはありませんか?」
という問いかけだ。
そう、このウェブサイトでは桃太郎をテーマに、アルバイト先で実際に起こりうるトラブルの違法性や不当性について説明し、そしてアルバイト先でなんらかのトラブルがあった場合は社労士に相談をしよう、と訴えているのだ。
「...悩みがあるなら専門家に電話しな」
お供たちに優しくアドバイスしてくれているのは、なんと敵であるはずの鬼。
ちなみにこのあと、ペロと遠藤さんとチュン助は無事に桃太郎の元から離れ、のどかな鬼ヶ島でアルバイトを始める、という実にユニークな結末を迎える。
小さな目から涙を流していた2匹と1羽は、生き生きと目を輝かせて元気にやっているようだ。
正義のヒーローをあえて悪役に
どうしてこんなユニークなモチーフが誕生したのか。Jタウンネットは全国社会保険労務士会連合会の広報担当者を取材し、11日に回答を得た。
まずは、なぜ桃太郎をテーマにしたのか。気になる誕生経緯を聞いてみた。
広報担当者は
「本件は、当初大学生にターゲットを絞り、社労士の認知を高め、その先に社労士試験を受験したいと思ってもらえるよう、大学食堂の学食トレイに張り付けられる広報素材として作成し、それに併せてWebサイトを公開いたしました。
大学への広報でしたので、学生の皆様が親しみを感じる題材として、桃太郎を選択し、正義のヒーロー桃太郎をあえて悪役にし、ブラックユーモアをまじえ、目を引く設定を考えました」
とする。アルバイトの労働環境相談を通して、社労士への認知、理解を深めてほしいというねらいがあったようだ。確かに大学生を対象としているのであれば、こういったモチーフの方が分かりやすいだろう。
この広報は2018年のもの。今回の話題のきっかけとなったポケットティッシュの設置場所については
「各都道府県の社会保険労務士会等に設置しておりますが、本件を行ったのが2年前のことですので、現在は手に入れることが出来る場所はあまりないかもしれません」
とのことだった。
また、広報担当者はこのブラックな桃太郎のポケットティッシュがツイッターで話題になったことについては「存じ上げませんでした」とした上で、
「本広報は2年前のもので、今話題になるとは思っておりませんでしたが、より多くの皆さんに知っていただき、トラブル解決のお手伝いが出来ればこれに勝る喜びはございません。
また、今回取材をいただいたことで、TwitterをはじめとするSNSの拡散力を強く感じましたので、今後周知方法を工夫していきたいと思います」
とコメントした。