「桜は受粉すると赤くなる」実はデマ Twitterで情報拡散も...専門家「関係ないです」
サクラの花は受粉すると中央が赤くなる――インターネットで何度も話題になってきた、こんな噂をご存じだろうか。
2020年3月末にも、あるツイッターユーザーが同様の情報を冗談めかして紹介。投稿には1万9000件以上のリツイート、5万件以上の「いいね」が寄せられるなど注目を集めた(数字は4月16日現在)。このツイートには、
「私も去年Twitterで知ってから、そういう目で見ています」
「悶えながら心のいいねを連打しました」
「ただ綺麗な桜が違った見え方するから知識ってすげぇ」
といった声が寄せられている。みなさん受粉という言葉からいろいろよからぬ想像をしてしまっているようだ。
しかしこの話、いったいどこまで本当なのだろうか。
Jタウンネットは16日、森林総合研究所 多摩森林科学園(東京都八王子市)の研究者でサクラの専門家の勝木俊雄さんに詳しい話を聞いた。
受粉しなくても赤くなる
まずは「サクラは受粉すると赤くなる」ということについて。こちらは事実なのか、さっそく勝木さんに聞いてみると、
「赤くなる要因はサクラの花の中央部(花弁基部・雄しべ・雌しべ)の老化によってアントシアニンが合成されるためで、『受粉』とは直接関係ないと考えられます」
受粉は関係ない...赤くなったサクラを見て興奮していたみなさん、お疲れ様でした。
勝木さんによると、受粉せずとも老化は進み中心部は赤くなる。それどころか、正常に受粉するとアントシアニンが増加する前、つまり赤くなる前に花弁が落下する場合も見られるという。
花の中心部が赤くなることが受粉と関係ないことは分かった。
しかし、ネット上にはもう一つの説がある。「真ん中が赤くなったら散るサイン」という噂だ。
実際、ウェザーニュースの「桜が散るサイン、ご存知ですか?」という記事(18年4月3日付)にも、ソメイヨシノは散り始める頃になると中心部が赤色に変わると記載されている。
はたして、これは本当なのだろうか。勝木さんは以下のように説明する。
「サクラの花弁は開花後に花の老化、あるいは果実の成長の過程で、基部に離層を形成して落下することになります。赤くなるのは老化のひとつの現れです。そのため老化が進んでいることを示すと考えられますが、赤くならずに落下する場合もありますので、必ず現れる『サイン』ではないとも考えられます」
つまり中心部が赤くなっている花については、老化が進んでいることに違いない。しかし先述したように、赤くなる前に花弁が落下する場合もあるため、必ずしも散り際は赤くなるというわけではないようだ。