テレワークのはずが「ハンコ押すために出社」 通勤者の心に刺さる電車広告、制作の狙いを聞いた
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、時差出勤やテレワークが推奨されている。しかし世の中には、在宅勤務をしたくてもできない人が多くいることだろう。
そんな人々の心を代弁するかのような広告が、ツイッターで注目を集めている。それがこちらだ。

「テレワークが始まった。
ハンコを押すために出社した」
これは誰かの心の声だろうか...というくらい、リアルなキャッチコピーだ。電車内に貼られているこの広告を眺めながら出社した人もいることだろう。広告主はクラウド人事労務ソフトを提供するSmartHR(東京都港区)だ。
ツイッターではこの広告が話題となり、
「あ、昨日のことだ。そして来週も。。。」
「誰も得しないですよね笑」
「考えた人センスいいww」
といった声が寄せられている。
Jタウンネットは2020年4月14日、SmartHRに取材し詳しい話を聞いた。
「多くの方が押印や書類提出のために出社している」
取材に応じた広報担当者によれば、広告は首都圏におけるJR全線の車内や新宿駅の中央通路、東京メトロの主要駅に掲示。期間は4月13日~19日だ。
広告の制作意図を聞いてみると、
「テレワークが開始されても、多くの方が押印や書類提出のために出社しているという現実があります。そのような非合理な働き方を変えるきっかけとなることを願い、テレワークの推奨の中でも出勤しなくてはいけない業種・職種の方が目にする『交通広告』こそ今出す意義があると判断しました」
東京・神奈川・埼玉・千葉の首都圏には7日に緊急事態宣言が発令された。広告は予想通り、その最中でも出勤しなければならない人の目に触れ話題になったというわけだ。
内閣官房IT総合戦略室および総務省の資料「行政手続等の棚卸結果等の概要」(19年5月付)によれば、社会保険・労働保険分野における国・独立行政法人等への申請件数は年間およそ1億6532万件。17年度のオンライン利用率は15.3%(CD等の提出除く)となっている。
担当者はこういった例を取り上げながら、申請業務の現状を、
「多くの企業ではまだ紙をベースにした業務が行われており、出社の必要性が発生することはもちろん、手書き、提出、郵送などの煩雑な業務に忙殺されています」
と説明している。
ツイッターで大きな反響があったことについては、
「嬉しいですね。ひとりでも多くの方にSmartHRの存在を知っていただき、非合理な労働が減ることを願っています。あと100倍くらい拡散されてほしいです」
とコメント。広告が話題になったことをきっかけに、ハンコのために出社するということが少しでも減るといい。