サドルを汚して盗難防止 自転車に貼る「鳥のうんちシール」が画期的だった
本物の鳥のフンよりも「鳥のフンっぽい」
Jタウンネットの取材に応じたもときさんによると、「鳥のうんちシール」を初めて作ったのは大学時代。
通学に使用していた自分の自転車を見て、「こんな汚い自転車誰も盗まないだろうな」と思ったことが発想のもとになったそう。
その自転車には鳥のフンがついていたわけではないが、雨ざらしで、サドルのカバーも破れていた。実際、鍵をかけずに駐輪場に置いていても盗まれることはなかったという。
そんな体験から、誰もが汚いと思うだろう鳥のフンをシールにすることを思いつき、大学の卒業制作として作りあげた。
もときさんが制作のために初めに行ったのは、「鳥の糞を探す旅に出ること」。ムクドリが大量にいる駅前などで、実際の鳥のフンを観察した。
「鳥のフンって、白っていうイメージがあるんですけど、実際そんなに白っぽくなくて。
結構水っぽくて、ぐちゃぐちゃっとしてるんですよね」(もときさん)
もときさんは鳥のフンを探し、写真に収め、トレースし、数種類の試作品を作成した。その中には、実際の鳥のフンを見て作ったものだけではなく、観察前に抱いていたイメージを形にしたフンも含まれていた。
そして、それらの中から最も「鳥のフンっぽい」と思うものを選んでもらうアンケートを行ったところ、実物に似ているものよりも、もときさんがイメージしていたものが最も高く評価されたという。
こうして生まれた「鳥のうんちシール」。その効果を確かめるために、もときさんは実験も行った。
自転車の盗難件数が年間1000件を超える地域で、シールを貼った自転車に鍵をかけずに、合計5日間放置したのだ。
もときさんによると、使用した自転車は6~7万円程度のクロスバイク。きれいで、きちんと整備もされていた。すぐに盗まれても良さそうなものだが、自転車は無事だったという。
本当にシールのおかげだったかどうかは、実験の日に同じ場所で自転車を盗んだ泥棒に聞いてみないと分からないが、魅力的な自転車が5日間無事だったということは事実だ。
物理的な鍵をかけるのは当然のこととして、この心理的な鍵も併用すれば、安心感もぐっと増すかもしれない。