コロナ余波で「蘇」がまさかの流行中 ぶっちゃけウマいの?作って検証してみた
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う小学校等の休校要請を受け、牛乳や乳製品の消費を促すツイートが大きく注目を集めている。学校給食に使われる予定だった牛乳が余ることにより、酪農家にしわ寄せがくることを懸念したものだ。
2020年3月2日には農林水産省もウェブサイト上で「新型コロナウイルス感染症について」を発表。その中でも「牛乳乳製品の消費にご協力ください」と国民に呼びかけている。
普段以上に牛乳を消費するために、現在、ツイッター上では様々な「牛乳大量消費レシピ」が投稿されている。
その中でもことさら目を引くのが、牛乳だけで作れる「蘇」の存在だ。
「蘇」とは、古代日本で食べられていた乳製品。
平安時代中期に編纂された「延喜式」によると、乳を固形状になるまで加熱濃縮し続けたもの(有賀秀子「『本草綱目』に基づいて再現した『酥』と『延喜式』に見られる『蘇』について」より)。
「古代日本の牛乳・乳製品の利用と貢進体勢について」(著・佐藤健太郎)によると、700年には「蘇」が日本で作られていたことが確認できる。その用途を大別すると、(1)薬用(2)食用(3)施物・供物用として使用されており、かの藤原道長も薬として「蘇」を服用していたそうだ。
そんな「蘇」を多くのツイッターユーザーが作っている。
ミケ太郎(@bokumike)さんもそのうちの一人。1日、「蘇」を作る過程をツイッターでレポートし、約1万件のリツイートと約1万8000件のいいねを集めるなど話題になった。 ミケ太郎さんが作った「蘇」が、こちらだ。
見た目は完全にオシャレなチーズ。本当に牛乳だけで、こんな食べ物を作れるのか。そしてそれはどんな味なのか。
Jタウンネット編集部でも、実際に作ってみることにした。
万人受けする味ではないが...
用意したのは、フライパン(筆者は26センチのものを使用)と木べら、そして牛乳(1リットル)。
フライパンに牛乳をすべて注ぎ、弱めの中火にかける。最初のうちは当然のことながら、サラサラとした液体で、これがミケ太郎さんが作ったような固体になるとは信じがたい。
これを木べらでゆっくり混ぜながら、10分程度温めていると湯気が立ってきて、表面に膜ができかけてくる。ホットミルクでよく見るラムスデン現象だ。これも木べらで混ぜてつぶしていく。
このころになると、フライパンのふちにもこびりついてくるものがあるので、木べらでこそげ落としつつ牛乳に混ぜていく。
全体としてはまだまだ粘度のほとんどない液体で、中につぶした膜やこそげ落とした部分がもろもろと混ざっている程度だ。
見た目に大きな変化はないため非常に退屈だが、根気強く混ぜ続ける。とにかく混ぜ続けていれば良いので、フライパンを常に見ている必要はなさそうだ。かなり単調な作業のため、ミケ太郎さんは「フライパンの前に椅子を持っていって正座してFGOやりながらかき混ぜてました(それでも疲れた)」とのこと。筆者も椅子を持ってきて、映画を見ながらかき混ぜた。
たまに確認していると、徐々にカサは減ってくる。いつまでも液体なので不安になるが、1時間ほど経つとかなり牛乳の様子が変わってくる。
左が1時間弱火にかけた牛乳、右が生の牛乳だ。色がクリーム色に変化してきているのが分かるだろう。
とろみも出て、混ぜればフライパンの底が見えるほどに量も減っている。
ここまで煮詰めると、その後の変化は早い。
ここから10分もしないうちにかなり粘度が増し、まるで練乳のようになった。
そしてすぐに、ほとんど固体になる。
あのタプタプと波打っていた牛乳が、まるでクッキー生地のような固体に。においを嗅ぐと、ミルキーにそっくり。今回は、1リットルの牛乳から、150グラム弱の「蘇」を作ることができた。
これをラップで包んで形を整え、冷やしたものがこちら。
何も言われなければチーズかバターだと思うに違いない。
ナイフを入れるとかなりもっちりしていて、重みがある。まず何もつけずに食べてみると、濃厚な牛乳の香りが口中に広がった。ツイッターで「牛乳そのものの甘みを感じる」という感想が多かった通り、確かに甘みも感じる。ただ、牛乳のクセも凝縮されて、塩味のような、苦みのような不思議な後味がある。万人受けする味ではないだろう。
ハチミツをかけてみると、このクセは多少気にならなくなるが、甘みが強くなるためもったりとした印象だ。そこで、ハチミツの上に黒コショウをかけてみると味が締まり、かなり食べやすくなった。
「蘇」は濃厚ではあるが、強い味ではない。自分好みの調味料で、お気に入りの食べ方を探ってみるのが楽しそうだ。