「峠の釜めし」容器の再利用法に注目 実はご飯が炊けるって、知ってた?
群馬、長野、東京に販売店を持つ荻野屋(本店:群馬県安中市)の看板商品「峠の釜めし」。JR横川駅で販売され、60年以上にわたって親しまれる駅弁だ。
峠の釜めしで特徴的なのが、益子焼の「土釜」。これを捨てずにとっておけば、家で再利用できることを皆さんご存じだろうか。
実は、ご飯を炊くことができるのだ。白米はもちろん、具材を入れて混ぜご飯にするなどバリエーションは豊富だ。
こうした再利用法は、峠の釜めしを取り上げた「マネー現代」の2020年2月5日の記事をきっかけに注目を集めることに。実際にやってみたというユーザーからはツイッターに、
「実家ではよくこれでご飯炊いてました。おこげとか出来て美味しかったですよ」
「ご飯炊いたことあるけど美味しかった 今ではお猫様の水飲みになってます」
「サイズも炊け具合もホントちょうどよかった」
といった声が寄せられている。
そもそもなぜ土釜なの?
Jタウンネットは2月6日、荻野屋の担当者に詳しい話を聞いた。
担当者によれば、峠の釜めしは1958年からJR横川駅で販売を始めた。
荻野屋4代目社長の故・高見澤みねじさんが横川駅の利用者に要望を聞き、できた駅弁のコンセプトは「あたたかいご飯であること」「家庭的なあたたかさがあること」「地方色豊かであること」。そこに偶然、栃木県の益子焼の行商が1人用の益子焼土釜を持ち込んだことで、土釜が採用された。
難点としてあげられるのはその重さだが、お客さんのニーズにあわせ土釜は発売当初より軽量化。販売店によっては紙の容器を使用しているが、基本的には土釜での提供を続けている。購入した土釜はもちろん持ち帰ることができるが、希望しない場合は販売店での回収も行っている。
そんなこだわりの土釜だが、そもそも家庭での再利用を想定していたものなのだろうか。担当者は、以下のように話す。
「故・高見澤みねじの思いの中に、食べたあと家に持ち帰り、調味料の入れ物や1人用のご飯炊きなどに活用してもらうなど、旅の記念に喜ばれるのではないかといった思いがありました」
再利用できるのは3~5回ほど
炊飯レシピは荻野屋の公式サイトでも紹介されていて、レシピは以下のようになっている。
【米1合、水180ccの場合】
(1) 米を研ぎ、洗浄した容器の外側の水分をよくふき取る。
(2) ガス台に乗せ、弱火にかける。約8分~10分で吹きこぼれてくる。
(3) 吹きこぼれたら直ぐに、蓋を1~2センチほどずらし、とろ火(最弱火)で沸騰させる。フタも少しずつ閉める。
(4)(2)より約15分後、ご飯の表面に水気がなくなってきたらフタを完全に閉め、すぐに火を止める。
(5)15分以上蒸らす。フタを開けるのが早すぎると、ご飯に芯が残り上手に炊けないことがある。
(6)フタを開け、しゃもじなどで撹拌し完成。
土釜を火にかける際に気を付けたいのが、荻野屋が紹介している炊飯レシピには、「容器が割れることがありますのでご注意ください」と記載されていること。担当者によれば、軽量化を進めたことで、どうしても耐久性が弱くなってしまったという。
対策としては「土釜の水分をよく拭き取ること」「弱火でコトコトと炊くこと」を挙げており、使用回数は取り扱い方にもよるが3~5回ほどではないかということだ。
ツイッターでは炊飯の他にも、プリンを作る、煮卵を漬けるのに土釜を使用するユーザーが見られる。調理以外にも鉢植えとして利用するなど、可能性は無限大だ。
担当者は土釜での炊飯が話題になっていることについて、
「新幹線による高速化、駅ナカ発展による食の多様化など社会環境の変化により、廃業する駅弁業者、事業縮小する企業があります。そんな中、ネット上で話題になることは、若い世代の方々に『峠の釜めし』『駅弁』を知っていただけることにつながりますので、光栄でございます」
としている。