名古屋駅の床で「ウニの化石」大量発見 なぜこんなところに?専門家に聞いた
普段何気なく歩いている建物の床に「化石」が埋まっている――。ちょっと信じがたい話だが、これが実際よくあることらしい。
ツイッターでは、名古屋市科学館の学芸員・西本昌司さんのこんな投稿が話題になっている。
「名古屋駅新幹線南待合室入口の床に、ウニの化石が4つあることを確認!ふだん人通りが多くてじっくり観察できないところをチェックできた」
西本さんが指しているのは白く縁どられた楕円型の模様。他のユーザーになぜこれがウニだと分かるかと問われると、「ウニを縦に割ってみると分かる(このような形になる)」と回答している。この待合室の中には、同じようなウニの化石がいくつか見られたという。
新幹線の待合室の床などまじまじと見ない上に、見つけたところでこれがウニだと分かる人は多くないだろう。ツイッターではこの投稿に対し、
「これを見てウニの化石ってのが分かるのスゴすぎる」
「化石ってそんな簡単に見つかる物なんですか?」
「え?タイルとかの模様ってそういう可能性があるんですか?」
といった驚きの声が寄せられている。なかにはこのツイートを見て、待合室を使った際に探してみたという人もいるくらいだ。
ウニの化石が発見されたことから、どんなことが分かるのか。Jタウンネットは2019年12月5日、西本さんに見解を聞いた。
待合室はウニだらけ?
投稿者の西本さんは、地質学・岩石学を専門とする学芸員。岩石や石材の研究とともに、特別展や普及事業の企画などをしているほか、「街の中で見つかる『すごい石』」(日本実業出版社)という書籍も手掛けている。化石が入っているかどうかに限らず、普段から街中にある石材を調べているという。
ここにウニの化石があることから、どのようなことが分かるのか。西本さんに聞いてみると、
「ウニはトゲがないタイプだと思われますが、それ以上のことはわかりません。ウニの化石があるということから、海だったということがわかります」
とのこと。西本さんが制作した待合室内のウニ化石マップ(12月3日時点)によれば、入り口付近を中心にウニの化石が複数埋まっていることが見てとれる。
「名古屋駅新幹線待合室の床の石材はイタリア産です。おそらく5000万年くらい前の暖かい海の底でできた石灰岩だと考えています。同じ石材を、京都、札幌、松山でも見たことがあります」
待合室に使われている石材について、西本さんはこのように考察している。となるとウニたちは5000万年も前から存在している可能性があることに...気が遠くなりそうな年月だ。イタリアの海から名古屋駅にやってくるまでに、数多の試練を乗り越えてきたことだろう。
Jタウンネットは12月9日、この待合室の床についてJR東海に確認してみたが、「広報部では対応できない」とのことだった。
西本さんによれば、石材の中に化石が見つかることはよくあるとのこと。今回話題になったことについては、
「石に興味を持ってくれる人が増えればうれしいです」
と話している。