新潟方言「飴が泣く」、実は業界用語だった? サクマ製菓に聞くと...「社内で使ってます」
「飴が泣く」
みなさんはこの表現を聞いて、どんな状況を思い浮かべるだろうか。飴が泣くとは...??と疑問に思う人が多くいることだろう。
実はこれ、新潟では「飴が溶けてベトベトになる」という意味。ツイッターユーザーのねりけし(@nerikeshi_k)さんが2019年9月13日にその旨を解説するツイートを投稿したことで、大きな注目を集めることになった。
新潟市には「長期放置した飴の表面が溶けてベトベトになってしまうこと」を表す「飴がなく」って方言があるんだけど、他の地域ではないと聞いて、本当にびっくりして、「じゃあ飴がベトベトになったときなんて言うんですか!?」って聞いたら「え、飴がベトベトになったって言います...」って
— ねりけし (@nerikeshi_k) 2019年9月12日
飴を擬人化したような、「泣く」という表現はどこか風情を感じる。筆者は隣県の富山出身だが、このような言い回しは初めて聞いた。
詳しい話を聞いてみると、新潟市で生まれ育ったねりけしさん(20代)は、県外出身の友人にこのことを指摘され「飴が泣く」が方言であると知った。新潟市域を中心に、祖父母や両親世代から住んでいた人が使っている印象だという。
この言葉は新潟の方言なのか――。そう思われる一方で、ツイッターでは、ある業界の「専門用語」だという説も浮上している。
サクマ製菓の用語集にも載っている
実際、ツイッターではこの投稿に対し、
「新潟市生まれ新潟市育ちです。昔 友人が東京でうっかり『この飴ないてる!』と口に出したら『あなた詩人だねえ』と褒められたと言ってました」
「長岡人ですが確かに『飴がなく』使ってました。チョコレートでも同じ表現でした」
「母親が新潟出身なのですが、昔から母がずっと『ないちゃったね』って言ってたので普通なんだと思ってた」
といった声が寄せられている。
新潟でよく使われる表現ということは間違いないようで、「越後生活方言」(編・遠藤忠志氏)など複数の専門書でも「新潟の方言」として解説されている。そのほか、奈良や和歌山では「わく」と表現することもあるようだ。
その一方で、ツイッターには次のようなコメントも。
「関東のパティシエですが、砂糖が湿気を吸ってベトベトになったり溶けたりすることを『なく(泣く)』と言います」
「ドーナツとかの表面の砂糖が溶けてベトベトになる事を『なく』って言いますね。専門用語だと思ってました 方言なんですね。ちなみに札幌住みです」
「飴が泣く」という表現は、製菓業界で使用される「業界用語」という説が浮上したのだ。
そこでJタウンネットは9月25日、「ドロップス」や「いちごみるく」で知られるサクマ製菓(東京・目黒区)の商品企画担当者に話を聞いてみた。
担当者によれば、「飴が泣く」という表現は実際に社内で使われているとのこと。少なくとも20年ほど前の社内資料で確認できたうえに、社内で使用される用語集に記載があるとのことだ。用語集によれば、
「飴が吸湿し表面が白くなる。べたつきが少なく表面が柔らかくなった状態」
を「飴が泣く」と言うようだ。
現在はそこまで多用される言葉ではないようで、担当者は、
「用語としては知っていますが、今は年配の方や開発の方を中心に使っている印象です」
と話している。
どうやらこの表現が業界用語であることは確かなようだ。
しかし新潟市を中心とした地域では、一般にも使われているのもまた事実。しかし、こうした方言と業界用語の関係などについては、担当者も「分からない」という。