品川名物「子供からTwitterを取り上げる母の像」 本当は何の象徴?現地で調べてみた
鳩がくわえているのは「爆弾」だった
銅像の台座をよく見ると、「平和の誓い」と書かれている。そう、この像の正式名称は「平和の誓い像」なのだ。
そして像の裏に回り込んでみると...。
作者は小金丸幾久(こがねまる・いくひさ)さんだということがわかる。是非とも作者に設置理由を聞いてみたいと思ったが、2003年に亡くなっていた。
長崎県の公式サイトによると、小金丸さんは長崎県生まれの彫刻家。1915年生まれ。本陶彫会会員や東京大学建築学科の講師などを務めていた大家だ。
第二次世界大戦前・中・後を生きた人物で、「明治天皇像」(東京都・桜ヶ丘公園)や「平和の女神像」(長崎県・佐世保市)など数多くの像を残し、長崎県にある記念館には生前に寄贈された彫刻作品が展示されている。
当たり前であるが「我が子からTwitterを取り上げる母の像」ではなかった。では、この像にはどういう意味が込められているのだろうか。
実はこれ、品川区が1985年に実施した「非核平和都市品川宣言」にあわせて設置されたもの。宣言から1周年を記念して、86年3月に大井町駅前に設置されたのだ。品川区のサイトには、
「平和への願いをこめてつくられたこの像は、母親が右手に高くかざした非核平和都市品川宣言のシンボルマークを男児が見つめ、次の世代にその心を語りついでいくことを表しています。台座は原爆のきのこ雲がかたどられています」
とある。
なるほど。すべてが「平和」を象徴していたのか。親子だったことも新たに判明。そして、母親がかかげるあの鳥は、宣言のシンボルマークだという。ツイッターのアイコンではなかった。
品川区は、区のサイト上で、シンボルマークにこめた意味を、以下のように解説する。
「平和の象徴であるハトが爆弾をくわえていってしまうことを表わしており、ハトには品川の文字をデザイン化しています。色はハトが緑色、爆弾が黒色です」
くわえているのは「爆弾」だった。そして、「品川」という文字も体現していた。
駅前にある親子の像。信号と信号の間にあるため、立ち止まる人は少なかった。普段は目にかけない像も、歴史を知ると趣深い。
この像はミニチュア版もある。大崎ニューシティ内(品川区大崎)やJR西大井駅前(同区西大井)、五反田文化センター内(同区西五反田)にも設置されているため、お近くに住む読者のみなさんは是非見に行ってみてほしい。