まるでマリオカート! 道路の真ん中にそびえる木々、長崎の「珍ロード」が生まれた理由
かつては境内地
この違和感たっぷりの道路があるのは、長崎最古の公園である長崎公園の北側にある。
六角道という俗称がある道で坂道になっている。木があるのは坂道の途中。ストリートビューで確認してみると驚きの光景があった。
道路の真ん中にどんとそびえ立つ楠の木。何も知らずに遭遇してしまったら、びっくりすること間違いなしだ。
こうした中央にある木は6本も存在している。また、端から車道に飛び出しているのも1本ある。
白線、反射板など夜でも視認がしやすい配慮はされている。インターネット上でここを通った写真を見ると、タクシーや乗用車が普通に通行している。
慣れて気が抜けている方が危ないものであるが、ここに限っては事前にわかっている慣れた人の方が安全と言えるのかも。
とはいえ、ここまでして残しておく必要のある木は何なのか。調べてみると、近くにある諏訪神社のご神木ではないかとの情報を発見。2019年5月21日、Jタウンネット編集部は諏訪神社の担当者に話を聞いた。
ご神木という説は正しいようで、現在は道路になっているがかつては境内地であったという。
「昭和40年代に長崎東高校が坂の上にできるのと、一帯に消防用道路がないので道路を通したい」
こうした要望から、建設の計画が持ち上がった。ここで話にあがったのが道路建設予定地にあった楠の木だ。元々は楠の木の群生林のような場所で大木が多くある。
市などが協議の上で最終的に「切らずに残す」決断になったのだが、担当者によれば、神社側から「切らないで欲しい」という主張はしていないはずだという。
「敷地内のご神木を切ることもありますが、その時はお祓いをしても神様に事訳(編注・ことわけ。一般に『言い訳・弁解』の意)をして切ります」
必ず切ってはいけないことはなく、根が腐ってしまい危険な場合などやむを得ない理由であれば伐採もあり得る。それだけに「切らないで欲しい」と主張することはないという。
では、なぜ行政側が切らない決断をしたのか。当時行われた協議の議事録がないため、
「今の時代と違ってまだ信仰心が強い時代でしたから、ご神木を切るのに抵抗があったのではないか」
と推測している。
この後、長崎市の土木総務課の担当者にも取材したが、協議の詳しい話は聞けなかった。伐採するケースがあるにせよ、「ご神木」と言われてしまうとできない気持ちは痛いほどわかる。
もし当時の関係者の信仰心の賜物だとしたら、何と美しい風景なのだろうか。