狛犬ではなく「人」がお出迎え 神社のシュール石像、設置の理由を聞いてみた
狛犬は、獅子や犬に似た想像上の生物で、神社や寺院の入口の両脇に置かれている。ところが。獅子でも犬でもない、なんと人間の石像が置かれている神社があるという。
今日寄った神社の狛犬、まさかの人で笑った pic.twitter.com/qA46x4FStC
— ガラムン (@Usukesiri) 2019年4月11日
こちらの投稿で紹介されているのは、神社の本殿の前に鎮座する、頭に飾り物を付けた人間の像だ。いったいここはどこ? そして、これは何?
「『鹿ん舞』でも、いいかや?」
写真上の石像は、静岡県の川根本町にある徳山浅間神社である。Jタウンネット編集部は神社に電話して詳しい話を聞いてみた。答えてくれたのは、前代表の山下忠之(ただし)さんだ。
「今から15年ほど前、当神社の氏子総代をされている方から寄進の申し出がありました。ただし狛犬ではなく、この地域に伝わる『鹿(しか)ん舞』をモチーフにしたものにしたい、ということでした。『鹿ん舞』でも、いいかや? という申し出に、当時の代表だった私は、何の迷いもなく承諾した思い出があります」
「鹿ん舞」とは、頭に鹿の頭を付け、両手に長さ約30センチの紅白のだんだら巻の棒を持ち、その棒の両端をからみ合せるようにして回しながら、前かがみになって鹿が飛ぶように舞う伝統芸能だ。
「作物を荒らす鹿などの獣を追い払い、豊作を祈ったことから起こった行事だと伝えられ、数百年にわたって伝承されている貴重な民俗芸能です。1987年に重要無形民俗文化財に指定されています」と山下さん。
かつては20歳になった若者によって行なわれることになっており、「私も20歳のときに踊ったものです」と、山下さんは懐かしそうに語ってくれた。近年は中学生によって受け継がれているという。
鉦・太鼓・横笛・拍子木など囃子に合わせて、勇壮に舞い踊る「鹿ん舞」は、この地域の人々にとっては、欠かすことのできない大切な行事であり、郷土の結束を現すシンボルでもある。
神社の本殿の前に設置されても、何の不思議もないモチーフなのだろう。