「ガレージに無断侵入し、他人の自転車を勝手に改造。隣のお爺さんの『お節介』に耐えられません」(東京都・50代女性)
「車輪に巻き込まれないように工夫しといたからね」
昔、息子たちの子育て時代に、近所にお節介おじいさんがいました。
当時、ようやく小さな戸建を買い、新しい土地での暮らしに期待を膨らませていた頃。我が家のすぐ斜め向かいに古くから住んでいる老夫婦のうちの高齢のご主人が、家を建てる時から完成まで、毎日建築の様子を観察していたそうで、引っ越しした時にその様子をあれこれ報告されました。
そのたびに、「助かります。お世話なります」とお礼を言っていたのですが、
「現場の連中は大音量でラジオをかけて遊びながら作業していた」
「今の家はあっという間に建っちゃうんだねー」
と安普請の家と言いたげな嫌味にも受け取れ、内心不愉快でした。
それでも、ママチャリに子供たちを乗せてあちこち忙しく駆け回る私に、度々声をかけてくれ、見守ってくれているという安心感もありました。また、道端でご主人の若い頃の話など聞いて会話が盛り上がることもありました。
ある日、いつものように出かけようと我が家のガレージのママチャリに子供を乗せようとして、びっくりしたことがありました。後ろの子供用いすに付いている足乗せのあたりに、餅焼き用の丸い網がワイヤーでしっかり固定されていたのです。
驚く私の様子を見ていたのか、ご主人がすぐ出てきて、
「これじゃ子どもの足が危ないよ。車輪に巻き込まれないように工夫しといたからね」
と自信ありげに言うのです。
絶句しつつも、一応お礼を言いましたが、勝手にガレージに立ち入り、許可もなく勝手につけるなんていくら親切心とは言えさすがに腹が立ちました。次第に接する態度も軽く挨拶するだけの素っ気ないものになっていきました。
不思議なことに、そのご主人の奥さんは全く外に出て来ないので、一度も姿を見たことがありませんでした。
何年か後、ご主人は配達に来た人に自宅で倒れているのを発見され、その後還らぬ人となりました。今思えば、奥さんは寝たきりかなにかで動けない分、毎日活発に外に出ていたので、目と鼻の先の我が家が気になって仕方なかったのかも知れません。
昭和の昔ならご近所での助け合いも迷惑も当たり前で、車両に網を付けたことも感謝することなのかも知れません。しかし、勝手に他人の自転車を改造するのはさすがにあり得ないです。