深谷駅ホームに「ジャカルタ行き」の電車が! 武蔵野線205系、惜別で粋な計らい
「ジャカルタ」と日本語などで行き先表示された電車が、埼玉県内のJR高崎線・深谷駅のホームに止まっている――。こんな写真がツイッター上で投稿され、反響を呼んでいる。
東京駅のような赤レンガの駅舎をバックに、オレンジ色のラインが鮮やかな205 系の電車が春の陽光を受けて輝いている。行き先表示には、「ジャカルタ」のほか、黄色い字で「むさしのドリーム」とあった。
インドネシアの鉄道会社に譲渡される205 系の電車
この写真を投稿したのは、鉄道ファンの「はや」さんだ。2018年3月2日のツイートで、深谷駅で撮ったことを明かし、「ジャカルタ行きの武蔵野線 インドネシアでも頑張ってねー」と書き込んだ。
JR東日本は2月28日、武蔵野線で使用してきた205 系の電車を首都ジャカルタ近郊で鉄道を運行するインドネシア通勤鉄道会社に譲渡すると発表した。「はや」さんは、ジャカルタ行きのは譲渡される電車だとその後のツイートで指摘している。
発表では、これまでも2013~15年にかけて、埼京線、横浜線や南武線で使用してきた 205 系の電車計476両をインドネシアの鉄道事業者に譲渡してきたが、今回は、武蔵野線のも計336 両を譲渡するとした。2018年3月上旬から2020年にかけて、順次実施していく予定だ。
「はや」さんがアップした写真については、「なんかすごくミニチュア感のある写真ですね!素敵!」「やることが粋だなー」などとツイッター上で様々な感想が書き込まれている。
ところで、なぜ譲渡される電車に日本語で「ジャカルタ」などと行き先が表示されているのだろうか。
JR東日本千葉支社の広報担当者は3月5日、Jタウンネットの取材に対し、その理由を次のように説明した。
「喜んでもらえるよう走らせてみたら」と現場が発案
「武蔵野線などの車両メンテナンスをしている京葉車両センターで、現場から譲渡の行き先を示して走らせてみたらどうかと発案がありました。見送ってくださる方もおられるので、喜んでもらえるようにやることにしたと聞いています」
事前にお知らせなどはしておらず、見る人をハッとさせるような粋な計らいだった。
譲渡される205 系の電車は、回送電車として先頭車両にけん引されて千葉県内の京葉車両センターを3月2日に出発し、船に積まれる予定の新潟に向かった。ツイッターでは、4日に新潟の港に搬入されるまで、鉄道ファンらが次々にその雄姿の写真をアップしていた。
通常運行の電車を待つときに駅のホームで止まることがあるといい、電車が深谷駅で止まったときに前出の写真が撮られた可能性があるようだ。「ジャカルタ」の表示は、最後部だけだそうだ。
このような試みは、過去に聞いたことがないといい、今回が恐らく初めてではないかとしている。「ジャカルタ行き」は、この電車1本だけで、ほかに走らせる予定はないという。
なお、JR東日本によると、ジャカルタの首都圏では、鉄道利用者が急激に増加しており、今回、インドネシア側から輸送力増強のため譲渡してほしいと依頼があった。譲渡する205 系の電車は、1985~91年に製造されたもので、山手線、埼京線、南武線に使われた後、91年から順次、武蔵野線に転用されていた。