宇宙のロマンとノーベル賞受賞に沸く「道の駅 宙ドーム・神岡」
全国から注目の道の駅をご紹介する『全国「道の駅」めぐりの旅』、今回は岐阜県飛騨市神岡町にやってきました。神岡町は岐阜県の最北端に位置し、飛騨の山々に囲まれたのどかな町です。 奈良時代から採掘が始まったと言われている鉱山とともに歩んできた町で、鉱山採掘最盛期の昭和30年代には、その産出量から「東洋一の鉱山の町」と称されるほどでした。現在も町の各所に当時の面影が見られ、昭和ノスタルジーを感じられる街並みが訪れた人たちを楽しませています。 この神岡町、昨年から日本国内だけではなく世界から注目される町となっています。そのきっかけは昨年、東京大学の梶田隆章教授が「素粒子ニュートリノ」に関する研究でノーベル物理学賞を受賞したことに関わっています。実はこの神岡町には、ニュートリノ研究で重要な観測施設「スーパーカミオカンデ」があるんです。 この施設には神岡鉱山内の地下1,000mに位置し、5万トンの超純水を蓄えたタンクと、その壁に設置された「光電子増倍管」と呼ばれる約1万以上の光センサーなどが設備されています。この施設で観測が開始されたのは、1996年4月1日。今年、2016年4月1日で、観測開始20週年を迎えました。
さて、今回の目的地は、長野自動車道松本ICから一般道を走ること2時間ほど。公共交通機関ではJR高山本線飛騨古川駅よりバスで45分ほど揺られると到着します。 新緑の山々を颯爽と駆け抜け、到着しました。こちらが今回ご紹介する「道の駅 宙(スカイ)ドーム・神岡」です! 銀色の外観がどこか未来的な印象を受けます。
施設に入るといきなり梶田教授のパネルがお出迎え。ここでパネルと握手をしたり、記念撮影をしたりする人も多いそう。梶田教授のパネルの横にはスーパーカミオカンデ内に設置されている光電子増倍管の実物も展示してあります。 梶田教授ほか、カミオカンデに関わった様々な研究者のサインも展示してありました。ここには梶田教授の師匠にあたり、同じくニュートリノの研究でノーベル物理学賞を受賞している小柴昌俊教授のサインもあります。ノーベル賞受賞後の今年の1月に梶田教授が道の駅にやってきた時には、光電子増倍管にもサインをしてもらったそうでその実物も展示されていました。 ちなみにこの施設にあるサインは、なぜか「ドア」に書き込まれているものが多いのですが、もともとはカミオカンデ施設内のドアに、その研究に関わった科学者の方が名前を書いたのが始まり。現在でもサインをもらうときは新しいドアを準備し、そこに書いてもらうのが恒例になっているそうです。
エントランス横の休憩スペースには、スーパーカミオカンデができるまでの様子がわかりやすく写真とともに紹介され、壁面にはニュートリノに関して説明が書かれていました。まずこの道の駅に来たら一息ついて、世界に名を残す研究について学ぶのもいいかもしれませんね。
ドーム状の建物の中は、飛騨の特産品やお土産品が一堂に集まる物産コーナーになっています。人気のお土産品は、飛騨地方の郷土料理の「朴葉みそ」、栄養成分が豊富と注目されていて、この地方では“あぶらえ”と呼ばれ昔から親しまれてきた特産品の「えごま」を使った商品、「飛騨高山ラーメン」などが人気です。
また、売り場には宇宙グッズコーナーもありました! JAXAや宇宙関連の雑貨からフリーズドライの「宇宙食」といった食品まで充実のラインナップです。
さらに、この物産コーナーの隣には、この道の駅のメインともいうべき施設があります。それが「スーパカミオカンデミニレプリカ室」です!
中へ入ってみると壁沿いに、光電子増倍管がずらりと設置されています。こちらに並んでいるのはスーパーカミオカンデ内に設置されているものと同じ本物の増倍管です。 実際のスーパーカミオカンデはこの増倍管が11,200本設置されています。もちろん、ミニレプリカのこの部屋には同じ数はありませんが、上下左右の壁面に鏡を使うことでどこまでも増倍管が並んでいるかのような、不思議な擬似体験させてくれます。 また、室内にはモニターも設置されていて、実験の様子やカミオカンデについての映像を見ることができ、ノーベル賞を受賞した素晴らしい研究を垣間見ることができます。実際の施設を一般人が見学することは基本的にできないので、身近に研究を感じ取れる唯一の施設とも言えますね。 なぜこのような貴重な施設が、道の駅の中に誕生したのでしょうか。施設の管理に関わる原田さんにお話をお伺いしました。
原田さん「この施設はもともと地域の物産品を扱う施設として1999年にオープンしました。オープンするにあたって何か目玉が欲しいということで、すでに稼働を始めていたスーパーカミオカンデに関してのブースを作ってはどうだろうということで、展示室ができました。その後2005年に道の駅の認定を受けまして、今に至ります」
道の駅の認定を受ける前からこのミニレプリカを展示していたんですね!
原田さん「小柴教授や梶田教授の研究が注目され始めると、来場者も少しずつ増えていきました。特にすごかったのが去年10月の梶田教授のノーベル賞受賞後です。多い時には普段の2〜3倍のお客様がいらっしゃいました。現在は少し落ち着きましたが、それでも受賞前と比べると来場者は3割ほど増えています。入口のサインやパネルと記念撮影されていく方を何組も見かけますよ」
やはりノーベル賞効果はすごかったようですね。 そんなこちらの施設では、文化施設だけでなく飲食店も充実しています。飛騨高山のグルメを味わうことができるという食事処「ひだ小僧」さんを訪れました。 和食を中心とした様々なメニューがある中から、物産コーナーでも売られていた名産のあぶらえ(えごま)を使った特製みそソースが人気の「あぶらえみそかつ丼」(910円)を注文してみましょう!
香ばしいみその香りが立ち上り食欲をそそります。ソースのかかったカツの表面を見てみると、小さなツブツブが入っているのがわかります。これがあぶらえです。 カツの味は甘めのみそソースの中に、一般的なゴマとは少し違った香ばしさを感じます。ソースのかかったしっとりした部分と、かかっていないさっくりとした部分の二つの食感がたまりません! 食事の後にオススメなのが軽食コーナーにあるスイーツです。軽食コーナーでは、うどん・そばから、スイーツ、手作りパンまで多数のメニューが販売されています。その中でも、こちらには飛騨高山地域の人が愛してやまないという自慢の甘味があるということ。 それが「てんぷらまんじゅう」(1個85円)です!
紅白のおまんじゅうを天ぷら粉につけて揚げたという、アイデアは斬新ですが調理法はシンンプルなものです。「現在はこのように気軽に販売されていますが、もともとは祭りや正月などのとてもおめでたい時に食べるものだったんですよ」と販売スタッフの高松さんが教えてくれました。 おまんじゅうの中はこしあんで、甘さは控えめ。これなら甘いものが苦手な男性でもペロッと食べられます。地元では、このてんぷらまんじゅうをつまみにお酒を飲む方もいるんだとか。「揚げたてはもちろん美味しいけど、冷めても美味しいのが特徴ですよ」と高松さんがおっしゃるように、おみやげにも人気ということです。 さらに、これからの暑い季節にぴったりな冷たいスイーツをいただきました。それが神岡産の「とちの実」を使った「とちの実ソフト」(450円)です。色は白ではなくうっすらと茶色くなっています。
口に含むと独特なナッツのような風味が口に広がります。栗とアーモンドを足して割ったような不思議な味ですが、濃厚なミルクの甘味と相まって絶妙な味わいになっています。通常のバニラのソフトクリームも販売されていますが、ほかではなかなか食べられないとちの実ソフトがオススメですよ! 宇宙の神秘ニュートリノに関して学べて、そして地元のグルメも味わえる、「道の駅 宙ドーム・神岡」は頭もお腹も満足な施設でした。神岡町を含めた飛騨地方には、ハイキングにぴったりな山や湿原もあり、これからのアウトドアシーズンにぴったりな場所です。また、道の駅にほど近い場所にある旧神岡鉄道の線路を専用の自転車レールマウンテンバイクで走る「ガッタンゴー!!」も人気のアクティビティとなっています。 お子さまの夏休みの自由研究にも活用できそうですね。ファミリーで訪れてみてはいかがでしょうか?
施設情報 ●道の駅 宙ドーム・神岡 住所:岐阜県飛騨市神岡町夕陽ヶ丘6番地 営業時間:特産品・展示コーナー 9:00〜17:00 軽食コーナー 9:00〜19:00 レストラン「ひだ小僧」 10:00〜19:00 http://www.skydome.jp/
※記事中の情報・価格は取材当時のものです。
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