横浜・みなとみらいから東京・水道橋まで船で出勤したった!
"THE横浜"の風景を背中に、いざ羽田へ
話は数週間前にさかのぼる。「秋葉原・天王洲・羽田空港舟運プロジェクト準備会」から新船試乗会の案内が送られてきた。
このプロジェクトは国土交通省が地元企業と手を組んで実施しているプロジェクトで、東京の万世橋周辺の道路空間や船着場の活用から発想され、秋葉原から羽田空港へ毎日定期便の運航は可能かどうか、実験運航を重ねているものだ。
2015年秋に行なわれた初回実験には7日間で約1500人の乗船があり、「また乗りたい」と答えた人が85%を記録したとのことだった。
今回、新船「JET SAILOR号」を導入し、航路を水道橋から横浜まで航路を拡大。地域の"応援団"がさまざまな特典を用意しこのプロジェクトを盛り上げ、第3次実験を行うことになったらしい。
かくいう私は、TVドラマ「男女七人秋物語」で主人公・今井良介が川崎~木更津の通勤でフェリーを使うのを憧れて見ていた世代。「みなとみらいから水道橋まで最新式の船で通うなんていいじゃん!」と速攻参加を決意。冒頭の朝へと至ったのである。
そして、当日。
目の前の「JET SAILOR号」は、雲一つない青空の下、その群青のボディを輝かせていた。長さ15.4メートル、幅3.5メートル、高さ2.95メートルの彼は、最高速度20ノットで定員50名を運んでくれる。
船体後部は窓がなく解放感にあふれ、天井はガラス張りで眺めは抜群。新しくてきれいなトイレは、洗浄便座付き&バリアフリー構造と、細部への気遣いも忘れないニクい奴だ。
いざ船に乗り込んだところで、東海道線・京浜東北・根岸線が止まっているとの情報が入ってきた。これで、船で出勤する正当性が俄然アップ。電車遅延などどこ吹く風、颯爽とした表情で会社に登場してやろう。
ぷかり桟橋を出航すると、船は一路ベイブリッジ方面へ。
ふと後ろを振り返ると、横浜ランドマークタワーに帆のような形のヨコハマ グランド インターコンチネンタルホテル、観覧車コスモクロック、横浜赤レンガ倉庫、大さん橋に横浜マリンタワーと、みなとみらいから山下公園にかけての名所を一望。横浜の絵葉書のような景色を満喫できる。幸先のいい出航である。
「JET SAILOR号」はかなりの速度で進んでいくが、揺れはほとんど感じない。車で移動する時の感覚と違いはない。風が気持ちよく、時折飛んでくる波しぶきさえ心地よい。潮の香りもほとんどないが、嫌な臭いもまったくなく、船からの眺めに集中できる状態だ。
横浜港からは京浜運河を一路東上していく。鶴見線海芝浦駅を遠くに見、東芝や日清製粉などの工場や大きなタンクが立ち並ぶ景色は圧巻の一言。これが工場夜景にきらめく時間帯なら、近未来にタイムスリップしたような気持になるのではないだろうか。
好みのタイプの工場などを探しているうちに、左手にいくつもの機影が登場。1つ目の船着場、羽田空港船着場が近づいてきたのだ。この船着場に到着するまでの間に、結構羽田に着陸する飛行機が間近に見えるので、飛行機マニアには絶好の撮影ポイントであろう。
結局、羽田空港船着場までは、通常60分、この日は飛ばしたのか50分で到着した。
到着した羽田空港船着場は、正直殺風景な船着場だ。
周囲にはほとんど何もなく、羽田空港国際線ターミナルまでも歩いて15分はかかる場所だ。実際に船着場を見るまでは、みなとみらいのホテルの泊まった後、羽田から旅立つ旅行者は景色も楽しめるし、この船ルートいいのでは?と思っていたが、15分もスーツケースを押してターミナルまで行くのは辛すぎる。そうした周辺の整備が待たれるところだ(現在、日曜の定期便発着時は無料バスも運行されているらしい)。