外国人限定...さいたま市内のホテル宿泊でSIMカードが無料でもらえるわけ

日本を訪れる外国人観光客数は2014年が1341万人と過去最高を記録した。2015年1～6月も勢いは止まらず、前年同時期と比べさらに46％も伸びている。
背景には、自然や都市の清潔感、食べ物のおいしさ、ショッピング施設の充実、日本人の親切について高い評価がある。

しかし、ネット環境については辛口の声も聞かれる。
海外には無料Wi-Fiが利用できる施設がたくさんあるのに、日本はまだまだ少ない。プリペイドSIMを販売している場所も限られている。

そんな外国人観光客の不満に応えようと、「Just North of Tokyo」（東京のすぐ北）を掲げる埼玉県で、太っ腹サービスが実施中だ。

Amazonだと3000円以上するSIMがタダ

さいたま市は、宿泊した外国人旅行客を対象に、料SIMカード2000枚を7月14日から無料配布している。条件は市内にある５つのホテルのいずれかに宿泊するか、さいたま市内にツアーで来訪すること。

カードの種類はマイクロ版（500枚）とナノ版（1500枚）の２つ。音声通話はできないが、スマートフォンやタブレットに差し込めば国内のインターネット通信が利用できる。通信容量の３GBを使い切るか、使用開始から30日間は利用可能。

配布は10月31日までで、11月1日以降は使用期間が30日に満たなくても無効となる。

ちなみにカードの中身はUmobile（ユーモバイル）のプリペイドSIM。NTTドコモのLTEに対応している。ユーモバイルの同タイプがAmazonで売っているが、セール品で3280円する。

「外国人旅行者に『さいたま市を知ってもらいたい』という目的から無料配布しています」
「きちんと調査したわけではありませんが、全国初の試みではないでしょうか。他自治体から『自分たちもやってみたい』という問い合わせを数件いただいております」（市の観光国際課の担当者）

SIMカードには、オリジナル絵はがきや大宮盆栽美術館の割引券といった嬉しい特典も付いている。

ほとんど在庫は尽きているのでは......と思われがちだが、まだ半分以上余っているそうだ。羽田空港の観光情報センターでチラシを配布したり、フェイスブックページ「Saitama JAPAN　Just North of Tokyo」の海外版などで告知するなどして、利用を呼びかけている。

実際、首都高速は大宮線が東京都心に直結しているし、鉄道は上野東京ラインや湘南新宿ラインが乗り入れる。さいたま市内と成田空港・羽田空港を結ぶリムジンバスだってある。

外国人観光客の需要に宿泊施設の供給が追い付かず、都内や大阪のホテルは予約が取りづらい状況が続いている。日光や富岡製糸場といった北関東に足を運びたい旅行者なら、さいたま市は穴場かもしれない。超デカいヨドバシカメラもできたばかりだし（参照：埼玉初出店、コクーン3のヨドバシのペンライトの品ぞろえがガチ勢）。

それでも埼玉のプリペイドSIMが普及しない理由

では、なぜ、埼玉の無料SIMが余っているのか。
背景には、いわゆるスマホの「技適」マーク問題がある。「技適」マークのないスマホを日本国内で利用すると、現状は電波法違反になってしまうのだ（国際ローミングは問題なし）。
米国版SIMフリーiPhone6／6Plusを除き、海外旅行者の利用する端末の多くは「技適」マークがついていない。さいたま市が現在配布しているSIMカードは、いわゆる技適マークを取得した端末でないと作動しないようになっている。

しかし、東京オリンピックの2020年開催を控え、国は方針を転換。2015年5月に電波通信事業法を改正した。1年以内にこの法律が施行されれば、「技適」のない端末であっても、外国人旅行者の国内利用は事実上解禁される。

さいたま市に続き、多くの自治体が同じサービスに踏み切れば、状況が一変する可能性もあるのだ。