朝ドラ「まれ」に見る、地方移住の「理想と現実」
NHK連続テレビ小説「まれ」は、石川県能登地方が舞台だ。
主人公の津村希(つむらまれ)は、高校卒業後、家族のため公務員となる。しかし幼い頃からの夢だったパティシエを目指すこととなり、横浜で修業に励む。やがて故郷で小さな店を開く――。
さて、その「公務員編」の舞台となっているのが、2002年4月の輪島市だ。
晴れて市役所職員となった希が配属先されたのは、産業振興課の移住定住班。
過疎化と高齢化という2つの問題を抱えている地域だが、能登空港開港を翌年に控えていて、観光だけでなく移住者を呼びこむチャンスと捉えている。彼女の仕事は移住者のサポートをすること。
希の着任早々、先輩職員は「こんな田舎に引っ越したいけ? 空港できて便利になったら、みんな東京に行ってしもうだけでわ。無駄無駄」と愚痴をこぼす。それでも前向きに取り組もうとする希だったが、移住者に振り回された挙句、上司に目を付けられる羽目になる。
視聴者「こんな移住者いる~」
視聴者の関心は今のところ、ドラマで描かれている「都会人の地方移住問題」に集中している。
我が身に染みる視聴者もいるのだろう。同感の声が相次いで投稿されている。
朝ドラ「まれ」まさかの移住促進がらみの展開(^^;;田舎への移住、いいことも悪い事もあるよ。経験者は語る。
— みさき君 (@2001tmfc) 2015, 4月 19
現実に、都会から逃げてきて田舎の厚意につけ込み我儘しまくったあげく自意識ばっかり肥大して今じゃ自分達が能登代表、って顔してる移住者を何人も見てきてるので #まれ がやたらリアルに見えてしまう。
— こうでん (@koudenh) 2015, 4月 20
移住者でシタール演奏家の京極ミズハは、近所の住民が自宅前に置いていったおすそわけの野菜を「黙っておいていくなんて非常識でしょ」「ゴミ」と言いのける。しかも自分では片づけず、希に処理させようとする。
「人口が減って困っているんでしょ? わざわざ来てあげたのよ」というお客様気分、というか強烈な上から目線だ。
希の献身ぶりに「ありがと」と耳打ちする場面もあり、変化の兆しも見られるが......。
田舎の付き合いが面倒なのに、何でこの人は移住したんだろうね #まれ
— 和奈 (@kazuna17) 2015, 4月 19
「移住してきたからには地域に馴染むために文化祭に作品展示しませんか?」「ギャラはいくら出るの?」「は?」
なんてのをリアルで見聞きしてきたからあのシタール奏者だけがモンスターには見えない #まれ
— こうでん (@koudenh) 2015, 4月 21
故郷の能登でカフェを開こうと考えるUターン希望者も登場する(実は希一家の居候先、桶作夫婦の息子・哲也)。彼はカフェを開きたくて産業振興課を尋ねる。しかし奨励金の額を聞いて「たった10万じゃ何もできないよ。これでどうやって定住しろっていうの」と不満を漏らす。
哲也の事業計画の詰めの甘さに視聴者もツイートせずにいられない。
移住だけで10万もらえるくせにな地元民のモヤモヤVS10万じゃ何もできねえよな移住民の本音?そして軋轢へ?というのが対個人の補助金の闇... #まれ
— こはろさん (@kohalogical84) 2015, 4月 20
#まれ 図面やスケッチは作っているくせに、資金もないし移住先の補助金制度とかもまるで調べていない。。。徹さんに輪をかけたダメ夢想家じゃん。 pic.twitter.com/eL9OmvuTXv
— satosi_s (@satosis) 2015, 4月 21
そもそも、津村一家も1994年に東京からやってきた移住者だった。縁者がいたわけではなく、希の母・藍子が投げたダーツが命中した能登を選んだ。
希と藍子、弟の一徹は能登になじんでいくが、田舎生活に慣れない父・徹はすぐに行方をくらましてしまう。結局6年ぶりに能登に戻ってきた徹は市役所の清掃員になる。
ドラマで描かれているのは、「都会ではうまく行かなかったけど、田舎ならやっていけるはず」という都会人の勘違いだ。そんな人ばかりではないだろうが......。
田舎ならなんとかなるって移住したのがまさに大泉洋一家だよねw #まれ
— 竹元勇子 (@yutakemoto) 2015, 4月 19
希一家がいつまで経っても新参者扱いされるところに、地方のリアルを感じる視聴者もいる。
朝ドラ まれ見て思う。「地方はどこも一緒なんだなー。」「移住者が言葉がしゃべれるようになったくらいで受け入れてもらえるか!!」「6年やそこらじゃ『移住者』のシールは薄くもならない!!」 #まれ #移住
— kiha3(きはさん) (@kiha3) 2015, 4月 16
一方、「都会人はわがままで、田舎の人は純粋」という番組のレッテル貼りに疑問を呈する人もいる。
#まれ「東京から移住してきた、地元に馴染まない住民VS純粋な田舎の人」もう、設定だけを机上で考えて。数分のリサーチや考察すらしていない無能脚本家。板尾係長の「何を考えてる!?」は、こっち(視聴者)がお前(無能脚本家)に言いたいわ! 登場設定人物全てに対する偏見の塊で物語が出来てる
— 市川大河 (@ArbUrtla) 2015, 4月 20
希の上司は公務員のステレオタイプか!?
希の上司・紺谷博之を演じているのは板尾創路さん。仕事ができて将来の市長候補という声もある。
相談者のプライベートに口出しする彼女に対し「(公務員は)公私混同するなと言ったはずだな」「この仕事には向いていない」と叱るが、いろいろ面倒見るのが移住担当者の仕事じゃないの?というツッコミも見受けられる。
#まれ いやいや、Uターン移住希望の人がめげそうになったとき親との仲を取り持ったり、起業に悩んでいる人に便宜を図ってあげるのは移住定住班の立派なお仕事だと思うけど。 pic.twitter.com/9q8MuF6ey6
— satosi_s (@satosis) 2015, 4月 23
#まれ あえて書くと紺谷課長の「頼まれてもいないことを引き受けるな」というのは逆で、都会から来た人は当地の事情に疎いから思いつかないことも多い。そこをうまく提案して移住しやすくしてあげるのも移住定住班仕事のはず。希のは少し押し付け気味だったけど。
— かば (@kaba101) 2015, 4月 23
ドラマが始まってまだ1カ月足らず。移住者は能登に溶け込んでいけるのか、産業振興・移住定住とパティシエがどう結びつくのか。今後の展開から目が離せない。