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「若者が集まる離島」海士町が目指す、さらなる「教育改革」とは

Jタウンネット編集部

Jタウンネット編集部

2015.01.30 13:30
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海士町という町を聞いたことがあるだろうか。日本海に浮かぶ隠岐諸島の島前三島の1つ・中ノ島に位置し、広さは山手線内側の半分くらいだ。
2002年に就任した山内道雄町長の指揮の下、大胆な行財政改革と地域ブランド創設に取り組み、町民約2400人の1割超を移住者が占めるまでになった。70万人割れした島根県で唯一、人口が増加している。

地方創生のカギを握るのは「教育」

人口対策と6次産業化で成果を上げた同町だが、若者の島離れが止まったわけではない。

「流れを変えるには『仕事を作りに島へ帰る』という人材を育てないといけない」と考える山内道雄町長は、県立隠岐島前高等学校(以下、島前高校)を降り出しに、教育改革に取り組む。

隠岐島前高等学校の概観(Inomata2009さん撮影、Wikimedia Commonsより)
隠岐島前高等学校の概観(Inomata2009さん撮影、Wikimedia Commonsより)

この島前高校、都会の進学校が顔負けするほど、スケールの大きいプロジェクトを次々と実施しているのだ。

2015年1月27日、首都圏に住むビジネスマン向け人材募集の記者発表会&キャリアフォーラムに、山内町長と教育関係者が出席するという情報に接したJタウンネット編集部は、どんな教育が島で展開されているのか直接聞くため、会場の東京・渋谷へ向かった。

海士町の位置(海士町公式サイトより)
海士町の位置(海士町公式サイトより)

離島にして最先端を歩む高校はどんなところ?

1955年に設立された島前高校。生徒数約150名の小さな学校ながら、卒業生39名中13名が国公立大学や早慶など難関大学へ進学する(2013年度実績)。ところが2008年の在校生数は90名を下回り、廃校の危機に瀕していた。

町長は、当時を次のように振り返る。

「高校ができたときは皆喜んでいたんだけど、徐々に生徒が減っちゃって。そうすると競争が起きないから、優秀な子供から島外の高校に進学し、人口が減るという悪循環が続いていた」
山内道雄海士町長(写真は編集部撮影)
山内道雄海士町長(写真は編集部撮影)

子供に仕送りする余裕のない家庭だと、一家総出で島を出るというケースは珍しくない。入学してくださいと頭を下げたところで、「そんな学校は嫌」というのは誰もが同じ。島前三島から同校へ進学する率は45%しかなかった。

生徒が入学したくなる学校にするしかない。足りないなら島外から生徒を呼ぼう――島前高校や地元自治体、教育関係者は「高校魅力化プロジェクト」に着手する。

「地域起業家を育てる」「島全体が学校、社会の縮図」をスローガンに、グローカル(グローバル+ローカルのバイリンガルという意味)な考え方を育てる独自科目を設けたり、国内外の専門家を招いて対話の場を設けたり、少人数で価値観が同質化しないよう留学生を招いた。
外から人を招くだけではない。修学旅行先であるシンガポール国立大学で、プレゼンテーションさせるようなことにもチャレンジしている。

日本の地域創生をリードする学びの場にしたい

学力向上については、高校連携型公立塾「隠岐國学習センター」をつくり、少人数指導でフォローを徹底した。
センターを立ち上げたのは2009年11月に移住した豊田庄吾さん。大手情報出版企業や人材育成会社の経験を活かし、現在はセンター長を務める。
すっかり島に溶け込んだ豊田さんは、

「ド田舎の最先端である海士町と、グローバルの最先端であるシンガポール、どちらも学ぶということをさせている」
「島の将来を担うグローカルリーダーを育成するとともに、(海士町を)日本の地域創生をリードする人材が学ぶ場にしたい」

と意気込みを語った。

これらの取り組みは着実に成果を上げている。生徒たちは島の資源を使った観光プランを立案し、2010年の観光甲子園でグランプリ(文部科学大臣賞)を獲得した。

過疎だから役立つ、最先端の情報通信技術

島の教育のデジタル化推進にあたっては、2014年3月に移住した指導スタッフの大辻雄介さんの働きが大きかった。
ベネッセコーポレーションでICT(情報通信技術)を用いた新規教育事業を開発した経験がある彼は、島前三島を結んだ遠隔授業を開講した。ネット放送授業は現在、週1回全国に向けて配信されている。

ビズリーチ主催の「地方創生リーダー キャリアフォーラム」で講演する大辻雄介さん
ビズリーチ主催の「地方創生リーダー キャリアフォーラム」で講演する大辻雄介さん

教育産業のプロフェッショナルとして自信をもっていた大辻さん。ところがいざ海士町に移住してみると、「地域」という要素が欠けていて、しかもそれはとても大きいことに気づかされたそうだ。

「地域の課題を教育とICTで解決することは、海士町だけでなく日本に偏在する課題。これを自分が解決するんだと考えると、非常にワクワクする」

地域創生を掲げる自治体と団体が結集

地元の教育委員会は、高校から始まった教育改革の流れを小・中学校などに広げたい考えで、その事業推進を担う人材=リーダーを公募する。

職種は初等教育/中等教育のコーディネーター、公立塾の教科指導責任者、大学プロジェクト推進リーダーの4ポジション。合わせて4~5人を募集する。

同町は地方で起業あるいは新たな枠組みづくりができる人を「リーダー」と位置付けている。都会で培った能力を教育分野で発揮してもらい、後進を育てほしい――今回の募集にはそんな狙いがある。

地方創生リーダーを合同で募集する「ノースプロダクション」(就業地:北海道浦幌町)と「NPO法人カタリバ」(就業地:宮城県女川町)の代表もそれぞれ出席。地方から日本を変えてくれるプロフェッショナルに応募を呼び掛けた。

写真右から、NPO法人カタリバ代表理事の今村久美さん、海士町長の山内道雄さん、ビズリーチ執行役員 キャリアカンパニーCEO 多田洋祐さん、ノースプロダクション社長の近江正隆さん(編集部撮影)
写真右から、NPO法人カタリバ代表理事の今村久美さん、海士町長の山内道雄さん、ビズリーチ執行役員 キャリアカンパニーCEO 多田洋祐さん、ノースプロダクション社長の近江正隆さん(編集部撮影)

今回の公募は、41万人が登録する会員制転職サイト「ビズリーチ」(東京都渋谷区)のプラットフォームを使って実施される。特設ページを用意するほか(要会員登録)、会員にDMで応募を呼び掛ける。募集締め切りは2月23日まで。

ビズリーチの特設ページ
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