「たいやきの顔」の男前さが気になって仕方がない
たいやきのしっぽにはあんこが入っているべきなのか論争
ここまできたら、新宿区若葉にある「わかば」を外すわけにはいかない。JR中央線、東京メトロ丸ノ内線・南北線四ッ谷駅から徒歩6分くらい。新宿通りから1本入った横丁のところにある。時間は午後5時前。おやつを一番食べたくなる時間帯だ。案の定、甘いものに目がない男女で店頭は賑わっていたが、列に並んでいるのは数人で、数分で購入することができた。
バナナブックスから出版された『東京たいやきめぐり』によると、1953年に「たいやき論争」が起こった。わかばの近くに住んでいた直木賞作家安藤鶴夫氏が、「たいやきのしっぽにあんこが入っていた」と激賞。3月19日の読売新聞朝刊に掲載されたところ、店に客が殺到し大騒ぎになった。これに対して浪花家総本店のファンだった山本嘉次郎が「しっぽにあんがあるのはしつこい」と反論した。
今から60年以上も前の話で、原材料の調達事情も様変わりしている。私が食べた限りでは、浪花家総本店のしっぽにもあんこが入っていたような。
安藤氏が称えたわかばの伝統は今も受け継がれていると言っていい。たいやきに風格があるのだ。ふっくらとしていて、あんこに厚みがある。鱗は江戸川ばしの方がよくできている印象だが、顔の表情はわかばの方が男前かも(メスだったらごめんなさい)。1尾140円。
下の写真はたいやきを正面から撮影したものだが、面構えが本物の魚っぽい。たまたま受け取った商品がそうだったのもしれないが、たかだかたいやき1尾に感動してしまった。
なお、わかばの店頭には「たいやきの召し上がり方色々」「保存方法」などが書かれた紙が置かれ、無料でもらえる。こうした気遣いも嬉しい。
4店まわった結論は、「たいやきの形状は店によって異なる」。ほんのちょっとの差なのだが、本物の魚を見比べるような楽しさがあった。