「歌う知事」の裏に岡山県本気の「移住政策」
岡山県が、一風変わったPR動画を公開して話題を呼んでいる。
2014年1月15日に公開されたこの動画は、県のスローガンである「晴れの国おかやま」にちなみ、「8092人」の移住者を募集するものだ。
最近は自治体でもちょっと「遊んだ」PRが少なくないが、この動画では、伊原木隆太県知事がとにかく目立ちまくる。自らステージに立って朗々と歌い、と思えば「実は口パク」とギャグを飛ばし、かと思えば今度は本当にサックスを吹き出し――と、ほぼ全編にわたって主役扱いだ。
また1週間前の8日に投稿された「予告編」では、上記の本編の内容について、
「(1)フォーチュンクッキーを踊る(2)きびだんご県になる(3)おかモン、デビュー!」
といった、どこかで聞いたような選択肢をクイズ形式で提示し、やはり話題になっていた。
実際に増えている移住者
となると、動画で募集する8092人の移住者――というのも「遊び」なのかと思いきや、語呂合わせの人数はともかく、県はあくまで本気だ。
「移住」の対象として岡山県が注目を集めたのは、東日本大震災以来のことだ。被災地からの避難者に加え、放射能被害などを懸念する人々から、自然災害が少なく、原発などからも遠く、また交通の便も良いといった点が評判になった。
2012年発売の書籍『関東脱出!本気で移住マニュアル』(イースト・プレス)で「安全な街」1位に選ばれたことも、人気に拍車をかけた。
総務省の調査によれば、2012年の岡山県の転入超過数は404人で、11年の605人に続く2年連続の増加となった。大都市圏を別とすれば、お隣の広島を含め多くの県が転出超過となっており、岡山県は珍しい例だ。
市町村別でも、岡山市が1655人の転入超過で、全国14位に。上位はやはり東京など主要大都市とその周辺に集中しており、岡山の躍進が際立つ。しかもこの傾向は、震災から3年近く経つ今なお続いているという。
県も、最近ではこうしたチャンスを逃すまいと、移住者向けの就職支援や、実際に岡山へ移住した人々の声をウェブなどで発信するなど、積極的な施策を打ち出している。一見おふざけのような動画の背景には、千載一遇のチャンスを活かしたいという、なりふり構わない姿勢がある。