羽田空港に降り立った利用客は、京浜急行や東京モノレールなどの鉄道路線、あるいはバスなど自動車を利用して目的地に向かうのが普通だ。 羽田空港トンネル。普段はなかなか行く機会がないが、実は徒歩でも通過できる(以下、写真はすべて編集部撮影) しかしたとえば、所持金が心もとない、鉄道もバスもストップした、あるいはただの酔狂などといった理由があった場合、空港から「徒歩」で、最寄りの街に向かうことは果たして可能なのだろうか。 「水どう」では断念 今から15年ほど前、人気番組「水曜どうでしょう」の企画「東京2泊3日70km」の中で、この問題が取り上げられたことがある。この際には、スタート直後に「関係者立ち入り禁止」の看板にぶつかってしまい、結局バスでいったん空港外に出ざるを得なかった。 現在の羽田空港ウェブサイトでも、交通アクセスの欄には鉄道・バスなどしか紹介されておらず、「徒歩」などという選択肢は端から相手にしていない。 しかし調べてみると、「実は徒歩でも空港から『脱出』可能らしい」との情報を記載したウェブサイト、ブログなども存在する。 果たしてその真実は。筆者は羽田空港に向かった。 羽田空港第1ターミナルのバス乗り場 立ちはだかる「立入禁止」の看板 2014年5月某日、午後2時40分。 旅行客でにぎわう、羽田空港国内線第1ターミナルから検証を開始した。 とりあえず短絡的に「環八」「国際線ターミナル」の方向を目指してみる 歩道に出るまでの裏道はこんな感じ 地図を見つつ、まずはターミナル北方面へと歩き始める。このルートなら、おそらく最短で空港島から出られるはず。すれ違うキャビンアテンダントさんに妙な顔をされつつ、空港の第1庁舎を横目に見ながら、湾岸線沿いの歩道に出た。 ここまでは順調である。このまま、道なりに歩いていけば――という考えだったのだが、物の5分も歩かないうちに、歩道橋前に「関係者以外立入禁止」の看板が。 この先の歩道橋を渡れば最短ルートのはずだったのだが......残念 徒歩で脱出、とはいっても、立入禁止区画、あるいは歩行者が入れない道路などを使うわけにはいかない。泣く泣くこのルートを放棄し、今来た道を引き返すことにする。 引き返す途中で見つけた謎の穴 泥縄式にルートを調べる ターミナルに戻ってきたときには、出発から20分余りが過ぎていた。しょっぱなから痛いタイムロスだ。 すでに結構いい時間 ここに来てようやく、先人の皆さんのウェブサイト・ブログなどを調べ、改めてルートを確認する(主に「羽田空港を徒歩で脱出してみた」にお世話になりました)。出発する時点でそれをすべきだったのだが......。 午後3時10分過ぎ。今度はターミナル南方面へと向かうことにした。 今度のルートは、飛行機が行き交う区画をフェンス越しになぞって歩く形となる。間近を悠々と移動する飛行機は相当な迫力だ。ちょっと不安になって周囲を見回すが、別に「立入禁止」の表示はない。別にすれ違う人にも呼び止められはしないが、微妙にビクビクしながら先へ先へ。 飛行機がかなり近い距離に。そういう属性がある人ならたぶんたまらない 人気のない未来的な建築群 間もなく見えてきたのが、羽田空港南トンネルだ。飛行機たちが行き交うそのすぐ真下をくぐっているんだなあ、と思うと、なかなか感慨深いが、トンネル自体は短い。 後述の羽田空港トンネルに比べると手入れがされている感じ トンネルを抜け、階段を上っていくと、再び飛行機たちが間近に見られる場所に出た。開けた道路は立入禁止だったため、その逆方向へ。 すると、整備関連施設などが立ち並ぶ区画に入り込んだ。日曜日のせいか、従業員とその一家と見られる家族連れがいたほかは人気もない。近代的、というより未来的な雰囲気の建物に軽く気圧される。 ちょっとした街のような光景 環八の起点、徒歩10分のトンネル行 ところでこの整備施設周辺を別にすると、全般的にここまでの道は植栽が草ぼうぼうになっていたり、敷石が割れていたりと、荒れた雰囲気が目立つ。上記のように通る人もめったにないので、ある種のゴーストタウンを歩いているような感触になる。 こことか お化けなんてないさ、お化けなんて嘘さ、と口ずさむうち、進行方向に「羽田空港トンネル」がその暗い口を開けた。時刻は午後3時40分。ターミナルから約30分でたどり着いた計算になる。 トンネル周辺の植栽も伸びるに任せた状態 幸い歩道はしっかりと作られている。およそ700メートル弱の長さだ。 長いトンネルを無言で進む 中は比較的明るいが、行き交う車がどれもかなりのスピードで飛ばしているので、音と圧迫感が凄い。実はこの道路、あの環八通りの起点だ。徒歩での所要時間はおよそ10分。ちょっと疲れる。 定期的に掲示してある非常口灯が心の支え のどかな多摩川沿いをてくてく トンネルを抜けた先は、左右を白く高い壁に囲まれた道路だ。何も見えない状態が5分近く続く。 ある意味SF的な、独特の雰囲気 壁が途切れると、左手に多摩川河口の眺望が広がる。羽田はかつて漁業の街として名を馳せた土地だが、この日も川では潮干狩りを楽しむ人の姿が見られた。ちなみにこの川の対岸は、川崎市の工場区画だ。 ちょっとした穴場かも 一方の右手には、東京モノレールが走る。歩き疲れてそろそろ目的を見失いつつあった筆者は、「あれに乗ってりゃ楽なのになあ......」と思わずつぶやいていた。 のどかな河口の光景と、現代的なモノレールとが道路を挟んで共存する 旧羽田空港の跡地に往時をしのぶ そろそろゴールも間近だ。このまま環八を行ってもいいが、せっかくなので国際線ターミナルを通過する。 この国際線ターミナルまで来れば、事実上「脱出」は成功したも同然 ちなみに国際線ターミナル側にはもう1つのトンネルがあるのだが、こちらは立入禁止。最初に立入禁止だった歩道橋のルートにつながっているそうだ。ここが通じていればかなりの近道ができる。が、通じていないのでしょうがない。 国際線ターミナルを抜けた直後、だだっ広い空き地を見つけた。最初は単なる草っ原かと思っていたが、よく見ればボロボロになってはいるが舗装の痕跡もある。 羽田空港跡地。今は災害時の避難所などとして利用されているとか 実はここ、1993年に現在地に移転する以前の、旧羽田空港跡地なのだ。大田区による再開発計画もあるというが......。 この跡地の西端に、京急・モノレールの天空橋駅がある。羽田空港徒歩行は、旧空港に思いを馳せつつゴールとなった。 天空橋駅。旧空港跡地に隣接しているせいもあって、なんとなくさびしい雰囲気。ここから蒲田に出ることになる 時刻は午後4時50分。というわけで、1時間40分かければ、羽田空港から徒歩でも出られます。