「広島のバチカン」こと府中町が広島市との合併を拒む理由
世界一小さな国・バチカン市国は、かつてはイタリア半島に広大な教皇領を有していたが、19世紀後半にそのほとんどを失い、現在は周囲をイタリアに囲まれている。現在の面積は0.44平方キロメートルと東京の皇居よりも小さいが、国家財政は1993年から黒字を続けている。
バチカンほど狭くはないけれど、広島県安芸郡に位置する「府中町」もまた周りをすべて広島市に囲まれている。
府中市の面積が10.41平方キロしかないのに対し、広島市は約87倍の905.41平方キロもある。まさにガリバーと小人だ。
戦後すぐの広島市はそれほど大きくなかった。ところが1950年代と1970年代に周辺の町村を次々と合併する。その狙いは人口100万人を突破して政令指定都市になること。そのかいあって1980年に100万人を突破するが、1985年に当時の人口約8万7000人の五日市町を編入している。
余談だが合併問題を議論するため開かれた五日市町議会は大揉め。議員同士で取っ組み合いのケンカをしたり、発煙筒がたかれたり、勢いよく放水されたり――。さすがは仁義なき戦いの舞台となった広島である。