「埼玉県民の『隠れ郷土愛』をくすぐりたい」 まさかの映画化「翔んで埼玉」、監督&原作者インタビュー

2019年2月 2日 12:00

「埼玉県人にはそこらへんの草でも食わせておけ!」―― 埼玉県人を盛大にディスった衝撃の漫画「このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉」(宝島社)がなんと実写化、2019年2月22日に公開される。

武内英樹監督と魔夜峰央さん(ぬいぐるみ提供:アルコグランデ)
武内英樹監督と魔夜峰央さん(ぬいぐるみ提供:アルコグランデ)

公開を控えた1月16日、東京・銀座の東映本社で実写版の監督を務めた武内英樹さんと原作の魔夜峰央さんにインタビューを行った。そこで千葉県出身の武内監督と元埼玉県民の魔夜さんの意外な「埼玉論」が語られた。

住みやすい街としての埼玉県

映画「翔んで埼玉」は、「このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉」の実写化作品。全埼玉県民が驚愕したストーリーは、以下の通りだ。

東京都民から迫害されていた、埼玉県人は身を潜めて暮らしていた。そんなある日、白鵬堂学院の生徒会長で東京都知事の息子というサラブレッドの壇ノ浦百美(二階堂ふみ)は容姿端麗なアメリカ帰りの転校生の麻実麗(GACKT)と出会う。その後、麗が埼玉出身であることが発覚。2人は東京都民から迫害される埼玉県人の戦いの渦に巻き込まれていく――

原作では伝説の埼玉県人とされる埼玉デュークを求めて、麗と百美が旅立つところで終わっているが、映画ではその続きが描かれ対抗組織「千葉」が登場するなどより混沌とそして笑える展開へと進化している。

「このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉」(宝島社)
「このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉」(宝島社)

生まれも育ちも埼玉県白岡市。県内の人からも虐げられているような気がする、生粋の白岡市民である筆者は、武内監督と魔夜先生とのインタビューに挑んだ。

まずは映画化の感想だ。

魔夜さん「現実になるとは思ってませんでした。この作品が売れ始めたころに色々オファーがあったんですけど、まずアニメ化の話がきたんですね。やるとしたらアニメかなと。実写は難しいかなと思ったんです。内容が内容ですから。でも、無理だろうと思ってた映画の方が本当にできてしまった。ビックリした」

ビックリしたという魔夜さん。一方、実写化の監督は原作をどう読んだのか。

武内さん「千葉県の出身なんで羨ましいなと思って。途中で終わってたんで、何とか千葉県をねじ込んでやろうと思って。千葉と埼玉どっちがこう上なんだって白黒つけたいってそういうエネルギーで作りました」

千葉県民の武内さんにとって、埼玉の印象はどうなのだろうか。

武内さん「拮抗しているなって思ってて。良いバランス感覚ですね。好敵手というか。新幹線走っててうらやましいなとか。大宮のが千葉より都会だなとか。でもこっちには海があるしなあ、とか。観光地は千葉のが多い気がするんですよね。学生時代にドライブに行こうってなって、横浜とか湘南とか、群馬のスキー場とか、新潟行こうとか千葉の海行こうとかあったんですけど、一度も埼玉にドライブ行こうって話は全く出なかったですね」

何とも県民として複雑な答えだが、埼玉の思い出はあるのだろうか。

武内さん「桶川に大学の友達が住んでいて遊びに行ったんですよ。その時に何にもないなって言ってたら、いいとこあるからって吉見百穴と長瀞に連れてってもらって。そこはいいなと思ったんですけどそこの印象しかない...」

千葉県民ながら驚くべき洞察力だ。「怒られちゃうかな」と心配している武内さん。心配無用です。埼玉県民も似た印象です。

魔夜さん「(埼玉に)いつまでもはいたくないなとは思った」

続いては魔夜先生に埼玉(所沢市)に住んでいた頃と今の印象を聞いた。

魔夜さん「1~2年前に新所沢でサイン会とトークショーをやるために本当に30何年ぶりにうかがって。昔その所沢に出てきたときに感じたのが、空が青い。ネギ畑が緑だ。それしかなかった。
私、新潟の生まれと育ちなんで冬の間は、とにかく太陽を見ることがないんですよ。もう冬中曇っていて。だから、関東に出てきたときにその空の青さ、雲ひとつない空を生まれて初めてみて、それはすごく感動しましたね」

ということは悪いイメージはないのか。

魔夜さん「決して悪いイメージはないです。とっても住みやすいとこだとは思ったし。ただ、いつまでもはいたくないなとは思った。新潟で仕事していた時、1人で描いていたんですけど。忙しくてアシスタントをつけなきゃやばいってなった時、東京に出たほうがいいだろうと。
で、当時の編集長に相談したら『所沢にしなさい』と。え、と思いましたけど西武沿線には漫画家がいっぱい住んでるし、編集部のアクセスも良いからココにしなさいと勧められて。何にも考えずに所沢に行ってみたら編集長が近くに住んでる、もっとエライ編集部長も近くに住んでる。しまった、罠だと思って。脱出するのに4年かかった(笑)」

図星だ。現に筆者は埼玉から飛び出したく、少しの間だけ大阪に引っ越していた。

埼玉は路線ごとに文化が形成されるなど様々な文化がある。その点、作品に出ているのか。

武内さん「東松山とか熊谷とか細かいところも出ていますね」
魔夜さん「最初知らなかったから。出しようがなかった」

千葉県出身の武内さん。情報収集に苦労はあったのか。

武内監督「さじ加減を探る作業がすごく大変」

武内さん「埼玉県の人を怒らせちゃいけないなと思って。それが第一にあったんで徹底的に埼玉の知り合いとか何度も埼玉に行って酒飲んで、こういう話があるんだけどどう思いますかみたいな調査をしました。
後、埼玉新聞の方にもサイタマニアの人にも会って、この辺は大丈夫だ、これ以上やるとマズいって。その辺のさじ加減を探る作業がすごく大変で。あっちこっち行きました、埼玉は。住みやすいなって話も実感していて、そういうところにもっていけると話が成立するかな。後、横のつながりがない。路線によってみんな文化ができているから。でもみんな池袋に集まって。ただ他の路線のことはあんまり分からない」

武内さんの言う通りだ。現に筆者も20数年を埼玉で過ごしているが、他路線の地域はあまり分かっていないのだ。

県内各所を回った武内さん。「住みやすいって話を実感」というが、どこが実際良かったのか。

武内さん「浦和とか大宮とか。後、戸田公園あたりも、自然がいっぱいあるし、マンションもいっぱいあるし。浦和美園とかもね。結構良いマンションが安く売り出されてたんで、モデルルーム見ましたよ。イオンもあるしね。便利で安いし、都心も一本で出れるし」

とても「翔んで埼玉」の監督とは思えないほどの高評価をくだしている。

次は魔夜先生に、漫画を描いた当時の埼玉県のバカにされ具合について聞いた。

魔夜さん「蔑まれているなと考えたこと、感じたことはないです。ただ、埼玉県の人が本当は東京に住みたいんじゃないかなと、感じたんです。本当は所沢より赤坂に住みたいんじゃないかと。そういう空気感を何となく感じたんで、こういう作品になったんだと思います」

図星だ。筆者も大阪府庁近くのマンションに入居したとき、他所から馬鹿にされない安心感と快適さに酔ったものだ。

埼玉県人は「ディスられるも平気なフリをしている」

ここで2人に、取材や制作を通じて得た「ディスられ慣れている」という埼玉県民の印象を話してもらった。

武内さん「ディスられるのが慣れてるって言うんですけど、実は郷土愛ありますよね。僕、千葉大好きだし。あるのに隠してるっていうか。その感じが面白いなって思ってて。そこを刺激する話ってできないかなと思って。
大学時代、上尾に住んでた友達は、いつも地元に帰って上尾の仲間と飲むんですよ。かたくなに。ものすごい郷土愛だなって当時思って。意外と浦和の友達もそうでしたね。地元愛は強いと思うんだよな。サッカーもレッズなんかね。なのに、ディスられるも平気なフリをしている感じ。その辺の感情をくすぐれると面白いかな」
魔夜さん「所沢には4年しか住んでないので。なんとも申し上げられませんけど、とにかく埼玉県は寛容だなと。心が広いと思います。ほかの県では成立しませんでした。『翔んで京都』とか『翔んで兵庫』なんてとんでもないですよ。何されるか分かんない。埼玉県民は笑って許してくれるんで。その心の広さ、そのおかげで作品が成立しているわけですから」

今回、原作の続き部分は監督ら制作チームに任されている。そこで聞いたのはネタとして県内のどこが最も登場頻度が多いのか。

武内さん「春日部かなあ。一番多いのは。所沢とか草加とか熊谷も出てくるし。熊谷はそこそこフィーチャーされてます。家族の設定が熊谷出身の家族って言う設定なんで」

これを言われては春日部の映画館で見たくなってしまう。

最後に外から見て、埼玉県民が何を大切にしているように見えたかを聞いた。

武内さん「地元愛が実はすごいんだなって感じましたね。隠れ埼玉県人みたいな。表では出さないけどすごい強い郷土愛がある。千葉もそうなんですけど、むしろ埼玉の方があるなって感じましたね」

『翔んで埼玉』ポスタ―。細部までこだわった映画「翔んで埼玉」は2月22日に公開される。
「翔んで埼玉」ポスタ―。細部までこだわった映画「翔んで埼玉」は2月22日に公開される。

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