電通PRコンサルティングの企業広報戦略研究所が『2022年度ESG/SDGsに関する意識調査』を発表
2022年11月8日
企業広報戦略研究所(C.S.I.)
(株式会社電通PRコンサルティング内)
生活者1万人を対象とした『2022年度ESG/SDGsに関する意識調査』結果
「ESGレピュテーション」を最も獲得しているのは損保・生保・商社業界
情報セキュリティへの対応が高スコア
企業広報戦略研究所(所長:阪井完二、所在地:東京都港区、株式会社電通PRコンサルティング内)は、本年7月末、生活者1万人を対象とした「2022年度ESG※1/SDGs※2に関する意識調査」を実施しました。
昨年の調査から注目が高まるESGにフォーカスし、企業のESGに関する取り組みの中でも、特に企業広報として生活者などステークホルダーに伝えるべき項目を選定。その上で、企業広報戦略研究所の独自の視点からESGの24項目を設定しています。世界的にESGに関する情報開示基準の整備が進む中、今年の調査ではこれらの開示基準に合わせてESG項目を更新し、企業の「ESGレピュテーション(評判)」を測定しました。
主な調査結果は以下の通りです。
調査結果のポイント
1.ESGレピュテーション業界ランキング1位は「G:ガバナンス」が高い「損保・生保・商社」
2位「海外自動車・自動車関連部品」、3位「繊維・化学・日用品」は「E:環境」の割合が最多
2.ESG項目別の認知1位は「多様な生活者に配慮した商品・サービス・事業の展開」
ダイバーシティの認知が広がる
3.20代の企業のESGの取り組みに対する認知が、全項目でトップに
20代はESGの中でも「S:社会」の項目に関心が高いという結果も
4.ESGに関する取り組みの認知経路では、「メディアの番組・記事」の接点が最も高い結果に
メディアでの報道がESGに関する取り組み認知のカギ
5.4割超の生活者がESG/SDGsの取り組みを認知後に行動
具体的なアクションは「ウェブサイトの閲覧」(17.0%)がトップ
6.SDGsの認知率はついに90%超え
コロナ禍が継続する中、最も関心の高いSDGs項目は2年連続「すべての人に健康と福祉を」
※本リリース上のスコア構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、表において加減の結果が小数第1位で異なる場合や、合計が必ずしも100%にならない場合があります。
ESGレピュテーション
企業広報戦略研究所では、 一般生活者が「積極的に取り組んでいる」と感じる企業のESGアクションを「ESGレピュテーション」と定義しています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202211079329-O1-qNpB4EJ8】
ESG/SDGsに関する意識調査 ~ESGレピュテーション業界ランキング~
ESGレピュテーション業界ランキング1位は「G:ガバナンス」が高い「損保・生保・商社」。2位「海外自動車・自動車関連部品」、3位「繊維・化学・日用品」は「E:環境」の割合が最多。
▶「E:環境」「S:社会」「G:ガバナンス」の割合は業界ごとの特色が見られる結果に
生活者1万人に対して、ESGを知っているかを尋ねたところ、約3人に1人が認知していることが分かりました(「詳しく知っている」「聞いたことはある」の合計が37.9%)。昨年から約5pt増加しており、年々認知が拡大しています。
本調査では、特に企業広報として生活者などステークホルダーに伝えるべき項目に着目し、ESGそれぞれ8つずつ合計24のESG項目を企業広報戦略研究所の独自視点で調査設計を行いました([図表2]参照)。
また、今回の調査では、GRIスタンダード※3やSASBスタンダード※4による最新の情報開示基準や、改訂版コーポレートガバナンスコード※5のほか、昨今の企業の動向も鑑み、24のESG項目の更新を行っています。その上で、企業が「積極的に取り組んでいる」と生活者が感じているESG項目の回答を合計することで、企業のESGへの取り組みに対する評判を「ESGレピュテーション」として算出しました。
業界別で見ると、1位「損保・生保・商社」業界(11,787ポイント)、2位「海外自動車・自動車関連部品」業界(9,712ポイント)、3位「繊維・化学・日用品」業界(9,615ポイント)という結果になりました[図表1]。
1位の「損保・生保・商社」業界のESG構成比を見ると、「G:ガバナンス」の割合がトップであり、「情報セキュリティやプライバシー保護への取り組み」の認知が高い傾向が見られました。一方、2位の「海外自動車・自動車関連部品」業界や3位の「繊維・化学・日用品」業界においては「E:環境」の割合が大きく、特に「海外自動車・自動車関連部品」業界においてカーボンニュートラルに向けての各社の取り組みが効果的に発信できていることが影響しているとみられます。全体を見てみると、「E」「S」「G」の構成比は業界によって異なっており、自社の強みや事業内容に沿った情報発信が行われ、生活者に認知されていることが分かります。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202211079329-O6-3HxSs767】
ESG/SDGsに関する意識調査 ~注目のESG項目とは~
ESG項目別の認知1位は「多様な生活者に配慮した商品・サービス・事業の展開」
▶「E:環境」と「S:社会」の項目が上位5位を占める
次に、生活者が認知している企業のESG24項目をランキングにして見ると、1位は「S:社会」の「多様な生活者に配慮した商品・サービス・事業の展開」(27.2%)、2位は「E:環境」の「リサイクルなど資源の有効活用」(27.1%)、3位は「S:社会」の「社員が能力を向上し、やりがいを持って働ける環境の提供」(27.0%)という結果でした[図表2] 。
1位については、多様化する社会に適応した商品・サービス・事業が増加し、生活者の選択肢が広がってきたことが認知されていると推測できます。また、社会と環境に関する項目が上位を占めており、特に「S:社会」については社員のウェルビーイング(well-being)に配慮する企業が増えてきていることも要因の1つかと推察されます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202211079329-O5-JLvw006t】
ESG/SDGsに関する意識調査 ~注目のESG項目とは~
20代の企業のESGの取り組みに対する認知が、全項目でトップに
▶ 20代はESGの中でも「S:社会」の項目に関心が高いという結果も
ESG24項目のうち、特に認知の高かった全体上位5項目に焦点を当て、年代別で「積極的に取り組んでいる」と感じる項目の認知状況の違いを見てみました。その結果、20代は全項目で最も高い数値となりました[図表3]。
全体と20代の数値を比較しても、ほとんどの項目で5pt以上の差をつけており、20代はESGに関する情報に関心が高いことがうかがえます。
全体順位では上位10項目のうち、「E:環境」が5つ、「S:社会」が3つ、「G:ガバナンス」が2つと、比較的環境への認知が高い傾向にありました。一方、20代の上位10項目は、「E:環境」が3つ、「S:社会」が6つ、「G:ガバナンス」が1つという結果となり、20代は、ESGの中でも特に「S:社会」の項目への関心の高さがうかがえます。
また、全体順位では11位の「性別、年齢、国籍、マイノリティなどにとらわれない多様な人材の活用」が、20代では3位にランクインするなど、若者独自の視点で企業を認知していることが推測されます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202211079329-O4-w96OA8UV】
ESG/SDGsに関する意識調査 ~ESG項目の情報源~
ESGに関する取り組みの認知経路では、
「メディアの番組・記事」との接点が最も高い結果に
▶ メディアでの報道がESGに関する取り組み認知のカギ
「企業のESGに関する取り組みをどのようなところで見聞きしたか」の設問では、1位「テレビ番組」(22.0%)、2位「テレビCM」(10.1%)、3位「新聞記事」(9.8%)、4位「企業ウェブサイト」(9.4%)、5位「ウェブメディア」(8.8%)の結果となりました[図表4]。また、情報源をカテゴリ別に見てみると、「メディアの番組・記事」が最も高い結果となっています(34.7%) [図表5]。
ESGに関する取り組みの認知経路について、上位5項目の中で、1位、3位、5位は「メディアの番組・記事」となっています。この結果から、ESG関連の報道量が増えており、メディアによる第三者視点が入った情報の影響力が大きいことが分かります。また、2位に「テレビCM」、4位に「企業ウェブサイト」が入っていることから、企業自らが工夫して発信する自社メディアなどからの情報の重要性もうかがえます。
カテゴリ別に見てみると、「リアル」と「オウンドメディア」「メディアの広告」がそれぞれ2割弱となっています。 「メディアの番組・記事」でのESGに関する企業の取り組みについての報道が増え、生活者の認知につながっている可能性があります。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202211079329-O10-PPrEf8Fi】
ESG/SDGsに関する意識調査 ~認知後のアクション~
4割超の生活者がESG/SDGsの取り組みを認知後に行動
▶ESG/SDGsの取り組みが生活者に届くと、行動変容が生じる
企業のESGやSDGsの取り組みを認知し、行動変容したかについても聴取しました。ESG24項目を提示し、企業のESGに関する取り組みを想起できた人に対し、ESGやSDGsの取り組みについて知った後に行動したかを聞いたところ 、4割超(43.8%)の人が何かしらの行動を起こしたことが分かりました[図表6]。
企業は、生活者の行動変容につながるアクションをどのようにつくり、伝えていくかが今後の広報戦略のポイントになってきそうです。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202211079329-O7-I983UE0i】
▶ 企業のESGやSDGsへの取り組み認知後のアクションでは「ウェブサイトの閲覧」(17.0%)がトップ
企業の取り組みを認知した生活者が具体的にどのような行動を取ったかを尋ねたところ、1位「その企業や、商品・サービスのウェブサイトを閲覧した」(17.0%)、2位「その企業や、商品・サービスの評判を検索サイトで調べた」(9.7%)と「その企業の商品やサービスを購入または利用した」(9.7%)、4位「家族や友人とシェアした・話をした」(8.1%)の順となりました[図表7]。なお、業界別で見てみると、ほとんどは全体の結果と同様にウェブサイトの閲覧がトップでしたが、 「外食」業界と「食品」業界においては、「その企業の商品やサービスを購入または利用した」が最も高い数値となっていました。
認知後に主体的に情報を得ようとするだけでなく、購入・利用したり、情報共有をする人が存在しており、広報戦略立案にあたってはより企業のスタンスを示し、その企業らしいESG活動を伝え、共感を呼ぶことが効果的といえるかもしれません。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202211079329-O9-355YdS86】
ESG/SDGsに関する意識調査 ~SDGsへの認知・関心~
SDGsの認知率はついに90%超え。
▶コロナ禍が継続する中、最も関心の高いSDGs項目は 2年連続「すべての人に健康と福祉を」
昨年に引き続き、SDGsの認知状況についても調査しました。「SDGsという用語を知っているか」という設問に対し、「知っている」(「詳しく知っている」「聞いたことはある」の合計)と回答した人は91.3%と、ほとんどの生活者にSDGsが認知されてきたことが分かりました[図表8]。
中でも、「詳しく知っている」と回答した人は昨年から約10ポイント増の40.3%となり、内容についての理解も年々進みつつあることがうかがえる結果となっています。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202211079329-O8-Pz5r2o34】
また、「SDGs」の17目標について、関心のある目標を尋ねると、2年連続で、1位「すべての人に健康と福祉を」、2位「貧困をなくそう」、3位「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」という順位になりました[図表9]。
1位の「すべての人に健康と福祉を」については、コロナ禍が長引く中、健康や医療・福祉などの重要性がますます注目されていると考えられれます。
また、2位の「貧困をなくそう」については、近年社会問題として報道で取り上げられることの多い「子どもの貧困」や、コロナ禍による不安定な雇用や物価高騰などが重なり、一般生活者の関心が高くなっているとみられます。
企業にはこうした生活者の関心を踏まえ、取り組みを検討し、戦略的に伝えていくことが企業価値の向上においてますます重要になると思われます。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202211079329-O11-86M0C91T】
2022年ESG/SDGsに関する意識調査 概要
調査対象:全国の20~69歳の男女 計10,000人
※20業界(200社)のいずれかに魅力を感じている人(各業界500人)
調査方法:インターネット調査
期間:2022年7月22日~7月29日
設問内容:ESG/SDGsの認知、企業のESG/SDGsの取り組みへの認知や期待・情報入手経路、投資時のESG考慮有無など
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202211079329-O12-s5S0rU41】
注釈
※1 「ESG」とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったもの。
※2 「SDGs」とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016年から2030年までの国際目標。
持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットから構成される。
注釈
※3 GRIスタンダード:グローバル・レポーティング・イニシアティブ(本部をオランダのアムステルダムに置く国際的な非営利団体)が2016年の10月に発行した
サステナビリティ報告書のガイドライン。2021年10月に改訂。
※4 SASBスタンダード:サステナビリティ会計基準審議会(米国サンフランシスコを拠点に設立された非営利団体)が2018年11月に作成・公表した11セクター77業種について情報開示に関するスタンダード。
※5 改訂版コーポレートガバナンスコード:東京証券取引所が定めた上場企業の企業統治(コーポレートガバナンス)におけるガイドライン。2021年6月に改訂。
<お願い>
本調査内容を転載・引用する場合、転載者・引用者の責任で行うとともに、当研究所の調査結果である旨を明示してください。
企業広報戦略研究所とは
(Corporate communication Strategic studies Institute : 略称C.S.I.)
企業経営や広報の専門家(大学教授・研究者など)と連携して、企業の広報戦略・体制などについて
調査・分析・研究を行う、(株)電通PRコンサルティング内の研究組織です。
2013年12月設立 所長:阪井完二
企業広報戦略研究所サイト http://www.dentsuprc.co.jp/csi/
※本調査は、企業のESG活動を支援する電通PRコンサルティング内の「ESG・サステナビリティユニット」と連携して行っています。電通PRコンサルティングは、電通 Team SDGs に参画しています。