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縄文時代の住居から〝美しすぎる石器〟発見される 長野・井戸尻考古館「使わず、眺めたり、人に自慢していたんだろうな」

松葉 純一

松葉 純一

2026.06.13 08:00
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ある縄文人にとって、それは宝物だったのかもしれない――。

2026年6月4日、長野県諏訪郡富士見町にある「井戸尻考古館」の公式Xアカウント(@idojirikoukokan)が紹介した「黒曜石の石鏃」が注目を浴びている。

「【公式】井戸尻考古館(・歴史民俗資料館)」(@idojirikoukokan)の投稿より
「【公式】井戸尻考古館(・歴史民俗資料館)」(@idojirikoukokan)の投稿より

「鏃」って何? 読めない! と驚いた読者もいるかもしれないが、「鏃」は「やじり」または「ぞく」と読む。そう、弓矢の先端に取り付ける武器である。狩猟や、戦いの際に使用されるのが一般的だが、儀礼に用いられることもあったらしい。

それが、まるで宝石のようにキラキラと輝いている。黒曜石というと真っ黒なものだと思っていたが、これは透明だ。

この美しい鏃について、井戸尻考古館は次のように続ける。

「欠けもなく、住居から見つかったこの石鏃、たぶん一度も使われていません。
完璧な仕上がりのこの石器を、大事に持っていた縄文人。
時には眺めてふふっとしたり、人にみせて自慢したりしていたかもしれません」(井戸尻考古館の公式Xアカウントの投稿より)

なんともロマンチックな推察に、Xには9500件を超えるいいねのほか、こんな声が寄せられている。

「なんて綺麗な鏃!」
「これが矢じり? 美しすぎる」
「古代の人が使わずに大事に取っていた、会心の出来の黒曜石の矢じり美しい」
「使いたくなかった気持ち凄く分かる。 それほどまでに美しい鏃だ」
「出来が完璧すぎてもったいなくて使えない説わかる」
「縄文人すげぇ」

縄文遺跡から発見された「黒曜石の鏃」とはいったいどんなものか? 井戸尻考古館に詳しく聞いた。

縄文人の姿が浮かんでくるような一品

井戸尻考古館Xアカウントの中の人によると、話題の「黒曜石の鏃」は日向遺跡13号住居址から出土したもの。「長野県富士見町の境という山梨県の県境にあたる地区に所在します。井戸尻史跡公園の道を挟んで上側です」とのこと。

井戸尻史跡公園景観(画像提供:井戸尻考古館)
井戸尻史跡公園景観(画像提供:井戸尻考古館)

同じ家から出土した土器の情報から、縄文時代前期(今から約5600年前)のものと思われるという。

遺物の「洗い」をしていた作業員さんが、「すごくきれいな矢じりが出てきた」と教えてくれたそうだ。

「分析にかけていないため断言はできませんが、素材は和田峠周辺の山地のものだと考えます。和田峠周辺の産出する黒曜石は、透明度が高いことで知られています」
「細かい剥離で美しく成形されています。石材も黒曜石の中でも透明度の高いものを選んで作っていると思われます」(「【公式】井戸尻考古館」中の人)

そして、矢じりはふつう、矢の先につけて狩りのために用いるが、この石鏃は未使用のまま残っていた。

「あまりにも美しくできたので、使わず、眺めたり、人に自慢していたんだろうなと、この石鏃を作った縄文人の姿が浮かんでくるような一品です」(「【公式】井戸尻考古館」中の人)
「【公式】井戸尻考古館(・歴史民俗資料館)」(@idojirikoukokan)の投稿より
「【公式】井戸尻考古館(・歴史民俗資料館)」(@idojirikoukokan)の投稿より

同じ家から、他にも「美しい石鏃」が

井戸尻考古館の投稿によると、同じ家からは他にも未使用の石鏃が3点出土していて、それぞれが異なる形をしていたそうだ。

同じ人がつくった石鏃はなんとなく同じようなものになるそうで、だからこれは、作り手が意識的に様々な形に挑戦し、美しく仕上げていたと考えられるという。

「ある石鏃づくりの名人の、ちょっとニッチなこだわりと、美的感覚のするどさ、そして石鏃愛が見えてきませんか?」(井戸尻考古館の公式Xアカウントの投稿より)

約5000年前に住んでいた縄文人による、美しさの追求。美しいモノを愛する心は、縄文時代も、現代も、さほど変わらないのかもしれない。

「【公式】井戸尻考古館(・歴史民俗資料館)」(@idojirikoukokan)の投稿より
「【公式】井戸尻考古館(・歴史民俗資料館)」(@idojirikoukokan)の投稿より

ところで、井戸尻考古館は富士見町の遺跡から出土した土器や石器などを展示している。

「およそ5000年前の縄文時代中期、この地に花開いた文化は、豊富な打製石器類や彫塑的な土器が特徴です。石器の研究を中心とした『縄文農耕論』の検証、縄文土器の文様から縄文人の精神世界を読み解くことを展示の軸に、当時の人々の生活や心に迫る研究を続けています」と、「【公式】井戸尻考古館」中の人は語る。

現在、話題となった「黒曜石の鏃」はまだ展示されていないが、今後、展示を検討中とのこと。5000年前の縄文人の精神世界に触れる旅、いかがだろう。

井戸尻考古館

所在地:〒399-0101 長野県諏訪郡富士見町境7053
公式サイト:https://userweb.alles.or.jp/fujimi/idojiri.html 公式X:@idojirikoukokan
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