紀元前3万年、さいたま市に人が住み始める 博物館年表に17万人ジワる「人類が先かさいたま市が先か」
「さいたま市の歴史、力強い」
そんなつぶやきと共に投稿された写真が、X上で注目を浴びた。
さいたま市が一体、どんな歴史を歩んできたというのか? 歩み始めが、コレである。
BC.30000年。旧石器時代。日本に人類が登場する。
そして――さいたま市に人が住み始める!
言いたいことは分かる。すごくわかりやすいとも思う。同時に、その字面がなんだか笑える。
まるで旧石器時代に「さいたま市」が存在していたかのようで......。
埼玉県在住のXユーザー・an_shida(@an_shida)さんが2024年9月7日に投稿したこのポストには、17万件をこえるいいねの他、こんな声が寄せられている。
「『さいたま市(が現在ある土地)に住み始める』っていう意味だとはすぐにわかるけど、それでも一瞬『国も人もないところにさいたま市という行政だけは既にあった』みたいな印象受けて笑うwww」
「人類が先かさいたま市が先か」
「草。だからさいたま市あんなに発展しているのか」
「さいたま市に比べたら邪馬台国など新興住宅街に等しい」
「翔んで埼玉3の予感しかない」
一般的には「大宮台地」になるところ、だけど...
Jタウンネット記者の取材に応じた@an_shidaさんによると、話題の年表を目撃したのは9月6日、さいたま市立博物館でのことだった。独特の表現に、面白さを感じたと振り返る。
「今のさいたま市域から旧石器時代の遺跡が見つかっている、旧石器時代から人が住んでいたということは分かるものの、『さいたま市に』と書くと、さいたま市が普通に古代にあったような錯覚が出て面白みが発生するのだなと微笑みました。
また、さいたま市というローカルなものが『人類が日本に登場』『土器の作成』という歴史的な事柄と並んでいるのも『ゆかい』なイメージがあるなと思います」(@an_shidaさん)
さいたま市立博物館にも尋ねたところ、「さいたま市に人が住み始める」という表記を選択していることには、しっかりと理由がある。同館はその意図を、次のように説明した。
「さいたま市内では、約3万年前の旧石器時代の遺跡が、これまでに南区の明花向遺跡や西区の清河寺前原遺跡などで見つかっていますが、当時の人々は、こうした遺跡のある場所に定住していたわけではなく、各地を移動しながら生活していたのではないかと考えられています。
一般的には『大宮台地に人が住み始める』などの表現になるところですが、当館には市内の小中学生が見学に来られることも多いため、『大宮台地』などの用語を知らなくても理解できる平易な表現として、また、現在の自分たちが住む地域に結び付けて、興味を持ってもらいやすいよう、『さいたま市に人が住み始める』という表現としています」
自分たちのまちには約3万年も前から人が住んでいたんだ――そんな感覚を子供たちに持ってもらうための工夫が、ユニークな表現だったのだ。
このように、年表というのは出来事が並んでいるだけのように見えて、実は作った人の「思い」が込められていることも多い。
「年表」には「お国柄」が出る!?
an_shidaさんはさいたま市立博物館の年表に続ける形で、朝霞市博物館・入間市博物館・群馬県立歴史博物館の年表も紹介している。
様々な博物館を訪れる度に、年表をチェックしているのだという。
an_shidaさんは、その楽しみ方についてこう語ってくれた。
「たとえば埼玉県、でくくると日本の歴史の中ではそんなに大きな差はないはずです。平安時代があって鎌倉時代があって、明治維新になる。
でも、各博物館を見ると、織物が盛んだったとか水運の街だったというような地域の特色だけでなく、色々と見えてくるものがあるなと思います。
埼玉は超有名な戦国大名とか明治維新の主役とかそういう目立ったものがない分、新たに知る細かいことが見えてきたりして面白いですね」an_shidaさん)
埼玉以外では、新潟に行くと少なくない分量が「防雪」に割かれていたり、茨城に行くと「水戸藩」「幕末」に重点が置かれていたり、といった特徴があり、「お国柄」が見えてくるという。
「有名な何かがあるところはどこか誇らしさを感じます。そうでないところは控え目な印象をうけます。そういう博物館の性格からなんとなく地域の気風も感じられて面白いです」(an_shidaさん)
意外にも、個性があらわれる「年表」という存在。
今までスルーしがちだった人も、次に博物館に行くときは、じっくり眺めてみてはいかが?
知らなかった地元の魅力や特徴がひっそりと並んでいるかもしれない。