「ジュースを買いに行ったら、10円足りない。レジ前で悩む幼い私に、後ろに並んでいた中年男性が...」(東京都・30代男性)
シリーズ読者投稿~あの時、あなたに出会えなければ~ 投稿者:Tさん(東京都・30代男性)
30年前、まだ幼かったTさんは新幹線車内の売店まで、1人でジュースを買いに行った。
しかし、会計のタイミングで10円足りないことに気がついて......。
<Tさんの体験談>
今から30年前、小学生になる直前の、春休みだったと記憶しています。
当時住んでいた大阪から東京に家族で旅行した際の、帰りの新幹線車内でのことです。
京都駅に着く少し手前で、喉が渇いた私は売店までジュースを買いに行きました。
値段も見ず店員さんに...
母から貰った100円玉2枚を握りしめ、2階建て車両の1階にある売店まで行くのは、6歳の私にとっては、ちょっとした冒険でした。
街中の自動販売機が100円から110円になって間もない頃です。母としては200円あれば、新幹線の中で多少割高だったとしても大丈夫、と思ったに違いありません。
ようやくたどり着いた売店、大好きなオレンジジュースを値段も見ずに、店員さんに渡しました。
「210円です」
その言葉に私は凍りつきました。
どうしよう、足りない...。席まで取りに戻ろうか、でも今来た距離をもう一度戻るのか、他にもう少し安いものがないか聞いてみようか、子供だからまけてくれないかな...。
小さな頭でぐるぐる考えたと思いますが、いい答えは出ませんでした。
次に並んでいた男性が...
その時、次に並んでいた中年の男性が、さっと10円玉を出してくださいました。
「ありがとうございます~」
店員さんの声に送られ、緊張の糸が切れた私は席に向かって駆け出しました。
おそらく、ですが、その方に御礼を言っていないのでは、と思うのです。
席に戻った私は、母に正直に、10円足りなかったこと、次に並んでいた中年の男性が10円を出してくださったことを話しました。
「ちゃんと御礼は言ったの?」と母に問われ、半泣きで
「たぶん、言えてない」
と答えたように思います。
車内を探し回ったけど...
母に「ちゃんと御礼を言いに行こう。お金も返そう」と言われて、2人で車内を回りました。
ですが、ちょうど京都駅を出た後で、京都で下車されたのか、その方を見つけることはできませんでした。
そもそも上品な雰囲気だったことくらいしか記憶になく、顔もよく見ていなかったため、仮にまだ車内にいらっしゃっても、見つけることは難しかったかもしれません。
結局、申し訳ない気持ちのまま席に戻り、幾分ぬるくなったジュースを飲み干すと、すぐに新大阪駅に着きました。
時は流れ、新幹線から2階建て車両も売店も姿を消しましたが、今でも新幹線に乗るとあの日のことを思い出します。あの時、見ず知らずの子供にさっとお金を出してくださったことへの感謝と御礼を言えなかった申し訳なさが込み上げてきます。
もしも今、またその方にお会いできるのであれば、心から「ありがとうございます」と伝えたいです。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」「あの時はごめんなさい」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな誰かに伝えたい「ありがとう」や「ごめんなさい」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
Jタウンネットでは読者の皆さんの「『ありがとう』と伝えたいエピソード」「『ごめんなさい』を伝えたいエピソード」を募集している。
読者投稿フォームもしくは公式X(@jtown_net)のダイレクトメッセージ、メール(toko@j-town.net)から、具体的な内容(どんな風に親切にしてもらったのか、どんなことで助かったのか、どんなことをしてしまい謝りたいのかなど、500文字程度~)、体験の時期・場所、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。
(※本コラムでは、読者の皆さんに投稿していただいた体験談を、プライバシー配慮などのために編集している場合があります。あらかじめご了承ください)