博物館「三角縁神獣鏡チョコ作りの時期になりました」←なんて??? 福井市には謎すぎる「冬の風物詩」があるらしい
読者の皆さまは、「三角縁神獣鏡」をご存知だろうか?
古墳時代前期を代表する銅鏡で、縁部の形状が三角になっているのが特徴だ。「鹿男あをによし」のおかげで、よく覚えているという人もいるかもしれない。
全国の古墳から、何百枚と出土しているという。魏志倭人伝で卑弥呼が中国の皇帝より下賜された銅鏡百枚に該当すると考える研究者もいるそうだ。
福井市立郷土歴史博物館では、この「三角縁神獣鏡」に関するユニークな取り組みを行っている。
同館では冬になると、こう思うらしいのだ。
「三角縁神獣鏡チョコ作りの時期となりました」と。
「ある日、ふとした思いつきでチョコを流しこんでしまったのです」
福井県内で発掘された「三角縁神獣鏡」は、花野谷1号墳出土のもの。花野谷古墳は、古墳時代前期に作られた円墳だ。貴重な銅鏡を保持していたということは、大和朝廷と繋がりの強い、この地域を収めたリーダー格の人だったのではないかと考えられている。
「三角縁神獣鏡チョコ」とは何か。冬の風物詩になるほど、毎年作っているのか。なぜ、作り始めたのか。
Jタウンネット記者は、福井市立郷土歴史博物館に詳しい話を聞いてみた。
Jタウンネット記者の疑問に答えてくれたのは、福井市立郷土歴史博物館の学芸員・藤川明宏さんだった。まず「三角縁神獣鏡チョコ作り」は、いつから、どんな経緯でやっているのだろうか? 藤川学芸員は次のように答えた。
「出土した三角縁神獣鏡から型取りをしてレプリカを作った際、せっかく型取りしたのだからこれを何かに利用できないかと考えたのが、シリコン製の学習用鋳型キットです。シリコン製の鋳型に石膏を流し込んで固めると、ホンモノそっくりの石こう製レプリカが手軽に作れるのです」
「ある日、私はふとした思いつきでこのシリコン製鋳型にチョコを流しこんでしまったのです。残念ながら温度調整に失敗して、あまり美味しくなかったので、この試みは封印しておりました。しかし2012年、お菓子作りが得意な方の協力を得て、ついに美味しくてかつホンモノそっくりの三角縁神獣鏡チョコ試作品第1号が完成しました」(藤川明宏さん)
三角縁神獣鏡チョコの横幅は20センチ以上
そんな経緯で、今から11年前に三角縁神獣鏡チョコは誕生した。藤川さんの茶目っ気が、大きな役割を果たしたようである。
翌2013年2月、同館で一般向けのワークショップを行い、三角縁神獣鏡チョコを作ることになる。チョコ製作に関してはすぐにレシピ化し、調理器具も揃えたのだが、意外なハードルは冷蔵庫の用意だった。
溶けたチョコを鋳型に流し込んだ後、固まるまで冷蔵庫で冷やさなければならない。しかし、三角縁神獣鏡チョコは横幅20センチ以上。すっぽり収まる大型冷蔵庫を確保し、その中に上手く積み重ねて冷蔵するのが一苦労だったのだ。
冬は「三角縁神獣鏡チョコ」の時期とは、まずチョコが溶けにくいからだという。「博物館の催し的にも閑散期なので、話題性のある三角縁神獣鏡チョコづくりを開催するにはいい時期なのです」と、藤川さんは語る。
今シーズンの「三角縁神獣鏡チョコ作りワークショップ」は、2024年2月11日(日)と3月9日(土)。 (1)10時~11時30分、(2)13時~14時30分、(3)15時~16時30分で、1日3回行う()。
例年、1回につき6組の募集枠に対し、5倍近い募集がある人気ワークショップだ。
「遠く東北や九州から、このイベントのためだけに来られた方もいます。応募者の半分は県外の方です」(藤川さん)
今や福井の「冬の風物詩」の一つ、とまで言われているらしい三角縁神獣鏡チョコ作り。あなたも体験してみてはいかが。