和牛ステーキにベニズワイガニ、海釣り梨狩りコンバイン 鳥取・湯梨浜町で体感した「地元の魅力」がスゴかった

湖から湧き出る豊かな温泉、おいしい二十世紀梨、日本海に広がる白い砂浜――そんな魅力を持つ自然豊かな町が、鳥取県のほぼ中央にある。その名も、そのまま「湯梨浜町」だ。
もちろんこの町のステキなところは、「湯」と「梨」と「浜」だけではない。
2023年9月23日、記者はそれを、思う存分体験してきた。

やってきたのは日本最大級の本格的な中国庭園「燕趙園」。記者のほかにも、たくさんの人が集っている。
というのもこの日は「第6回ONSEN・ガストロノミーウォーキングin 湯梨浜町・はわい温泉東郷温泉」が開催されていたからだ。
食べて飲んで!超贅沢なお散歩9キロ
「ONSEN・ガストロノミーウォーキング」は日本各地で開催されているイベント。湯梨浜町の「ONSEN・ガストロノミーウォーキング」は2022年、ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構によってグランプリに選ばれた。
地元のおいしいものを食べたり飲んだりしながら、町のほぼ真ん中にある東郷湖の湖畔約9キロを歩いて回る――山陰の景色と美食を堪能できる、いわば超贅沢なお散歩なのである。

ウォーキングのスタート地点は「はわい温泉・東郷温泉観光案内所前」、ゴールは「燕趙園」。
参加者はまず、燕趙園で受付をすませ、開会セレモニーの後スタート地点にバスで移動する。

今回の参加者は184人。12グループに分かれて10分ごとに時間差で出発する。バスに乗ってやってきた観光案内所では早速、東郷湖産のしじみ汁が提供された。

大きなしじみが入った、あっさりしたスープ。飲みやすいしじみ汁で英気を養い、いよいよスタート!
まずは右手に湖を見ながら、次のスポット「Café ippo」を目指そう。
清々しい空気とワインとおつまみと
歩き始めると、東郷湖と湯梨浜の街並みが広がってくる。


この日は歩きやすい気候で、広々とした湖畔やその向こうの山々が清々しい。2キロ弱の道のりだが、景色を眺めながら「心地が良いな」と思っているうちに、到着。
ここで提供されたのが、塩シューやカボチャのコロッケなど、程よい塩加減のおつまみ。いっしょに出てきた白ワインとの相性が抜群で、食が進む。

一息ついたところで出発。ここから次のガストロポイントである出雲山展望台までは上り坂。少し辛い道のりが続いたが、展望台では疲れも吹っ飛ぶあの食材が登場した。
これが湯梨浜町の本気...

鳥取和牛のステーキだ。全国和牛能力共進会で「肉質1位」を獲得したことがあるだけあって、柔らかくてジューシーなお肉。胡椒が効いていておいしい。
それを、湯梨浜の町を一望できる展望台で食べられるんだから、スゴイ。「地元の魅力」を怒涛の勢いで流し込まれる。
しかし、これは"序章"に過ぎなかった――。

和牛の次に出てくる食べ物なんて、ハードルが上がってしまって仕方ないというのに、続くガストロポイント「東郷湖羽合臨海公園あやめ池公園」では、ソレを軽々飛び越えるものが出てきた。

鳥取を代表する味覚・ベニズワイガニである。たっぷりと身が詰まっていて、まさに絶品。トッピングのカニみそも濃厚で、カニに付けて食べると味を変えて楽しめる。
「カニを食べている時は無口になる」とはよく言ったもので、同じテーブルにいた男性参加者は「カニを食べていると黙ってしまうなぁ」とつぶやいたのを最後に、黙々とカニを食べるのであった。
カニの後もどんどん出てくる
その後も鳥取の梨を絞った果汁たっぷりのキムチ、フルーティーで甘口な湯梨浜町の地酒「星取」、牛骨ラーメン、二十世紀梨スカッシュなど、地元ならではの美食が目白押し。



アレもおいしい、コレもおいしい! 今回初めて鳥取を訪れた記者はすべてに感動し、「湯梨浜町には、こんなにもおいしいものがたくさんあるのか!」と驚いているうちに、気づけばゴールにたどり着いていた。うわっ......9キロって、あっという間すぎ......?



さあ、ゴールしたから今日のイベントはこれで終わり――なわけがない。思い出してほしい。これは「ONSEN・ガストロノミーウォーキング」。
ガストロノミーを終えたら、ONSEN! ゴール後に、はわい温泉・東郷温泉の日帰り入浴券をもらえるのだ。

記者ははわい温泉の老舗旅館「望湖楼」の温泉に入ってみることに。広々とした大浴場で汗を流した後は、湖上の露天風呂に移動。温泉につかりながら見渡す東郷湖は絶景。あっという間の9キロだったとはいえ、歩き疲れた体をここで癒せるのは最高だった。
一層の磨き上げと満足度の向上を
豊かな自然と食を歩きながら体感することができた、湯梨浜でのONSEN・ガストロノミーウォーキング。参加者の皆さんも、イベントに参加してこんな魅力を感じたという。
「ジブリに出てきそうな風景が魅力的だった」(大学3年生・Aさん)
「イベントを通して知った地酒や食材を、東郷湖を一望しながら食せるという贅沢」(大学3年生・Yさん)
「自然にあふれており、過ごしやすい環境。街に住んでいる人も親切に対応してくれて、また参加したい」(大学3年生・Nさん)
また、同じグループだった吉川寿明副町長も、次々と表情を変える東郷湖を右手に見ながら、豊かな自然・多様な動植物・おいしい食を堪能し、東郷池を中心とするエリアのポテンシャルを再認識したそう。
「温泉ガストロノミーウォーキングは本町の地域資源を一度に体験していただける正に『ど真ん中イベント』であり、今後、一層の磨き上げと満足度の向上を図っていきたいと考えています。
また、イベントに限らずいつでも、ウォーカーや観光客が自由に温泉やグルメなどを楽しみながら周遊し楽しんでいただけるエリアの形成にも努めて参りたいと思います」(吉川副町長)
釣りと農業を体験してみた
さて、そんな湯梨浜町では、移住・定住の推進にも力を入れている。湯梨浜町での暮らしを体験できる「ゆりはま暮らしお試し住宅」を設置したり、湯梨浜町の自然・施設などを体験できる場所を地元団体が案内する「お試し滞在体験アテンド事業」を実施したりしているのだ。
グラウンド・ゴルフ(湯梨浜で誕生!)やSUP、サーフィン、釣り、地元のスーパーや農産物直売所などでの買い物など、体験できる「湯梨浜ぐらし」は多種多様で、参加者の希望に応じてアテンドしてくれる。
ガストロノミーウォーキングに参加するだけではもったいない! ということで、今回記者はもう1日湯梨浜町にとどまり、NPO法人「とまり」に案内してもらい、釣りと農業を体験してきた。
釣り体験

釣り場は小浜という地域にある海岸。陸続きではなく、島のようになった岩場に向かうため、なんと大きな木の枝などを束ねて橋を作って渡る必要があった。橋は安定しているが「落ちてしまわないだろうか」という恐怖もあり、スリル満点。

橋を渡り岩場に到着したら針に小エビを付け、撒き餌を撒いて釣りを開始。するとすぐに何かがヒットした。

釣れたのはフグ。まずは1匹釣れて一安心。サイズは小さいが自分で釣った喜びは大きい。
すぐにまた何かヒット。フグよりも引きが強いぞ......!

今度はメジナが釣れた。しっかりと魚が釣れると嬉しいもので、その後もフグとメジナを数匹釣ることができた。
次第に波が高くなってきたので、泊漁港の堤防に場所を移すと、そこではヨコスジフエダイが釣れた。

初めての海釣りで、魚がヒットした感触をつかむのが難しかったが、大満足の結果に。
釣った魚は持ち帰って食べることもできるので、釣りをやってみたい人や魚好きにはピッタリな体験だろう。
農業体験
(1)稲刈り

原という地域には、田んぼが一面に広がる田園風景がある。
ここでは、鳥取生まれのお米「星空舞」を栽培していて、ちょうど稲刈りの最中。3000平米ある田んぼの稲をコンバインで素早く刈り取る姿は迫力満点だ。
なんと今回、記者はコンバインに乗せてもらえることになった!

操作法を教えてもらいながら、レバーで方向を変えたり、スピードを調節したり。真っすぐに正確に刈っていかないと稲を刈るラインが曲がってしまい、稲刈りって難しい......。しかし、田んぼを見渡せるコンバインの運転席からの眺めは最高。農業に携わっていないと中々できない貴重な体験だった。

(2)梨の収穫

原にある梨園でも、収穫を体験させてもらえることに。

木にぶら下がった梨を捻るとすぐに取ることができ、袋から取り出すと黄緑色の二十世紀梨が登場。
皮ごと食べることができ、かじってみると水分が豊富な甘い梨だった。

別所という地域の梨園も見学。広い土地でたくさんの梨を育てていて、湯梨浜町は本当に梨作りが盛んなのだなあ、と実感した。
(3)サツマイモ掘り

大人になって畑をいじる機会なんて全くなく、原で体験したサツマイモ掘りは結構大変だった。
サツマイモは土深くに眠っていて、途中で引っこ抜こうとすると折れてしまったりする。
なので、サツマイモの両脇の土を掘って全体が出るまで掘り進めていかなければならない。
しかし、最終的には台車がいっぱいになるほどのサツマイモを掘り起こせた。

――と、これにて滞在体験は終了。このような取り組みを行っている理由について、湯梨浜町役場のデジタル・みらい戦略課みらい創造係・音田直希主事は「田舎ならではの体験をしていただくことで、湯梨浜町の関係人口増加につなげたいと考えています」と語る。
今回、湯梨浜町を歩き、地元の食材を食べ、いつもの生活とは全く異なる体験をして、湯梨浜町の魅力を体感することができた。
今とは別の暮らし方をしてみたいと思った方は、一度、湯梨浜町に足を運んでみてはいかがだろうか。