おたる水族館、ライバル水族館オープンに「応援広告」掲出 なぜ敵に塩を送る?考案者の思いとは
2023年7月20日、北海道札幌市に都市型水族館「AOAO SAPPORO(アオアオ サッポロ)」がオープンした。
開業にあたって札幌駅前地下歩行空間には、同館のオープンを知らせる広告が設置されたのだが、その内容が一風変わっている。
こちらは漫画家・イラストレーターの藤沢チヒロさんが7月17日、自身のツイッターアカウント(@uwabamic)に投稿した札幌駅前地下歩行空間の広告の写真だ。
「札幌・狸小路に都市型水族館『AOAO SAPPORO』がいよいよオープンだって!」
と書かれており、ただAOAO SAPPOROのオープンを知らせるだけの広告に見える。しかし、その続きは......。
「道民は新しもの好きだから、みんな行くよね...
でもね、必ず帰ってきてね~ おたる水族館」
いや、おたる水族館の広告だったんかい! どうして、おたる水族館が、ライバルになるであろう新しい水族館のオープンを広めているのだろうか。Jタウンネット記者は20日、小樽水族館公社を取材した。
「完全に敵に塩を送っています」
同社の営業推進担当・梅津真平さんによると、問題の広告はおたる水族館が主体となって制作したもので、AOAO SAPPOROにも了承を得た上で掲出している。
「完全に敵に塩を送っている」という自負もあるという。何故そんなことをするのか。
水族館業界を盛り上げたいからだ、と梅津さんは説明する。
おたる水族館の来場者数は、23年に入ってから減少傾向にあるという。新型コロナウイルスの5類移行や北海道日本ハムファイターズの新本拠地・エスコンフィールドHOKKAIDOの開場があり、「人の流れが変わってしまったのでは」と梅津さんは考えている。
その状況下での「AOAO SAPPORO」のオープンは「おたる水族館にとどめを刺す出来事」だという。なんせ「AOAO SAPPORO」は札幌駅から徒歩圏内という好立地。札幌から車で1時間強、公共交通機関を使うと電車とバスを乗り継がなければならない「おたる水族館」とは比べ物にならないアクセスの良さだ。
「ですが、コロナが5類になって、人の流れが変わってきている中で、水族館に目を向けてほしい。大きなトピックであるAOAO SAPPOROのオープンを告知して、水族館業界が盛り上がってほしいとの思いから考えました」(梅津さん)
地下鉄では、別の水族館も巻き込んで...
広告の内容は、梅津さんが考案した。
「自虐でもネタでもなく、本音です。『帰ってきてね~』も本音ですし、『道民は新しもの好き』というのも私が実感していることです」(梅津さん)
おたる水族館は、7月18日~24日にかけて札幌市営地下鉄に中吊り広告も出している。週刊誌風の作りになっていて、AOAO SAPPOROだけでなく、札幌市厚別区のサンピアザ水族館にも触れ、「おたる・狸小路だけが水族館じゃない! 新さっぽろにも水族館はあるんだ!」とアピールしている。
ライバルを応援するおたる水族館の姿勢はツイッター上で話題になり、
「競合というより、全体のパイを広げることの方がメリットが大きい」
「おたる水族館はわかっているなw」
「おたる水族館のこういうところ好きだわー(笑)」
「これはAOAOにも行っておたる水族館にも行っちゃうやつだ...上手い...!」
といった声が寄せられている。広告の掲出期間は7月17日~30日。